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2025.06.02 事務局から

2024年改定入管法の永住資格取消に関して、5月12日付で人種差別撤廃委員会が日本政府にフォローアップ書簡を送付

 国連人種差別撤廃委員会は2024年6月25日付で、同委員会の「早期警告と緊急アクション手続き」を通じて、同年6月14日に成立した改定入管法に盛り込まれた、公租公課を滞納した場合などに在留資格「永住者」を取り消すことができるという規定は人種差別撤廃条約に抵触しうることを懸念し、日本政府にその「見直し」「廃止」に向けた措置に関する回答を求める書簡を送付しました(書簡本文・日本語版はこちら:https://migrants.jp/news/office/0701.html)。

 それに対して、日本政府は9月25日付で回答を送付し、永住資格取消は、人種差別撤廃条約が規定する人種差別には当たらないとし、日本に居住する「永住者」の権利に不均衡な悪影響をおよぼさないと報告していました。

 人種差別撤廃委員会はその回答を受けて、今年2025年5月12日付でフォローアップの書簡を日本政府に送付しました(書簡本文・日本語訳は下記をご参照ください)。

 書簡は、「在留カードの携帯や更新申請を単に失念したという理由で、『永住者』の在留資格を取り消されることはない」、「改定法では、本人に過失があるとはいえない病気や失業などのやむを得ない事情による公租公課の未納は、永住資格の取消事由として規定せず、支払い能力があるにもかかわらず故意に未納とする悪質な場合に限定している」などの日本政府の回答を箇条書きし、それらの内容に「留意する」、注視すると表明しています。

 そのうえで、改定法の施行が、永住資格を有する者を含む外国籍者の人権、とくに人種差別撤廃条約およびその他の関連する国際基準の下で保護される権利に不均衡な影響を与えないことを確保するよう促しています。

 委員会はさらに、人種差別撤廃条約の実施についての次回の日本政府報告書の審査において、これらの事項を議論する意向を示しています。

 私たち移住連は、これまでと同様にこの永住取消制度の廃止を求めていきますが、入管庁が永住資格取消事例を示すガイドラインの作成を行うことに対して、まず「永住者」当事者とその家族からのヒアリングを実施することを強く求めます。なぜなら、この永住取消制度の立法過程においては当事者の意見をいっさい聞くことなく国会に提出され、国会の法案審議においても当事者の意思が反映されなかったからです。

 また国会は、人種差別撤廃委員会の2024年書簡と2025年書簡を真摯に受け止めて、問題点を再度審議すべきです。少なくとも国会は、永住取消ガイドラインの作成を入管庁に任せるのではなく、国際基準に基づいたガイドライン案を提示すべきです。

※移住連は、日本政府による回答(2024年9月25日付)を受け、下記の声明を出しています。こちらもあわせてご参照ください。

【声明】国際人権条約に違反する「永住資格取消制度」を廃止すべきである~人種差別撤廃委員会への日本政府回答書の欺瞞~(2024年10月4日発出)https://migrants.jp/news/voice/20241004.html



(日本語訳)
REFERENCE CERD/EWUAP/115thsession/2025/CS/CS/ks

2025年5月12日

尾池厚之特命全権大使

在ジュネーブ国際機関日本政府代表部常駐代表

Eメール:mission@gv.mofa.go.jp

 

大使、

 私は、2024年の「出入国管理及び難民認定法」の改定、および日本に居住する永住資格を有する市民でない者(外国籍者)に対するその潜在的な影響に関して、当委員会の「早期警告と緊急アクション手続き」の下で受け取った情報について、委員会が2024年6月25日付で送付した書簡への日本政府の同年9月25日付の回答を受け、再び書簡を送付します。

 

 委員会は、書簡に回答した締約国(日本政府)に感謝するとともに、提供された以下の情報に留意しています:

 

・「出入国管理及び難民認定法」の改定案(以下、改定法)は、第213回国会において可決され、2024年6月21日に公布された。

・改定法において 、在留カードの携帯や更新申請を単に失念したという理由で、「永住者」の在留資格を取り消されることはない。

・改定法では、本人に過失があるとはいえない病気や失業などのやむを得ない事情による公租公課の未納は、永住資格の取消事由として規定せず、支払い能力があるにもかかわらず故意に未納とする悪質な場合に限定している。

・改定法では、軽微な法令違反は取消事由とせず、強盗や殺人など一定の重大な犯罪で懲役刑に処せられた場合に限り、過失犯や罰金刑に処せられた場合は、その結果としての処罰は取消事由としない。

・改定法では、仮に永住資格を有する外国籍者が在留資格取消事由に該当するようになったとしても、法務大臣は、直ちに在留資格を取り消して日本から退去させるのではなく、原則として、「定住者」などの在留資格を付与し、別の在留資格で日本に在留し続けることを認めている。

・永住者は、仮に在留資格の変更または取消しの決定に不服がある場合、行政訴訟を行うことにより、裁判所の判断を求めることができる。

・改定法は、政府または地方公共団体の職員が、在留資格取消事由のいずれかに該当すると思われる永住者を知ったときは、その者を入管庁に「通報することができる」(強調)と規定している。換言すれば、改定法は職員に通報を要請しているが、義務付けてはいない。

・永住者は、在留資格の取消し手続において、本人または代理人を通じて意見を述べたり、証拠を提出したりする機会を有し、これにより、法の適正手続を通じて外国人の権利が保護されるとともに、入管庁は、正確に事実関係を把握し、在留資格の取消しの要否を慎重に判断することができる。

・仮に永住資格が取り消されたとしても、在留資格「永住者の配偶者等」を有す配偶者または子は、原則として、そのままの在留資格、あるいは在留資格「定住者」で引き続き在留することが可能である。

・国会は改定法の付帯決議を採択し、永住者の不当な利益侵害を避けるため、定着性および法令違反の悪質性等の個別事情を厳正に判断することを義務付けている。また、同規定を慎重に適用するため、永住者の在留資格を取り消し得る具体的な事例に関する新たなガイドラインを作成・周知し、その家族の在留資格に十分配慮することも定めている。

 

 委員会はまた、締約国が永住資格制度を適正に管理する意向であり、委員会の懸念に対処するための適切な措置をすでに講じているとの情報を提供したことに留意します。この点に関し、委員会は締約国に対し、改定法の施行が、永住資格を有する者を含む日本に居住する市民でない者(外国籍者)の人権、とくに本条約およびその他の関連する国際基準の下で保護される権利に不均衡な影響を与えないことを確保するよう奨励します。委員会は、締約国に対し、簡易報告手続の下での次回の定期報告書審査において、これらの事項が議論されることを伝えます。

 委員会は、条約の効果的な実施を確保するため、日本政府との建設的な対話を継続することを希望しています。

 大使、ご高配のほど、よろしくお願いします。

敬具

 

Michal Balcerzak

人種差別撤廃委員会委員長



原文(英語):
https://www.ohchr.org/en/treaty-bodies/cerd/decisions-statements-and-letters
※上記HPの【C. sent letters to States parties→Japan→09/05/2025 English: Letter 1】にアクセス、または下記の添付ファイルから原文をご覧いただけます。

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