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株式会社テレビ朝日御中
2025年9月22日
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
共同代表理事 大川昭博 鈴木江理子 鳥井一平
外国人人権法連絡会 共同代表 田中宏 丹羽雅雄
全国難民弁護団連絡会議 代表 渡邉彰悟
貴社は、そのウェブサイト等において、「グッド!モーニング2025年9月15日分」として、「万博で日本に入国・・・『帰りたくない』就労ビザに切り替えたいとの相談相次ぐ」との報道内容を掲載していました(https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900173463.html、https://www.youtube.com/watch?v=hRcrDc_lvDU。以下「本報道」といいます)。
本報道は、看過しがたい不適切な点を複数含み、また、差別偏見を助長するものです。本報道は、既に貴社ウェブサイト及びYou Tubeにおいて閲覧できない状態になっていますが、私たちは、このような報道がなされたことについて、強く抗議するとともに、なぜこのような報道がなされたかの検証、及び、訂正報道を求めます。
以下、理由を述べます。
1 本報道は、「万博用のビザで日本に入国しながら、生活環境の良さにそのまま居座ろうとする外国人が増えています。」とし、You Tubeの映像によれば、「とりあえず“難民申請”」というテロップから始まり、協力している行政書士の「『帰りたくない』っていう。例えばエチオピアよりは、日本に居た方がいいわけですよ。お金的にも環境的にも。なんで日本はこんなに便利なんだと。それで『日本から出たくない』と」との発言をそのまま流し、また掲載した上で「『とりあえず難民申請』悪用も」との見出しを掲げています。
しかしながら、エチオピアについては、その情勢が極めて不安定であることから、国連難民高等弁務官事務所は、2022年3月、「エチオピアへの帰還に関するUNHCR の見解(仮訳)」を発出し、すべての国にエチオピアから避難する一般市民に関するノン・ルフールマン原則を尊重し、出身地域によっては最低限の基準として強制送還を一時停止し、国内避難・移住の選択可能性に基づいて難民としての国際保護を否定しないよう求めています。また、入管庁も、エチオピア出身の難民申請者の多くについて、「難民条約上の難民である可能性が高いと思われる申請者又は本国情勢等により人道上の配慮を要する可能性が高いと思われる申請者」とする類型に振り分けています。
上記からすれば、本報道において取り上げられたエチオピア女性が難民条約上の難民に該当する可能性は相当程度存在します。当該女性やエチオピア出身者を取り上げて、難民申請の悪用の可能性を報じることは適切ではありません。また、エチオピア出身者を例として「万博用のビザで日本に入国しながら、生活環境の良さにそのまま居座ろうとする外国人が増えています。」と報じることは誤りです。
2 本報道に登場した行政書士は、そのツイッターアカウントにおいて「不良外国人と戦う行政書士」と自己紹介し、「日本人差別」があると訴えるなど、外国人に対する偏見をあおるポストを多数行っている人物です。当該行政書士の発言をあたかも外国人支援の専門家の解説であるかのように取り上げた点にも問題があります。
とりわけ外国人に対する差別や偏見が深刻化している現在、大手マスメディアである貴社が、差別や偏見に基づく発言をあたかも専門家の解説であるかのように取り上げることは、エチオピア国籍者をはじめとする外国籍者に対する誤った理解を広め、差別偏見を助長するもので、その影響に鑑みて看過できません。
3 本報道には、当該行政書士が「来た人たちをどういう風に管理していくのかが、今やっぱり何もできていない状態」と発言する場面が存在します。しかしながら、近年在留管理は厳格化し、「今やっぱり何もできていない状態」というのはおよそ客観的な評価ではありません。
4 したがって、本報道に強く抗議するとともに、なぜこのような報道がなされたかの検証、及び、訂正報道を求めます。
つきましては、本申入れに対するご回答を、本書面到達より一週間以内に郵送またはメール等で以下の連絡先までいただけますようお願いいたします。
(連絡先)
全国難民弁護団連絡会議
〒162-0842 東京都新宿区市谷砂土原町2-2 木原造林市谷ビル2階
いずみ橋法律事務所内
jlnr@izumibashi-law.net
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