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2025.06.19 声明・意見

【声明】管理・監視や排除ではなく、これからの多民族・多文化共生社会をめざして

2025年6月13日に「経済財政運営と改革の基本方針2025」(以下「骨太の方針2025」)が閣議決定されたことを受け、本日6月19日、移住連は下記の声明を出しました。



管理・監視や排除ではなく、これからの多民族・多文化共生社会をめざして

 

2025年6月19日 NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

 

 私たち移住連は、この社会で暮らし、働く、移民とその家族の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会をめざす個人、団体による全国のネットワーク組織です。

 

 2025年6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(以下「骨太の方針2025」)が閣議決定されました。そこには、国民の安心・安全の確保の1つとして「外国人との秩序ある共生社会の実現」があります。

 具体的な内容は、自民党政務調査会と「外国人との秩序ある共生社会実現に関する特命委員会」(以下「特命委員会」)による「国民の安心と安全のための外国人政策 第一次提言」(以下「第一次提言」、2025年6月5日)のダイジェスト版です。

 

 はたして、「外国人との秩序ある共生社会」とは何なのでしょうか。

 

 特命委員会は、外国人による交通事故の事例を挙げ、外国人が国民に「不安」を与えているという問題意識のもと、「国民の安心・安全」のために、国民の不安に応える対策を包括的に議論するとして、5月21日に初会合を開いています。

 そして、第一次提言では、国民の不安を解消するために、デジタル技術等を駆使して外国人の管理・監視を徹底し、些細な制度の逸脱(ルール違反)も見逃すことなく情報収集し、入国審査や在留審査に活用するとしています。提言のサブタイトルは、「違反外国人ゼロを目指して」です。

 同様の姿勢は、5月23日に公表された出入国在留管理庁の「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」にもみられます。「ルールを守らない外国人」によって国民の安全・安心が脅かされているとして、入国から在留、出国(送還)まで、外国人を切れ目なく徹底的に管理・監視し、退去強制が確定した外国人の排除を促進することで、「不法滞在者ゼロ」を目指すとしています。

 

 ここには、日本社会の一員として外国人を包摂し共生するという姿勢はどこにもみられません。外国人を日本社会の秩序を壊す不安材料と捉え、それを防止するために管理・監視と排除を強化するという方針は、はたして共生政策といえるでしょうか。

 むしろ、今、目の前にある移民社会の現実から目を背け、統計などの客観的事実を分析することなく、安易に外国人を国民の不安と結びつけ、国民と外国人を対峙・対立させ、分断するという統治手法です。

 

 私たちは騙されません。

 SNSなどで拡散されている根拠のない言説を都合よく利用し、外国人嫌悪を煽り、共生を妨げているのは政府ではないでしょうか。

 「国内社会のグローバル化を前提としていない制度・運用」(骨太の方針2025、32頁)を見直すというのであれば、移民政策に踏み出すことこそ求められるべきです。いまだ「外国人材の活用は移民政策ではない」と繰り返している自らの無策を反省することなく、「国民のために」という言葉を振りかざし、外国人をスケープゴートにするのはいい加減にしてください。

 

 私たち市民社会は、何十年もの間、言葉や文化の違い、時に相互の無理解や誤解を乗り越え、国籍や民族、ジェンダーや年齢にかかわらず、一人ひとりの尊厳や権利、そして違いを尊重し、試行錯誤を重ねながら「共に生きる」社会に向けた努力をしてきています。

 今、政府がなすべきことは、このような実践に学び、豊かな移民社会の実現に向けて、市民社会の多様な取組みを支え、後押しすべき制度や環境を整備することではないでしょうか。

 

 私たちは敗戦後80年を迎えます。

 管理・監視を声高に叫び、移民の法的地位を不安定化し、排除を強化するのではなく、この社会に生きる誰もが安心して安全に暮らすためにはどうすればよいかを議論することが何より必要です。今ここにある移民社会という現実を直視して、旧植民地出身者も含めて、移民/移民ルーツの人びとと共につくる多民族・多文化共生社会の実現に向けて、外国人人権基本法や包括的差別禁止法、移民基本法の制定などの移民政策に取り組むことを、今あらためて強く求めます。




※本声明でふれている文書等については下記をご参照ください

自民党政務調査会と外国人との秩序ある共生社会実現に関する特命委員会

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