1 永住者ってどんな人たち?
Q 1.1 現在、在留資格「永住者」を持っている人はどのくらいいるの?
A 2023年6月末現在、880,178人で、在留外国人の27.3%です。
https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html
Q 1.2 「永住者」ってどんな人たち?
A 長年にわたる日本への移民の歴史を反映して、永住者のバックグラウンドは多種多様です。年齢も子どもから中高年まで幅広く、日本で生まれたり、子どものころから日本で生活してきた人も多数含まれています。
例えば、以下のような人たちが含まれます。
・中国残留邦人の親族
・南米等から来日した日系人
・1970~80年代にインドシナ難民として来日した人たちから近年まで難民として来日して日本に生活基盤を築いた人
・留学生として来日して日本で就職した人、会社員・教師・調理師・介護士などさまざまな仕事のために来日した人、日本で起業した人など、元就労資格の人
・結婚により、または親に連れられて来日するなど、家族の関係に基づき来日した人
・特別永住者に近い事情を持つ人
・上記の人たちの家族
Q 1.3 在留資格「永住者」を目指しているのはどんな人たち?
A 中長期の在留資格を有し、今後も日本で生活していこうと考えている外国籍者の多くが「永住者」を目指しています。
Q 1.4 永住者は増えている?
A 数字の上では増加しています。毎年、新たに永住許可を受ける人がいるのですから、当然のことです。しかし、永住許可の審査が厳格化していることから、増加のペースは鈍化しています。
さらに、外国籍者全体の在留資格別の割合を見ると、近年、別表第一の在留資格(就労に制限のある在留資格)を持つ人の割合が増加しており、永住者の割合は10年近く頭打ちとなっています。
2 在留資格「永住者」って何?
Q 2.1 「永住者」ってどんな在留資格ですか?
A 入管法別表第二に規定されている在留資格で、日本に生活基盤を築いた外国籍者が、文字通り日本に永住するために与えられるものです。
「永住者」は、入管法上の在留資格の中で、もっとも安定した在留資格です。
Q 2.2 外国籍者が安心して生活していくためにはどうして「永住者」の在留資格が必要なの?
A 「永住者」以外の在留資格のほとんどは更新が必要であり、また、就労制限があるものや、一定の身分関係を前提とするものも多く、生活状況が変わった場合に在留資格を失うおそれがあります。日本を終の棲家とする外国籍者にとって、こうした不安定さのない在留資格を得ることが、日本で安心して生活していくために必要です。
また、永住者でないと住宅ローンや教育ローンなどを組む際にも困難が生じます。
Q 2.3 永住許可を受けるための手続きはどんなもの?
A 他の在留資格と異なり、在留資格「永住者」は、日本に新規入国する際に最初から得られるのではなく、一定の期間(原則10年)以上日本で生活した後、永住許可申請をして許可された場合に得られることになっています。ただし、永住者の子どもとして日本で生まれた人については、最初から「永住者」が許可されることもあります。
Q 2.4 永住許可を受けるためにどのような要件が必要?
A 「素行」が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、原則として引き続き10年以上日本に在留していること、納税や社会保険料の納付その他の公的義務を履行していること等が必要です。
このような厳しい条件をクリアして永住者となった人たちは、その後、日本を終の棲家として生活していくのであり、その地位を安易にはく奪すべきではありません。
法律上は、
ア:素行が善良であること
イ:独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
ウ:その者の永住が日本国の利益に合すること
の3つの要件が必要とされており、ウについては、「永住許可に関するガイドライン」に基づき、以下の要件により審査されています。(類型によっては、一部の要件が不要または緩和されている場合もあります)。
・原則として引き続き10年以上日本に在留していること
・就労を目的とする在留資格(「技能実習」「特定技能1号」を除く)または就労制限のない在留資格で引き続き5年以上在留していること
・罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
・公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
・現に有している在留資格について、入管法施行規則に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。(ただし当面は「3年」でOK)
・公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
Q 2.5 永住許可は、一定年数日本に住んでいれば必ず取れる?
A そうではありません。Q2-4のとおり、在留年数以外にも要件があり、それらを満たさなければ許可されません。
特に、近年は審査が厳格化しており、長年日本に住んでいても永住許可が受けられずにいる人がたくさんいます。
Q 2.6 (現行法上)永住許可を受ければ、もう取り消されない?
