FacebookTwitter

お知らせNews

2025.11.05 事務局から

国連ビジネスと人権作業部会、各国政府と企業に対し移民労働者の保護強化を要請する報告書を国連総会に提出

国家のリーダーシップで「ビジネスと指導原則」の実施を

 国連ビジネスと人権作業部会は10月24日、ニューヨークの国連総会で、労働移住に関する「報告書」を発表し、各国政府と企業に対し、移民労働者が直面する深刻かつ構造的な課題に対応するために、「ビジネスと指導原則」に沿って、さらに強力な行動を取るよう促しました。

 「報告書」は、強制労働、搾取、債務奴隷、安全でない生活環境、および様々な形態の差別や暴力など、ビジネス活動のなかで移民労働者に多くの人権侵害が起きていることをあげ、強い懸念を示しています。そして、この間、移民労働者の権利擁護に向けた世界的および国ごとの進展はあるものの、実施面ではまだ大きなギャップが存在すると指摘しています。そして、「企業が人権責任を尊重する環境を整えるには、国家のリーダーシップが不可欠である」と報告書は述べています。

移住連の情報に基づき「育成就労制度」に関して懸念

 作業部会は、「報告書」の作成に際して、各国政府や市民社会組織に2025年4月末を期限として情報を求めていました。それを受けて移住連は「技能実習から育成就労への転換」など7項目について情報提供しました。日本政府も情報を送信していました。

それらの情報を受けて、「報告書」のパラグラフ10において、日本の情報が紹介され、技能実習制度に代わり育成就労制度が創設されることについて、「改善努力が行われている一方で、新たな育成就労制度に関して、懸念が指摘されていることを認識している」と述べられています。これは、労働者の転籍をめぐりさまざまな制約が課せられようとしていることについて、移住連が送付した情報に脚注リンクを貼り、移住連が提示した懸念に留意を示しています。

また、日本に関する情報として、日本政府の報告に基づき、人権侵害の救済へのアクセスの項目(パラグラフ59)で、国家の非司法的メカニズムの例示として、日本の厚労省の外国人労働者向けの労働相談に関する多言語情報サイトのURLが脚注で紹介されています。

 加えて、苦情処理メカニズムの項目(パラグラフ65)で、同じく日本政府の情報に基づき、「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」(JP-MIRAI)の取り組みが紹介され、移民労働者が相談サービスを受けたり、ヘルプデスクへの紹介を受けたり、正式な苦情申立ての支援を受けたりできるオンライン・ポータルを提供しているなどと紹介されています。


 以下は、パラグラフ10の翻訳です。( )内の数字は脚注番号です。15は作業部会の日本訪問調査の報告書のURL、16は日本政府および移住連による提供文書のURLです。

 

10.短期的な労働移民プログラムは、依然として受け入れ国間で広く普及している。この状況は、永住権や市民権への道筋を妨げ、社会福祉給付や家族再統合の権利を制限することにより(13)、移民労働者を恒久的な不安定な状態に陥らせる可能性がある。雇用主と結びついた労働許可は、労働者の移動の自由をさらに制限する。雇用喪失は、合法的滞在の即時喪失をもたらす。作業部会は、カファーラ制度(訳注)(14) に対する長年の批判、および改善がなされたにもかかわらず(15)、日本の新たな育成就労制度の側面に関して現在提起されている懸念(16)を認識している。

 

訳注:雇用主が移民労働者の「保証人」となり、在留資格や出国までも管理する制度。

<参照>

報告書の原文

Report of the Working Group on the issue of human rights and transnational corporations and other business enterprises :Labour migration, business and human rights

https://docs.un.org/en/A/80/171

 

国連ビジネスと人権作業部会へ情報提供を行いました(移住連)2025.05.16 

https://migrants.jp/news/office/20250516.html

お知らせ一覧へ

入会について

寄付をする