在留許可手数料大幅引上げ政令案に対する意見
2026.7.29 NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
1 はじめに
2026年5月29日、在留資格の変更・更新、永住許可申請の手数料を過大に引き上げる内容を含む改定入管法が成立しました。
移住連は、上記改定法について、その必要性も相当性も認められないこと、それにもかかわらず、生きていくために不可欠な在留資格を維持するための費用がこのように急激に引き上げられれば、当事者やその家族の生活に極めて深刻な影響を及ぼすこと、すでに日本に居住する外国籍者を標的とする今回の乱暴な制度変更は、⽇本という国への信頼を損なうものでもあることなどから、強く反対してきました。
また、改定法の成立時には、今後、具体的な金額や、経済的困難その他特別の理由により手数料を減額又は免除する対象を政令で定めるにあたっては、諸外国における同種の手数料の額を勘案するのはもちろんのこと、衆参両院の付帯決議で定められたとおり、十分に当事者や関係者の意見を聞き、適正な制度設計を行うよう求めました。
今般、政令案が公表されるとともに、パブリックコメントが募集されていますが(以下、「本募集」といいます)、政令案及びそれに関する入管庁の説明は、以下のとおり、到底このような求めに応えるものではなく、移住連は、政令案の抜本的な再検討を求めます。
2 具体的な金額について
政令案で定められた具体的な金額は、以下のとおり極めて高額です。

とりわけ、日本で賃金が低額ながらも日本社会を支える仕事に従事する外国籍者や日本で子どもを育てるひとり親などを含め、低所得者への影響は極めて大きいものです。このように負担能力を無視した制度の導入は、外国籍者にとって過酷に過ぎるのみでなく、日本社会の安定性をも損ねるものです。
(2)「諸外国における同種の手数料の額を勘案して定める」とした法律の委任に反していること
改定法においては、手数料の具体的金額については、「諸外国における同種の手数料の額を勘案して定める」ものとされ、国会審議においても、入管庁は、諸外国の手数料に比して「不当に高い」「不当に低い」ことがないかを見ると繰り返し発言していました。本募集においても、「諸外国における同種の手数料の額」は、在留許可手数料の額が、諸外国の水準と比較して不当に高くないか、あるいは不当に安くないかを検討する際の指標として勘案することとしています。」と説明されています。また、付帯決議においても、諸外国の手数料を勘案する際の具体的な留意事項が示されていました(参議院付帯決議6項)。
けれども、パブリックコメント募集にあたって公表された内容は、極めて不十分であり、また、日本では別途に支払いが求められる健康保険料などの費用も比較対象の「手数料」に含めて示すなど、誤導的です。とりわけ、入管法上、在留資格は、仕事や活動に関する在留資格である別表第1、身分や地位に基づく在留資格である別表第2(日本人の配偶者等、定住者など)に分かれますが、永住を除く別表第2の在留資格についての諸外国の同種の手数料の額についての情報が示されていません。これでは、金額が「不当に高い」か「不当に低い」かを検討することが不可能であり、「諸外国における同種の手数料の額を勘案して定める」とした法律の委任に反しています。
また、難民申請者の在留資格の変更や期間更新については、今後、年間最大で一人につき3万6,000円~最大で9万円程度かかることが見込まれますが、公表された資料によれば、7か国中4か国は手数料がなく、アメリカは庇護料として年間100ドル(1万5,000円程度)、イタリアは年間最大16ユーロ(3,000円程度)、韓国は年間10万ウォン(1万円程度)であり、難民申請者については、政令案で示された手数料の額が「不当に高い」ことが明らかになっています。
3 減免対象者
この点についても、付帯決議でも十分な配慮が求められていたところですが(衆議院付帯決議5項、参議院付帯決議7項)、公表されたところによれば、免除の対象は「外交」「公用」等の在留資格に限られ、それ以外は、せいぜい減額の対象になるのみです。また、減額の対象は、「生活保護法に規定する要保護者に準ずる程度に生活に困窮していると認められる者であり、かつ、人道上の配慮をする必要があるもの」と極めて限定的であり、低所得者であっても、そのほとんどは減免の対象となりません。
とりわけ、今回の政令案は、子どもを育てる世帯に特に過大な負担を課す内容となっています。子育て世帯への負担を軽減するため、成人年齢に達していないあるいは高等学校就学中のこどもの手数料は無料あるいは一定の上限額を設けることが不可欠です。さらに、就労が困難な高齢者についても、人道的観点から減免対象とすべきです。
また、難民申請者については、保護費を支給している者のみが原則として減額の対象とされていますが、保護費は、「衣食住に欠ける等保護を必要とする者に対し、必要な援護」(1982年7月6日『難民行政監察結果に基づく勧告』)としてなされるものであるものの、予算も十分でなく、保護を必要とする者のうち受給を受けられるのは一部に過ぎません。支給決定までにも時間がかかります。保護費受給を減額の要件とするのであれば、保護費の上記問題を解決することが不可欠です。
4 実施時期について
5月29日に成立した改定法では、2027年3月31日までに施行とされていました。その一方で、政令案によれば、2026年10月1日施行予定とされています。
けれども、改定法及び政令案は、上記のとおり、極めて問題が多いもので、このように拙速に施行すべきではありません。
5 まとめ
以上のとおり、公表された具体的金額は高額に過ぎ、また、「諸外国の同種の手数料の額を勘案して定める」とした法律の委任に反しています。減免対象者も狭きに過ぎ、日本で長く生活してきた者や日本と強いつながりを持つ者、日本社会を支える者などの在留の継続を困難にする、きわめて過酷な内容です。
移住連は、政令案に記載された10月1日の施行にこだわることなく、具体的金額及び減免対象者について、再度抜本的な見直しをすることを強く求めます。
以上