「経営・管理」の上陸許可基準等の改正にかかる意見
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
共同代表理事 大川昭博 鈴木江理子 鳥井一平
東京都台東区上野1-12-6 3階
Tel 03-3837-2316 Fax 03-3837-2317
私たち移住連は、この社会で暮らし、働く、移民とその家族の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会をめざす個人、団体による全国のネットワーク組織である。
「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令等の一部を改正する省令案」等に係る意見募集について、以下のとおり意見を述べる。
1 今回の「経営・管理」の上陸許可基準等の改正案は、最低資本金を従来の6倍となる3000万円に引き上げ、学歴または実務経験を要し、別表第一以外の在留資格を有する外国籍者以外の常勤職員の確保を必須とするなど、「経営・管理」の要件をほぼ全面的に変更するものである。さらに、パブコメ募集開始後、申請者か常勤職員のいずれかにB2レベル(日本語検定1~2級に相当)という極めて高い日本語能力を求めるという報道もなされている。
この改正が現実になされれば、その影響は極めて大きいと考えられる。
日本で起業しようとして来日する外国籍者のみならず、既に別表第一の在留資格で日本に在留する外国籍者が起業する可能性も大きく狭められることにもなる。
これだけ大きな改正が国会での議論を経ずになされることは、法律による行政の観点から許されるものではない。また、上記のとおり、その要件をほぼ全面改正するものであるにもかかわらず、今回の改正に関する動きはあまりに拙速であり、その改正を要する立法事実や改正による影響の確認や検討等がなされているとは到底言えない。
日本が外国人受入れをどのように進めていくかが大きな課題となっているからこそ、このような大きな改正については、十分な検討を経たうえで導入の是非が決定されるべきであり、かかる過程を経ていない今回の改正には反対する。
2 仮に本改正がなされる場合には、既に経営管理の在留資格を得て在留している外国籍者には適用がないことを明確にすべきである。
万一、改正後の上陸許可基準等が既に経営管理の在留資格を得て在留している外国籍者に適用されれば、その者の生活が根本的に覆されることになる。このような施策が、十分な検討もないまま、既に同在留資格で在留している者にもあてはめられるようなことがあれば、対象となる外国人にとって極めて大きな不利益になるのみならず、日本の入管行政、外国人受入れの安定性・継続性に対する信頼は失われ、日本にとっても利益にならない。
とりわけ、その者に家族がおり、その家族が家族滞在の在留資格で滞在し、学齢期の子どもがいる場合に、この内容が適用されて更新が不許可となれば、必然的に子どもの在留の継続も不可能になり、子どもが学業を中断されることになる。これまで日本語で教育を受けてきた子どもが、突然その教育環境を奪われる影響は甚大である。また、子どもの年齢や国籍国等によっては、単なる学業の一時的中断ではなく、学業継続の断念を意味することにもなりうる。かかる事態は、子どもの権利条約3条1項、4条、29条等に反するのみならず、こども基本法や児童福祉法が定める基本原理や国の責務にも明確に反する。
さらに、更新が不許可になって事業が継続できなくなれば、従業員やその家族にも必然的に影響が及ぶことになる。
3 なお、本改正案では、常勤職員から法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除くとされている。これは、従前の要件の継続ではあるものの、従前は500万円の資本金の要件を満たせば常勤職員は必須の要件ではなかったため、その要件の持つ重要性は大きく異なるところ、別表第1の在留資格の外国籍者の除外を維持する必要性も相当性もみあたらず、過剰な制約である。したがって、仮に本改正がなされる場合には、当該要件は削除されるべきである。
以上