A そうではありません。現行法上も、無期または1年を超える懲役・禁錮の実刑に処せられたとき、薬物に関する犯罪で有罪判決を受けたとき等は、永住者であっても退去強制の対象になりますし、永住許可申請に虚偽があった場合は在留資格取消しの対象になります。
現行法上、永住者が在留資格を失う可能性がある場合として、以下があります。
(1) 入管法上の退去強制事由に該当し、退去強制令書が発付されたとき
無期または1年を超える懲役・禁錮の実刑に処せられたとき、薬物に関する犯罪で有罪判決を受けたとき、他人の入管法違反行為に関与したときなどは、永住者でも退去強制の対象となります。
(2) 現行法上の在留取消し制度により、取消しをされたとき
永住許可申請の内容に虚偽があったとき、住居地の届出をしない場合や虚偽の届出をしたときは、永住者も在留資格取消しの対象になります。
(3) 出国中に再入国許可(みなし再入国を含む)の期限を過ぎたとき
現在は「みなし再入国許可」といって、出国カードで再入国の意思表示をするという方法が主流になっていますが、この場合、1年以内に日本に戻る必要があり、永住者も1年以内に日本に戻らないと在留資格を失います。
Q 2.7 永住許可の審査は厳格化している?
A 近年、特に収入に関する審査、税金や社会保険料の納付状況に関する審査が厳格化しています。「定住者」や就労資格の人の多くは、永住許可申請の際に、過去5年分の収入及び納税に関する資料と、直近2年分の社会保険料の納付状況に関する資料を提出する必要があります。そして、この期間内に、収入が基準に達しない年や、税金や社会保険料を遅れて払った年があれば、不許可となっています。
3 永住許可取消し制度を導入する理由は?
Q 3-1 政府はなぜ永住許可の取消し制度を導入しようとしているの?
A 「育成就労制度を通じて、永住に繋がる特定技能制度による外国人の受入れ数が増加することが予想されることから、永住許可制度の適正化を行う」と説明しています。
Q 3.2 育成就労制度により外国人労働者の受け入れを増やすと、「永住に繋がる」人は増加する?
A 育成就労や特定技能1号は、ガイドライン上の要件の1つである「就労資格で5年以上の在留」の期間にはカウントされません。特定技能2号に移行して初めて5年のカウントが始まります。したがって、育成就労で来日した人が永住許可を受けられるようになるまでには、他の在留資格の人以上に長い年月が必要であり、「永住に繋がる」人は簡単には増加しません。
Q 3.3 永住許可につながる外国籍者が増えることは問題なの?
A 共生社会の実現という趣旨、また日本が「選ばれる国」になるためにも、日本で生活することを選び、日本に生活基盤を築いて安定した生活をする永住者が増加することは、問題どころか、喜ばしいことです。
4 永住許可取消し制度って?
Q 4.1 永住許可取消し制度には、どのような問題があるの?
A この文章を読んでいるあなたも、たとえば病気や失業などで税金や社会保険料を滞納してしまう可能性はあります。
その際は、法律に従って督促、差押、行政罰や刑事罰といったペナルティが課されます。
永住許可取消し制度は、そんな「誰にでも起こりうる状況」について、外国籍住民に対してのみ永住許可取消しという非常に厳しい不利益を課す差別的な制度です。
軽微な法違反によって永住者の生活の基盤である在留資格を取り消すことは、永住者だけでなく、今後永住許可を得ようとしているすべての外国籍住民の立場を不安定にします。それはひいては日本の社会をも不安定にする可能性があります。
以下のとおり、多くの重大な問題があります。
・そもそも、永住者に対してこのような取消し制度を導入する必要がある、という根拠となる事実(立法事実)がないこと
・日本に生活基盤を築き、日本を終の棲家とする永住者の立場を不安定にすること
・日本国籍者と同様に日本をホームとして生活する永住者から、税金や社会保険の滞納、比較的軽微な刑事前科といった事情で在留資格をはく奪することは差別であること
・日本で長年生活しても、日本で生まれ育っても、外国籍である限り一生管理・監視が続く制度であること
・たとえ日本に生活基盤を築いた永住者であっても在留資格をはく奪してかまわない、というメッセージを社会に送り、外国籍者に対する差別や偏見を助長すること
Q 4.2 在留資格を取り消されると、どんなことが起きる?
A これまでその方が築いてきた日本での生活が根本から脅かされます。
他の在留資格への変更が認められない、または一時的な在留資格しか許可されない場合はもちろん、中長期の在留資格が許可されたとしても、その後の更新は保障されていないので、在留継続ができないリスクと隣り合わせの脆弱な立場に突き落とされます。住宅ローンや教育ローン等の社会的信用も喪失します。在留資格によっては就労制限や奨学金が利用できないなどの制限が生じますし、家族の在留に影響する場合もあります。
Q 4.3 「故意に税金や社会保険料を払わない場合」には在留資格の取消しで対応していいの?
A 前提として、税金や社会保険料を支払わない場合、国籍に関わらず、督促や滞納処分(差押)がされ、追徴金や延滞税等のペナルティもあります。これらに加えて、外国籍であるからといって、生活基盤をゆるがす在留資格取消しをすることは、外国籍者に対する差別です。
なお、病気や失業等により支払ができなくなった場合でも、支払義務の存在を認識していれば「故意」になりえます。
Q 4.4 犯罪をした永住者には在留資格の取消しで対応していいの?
A 前提として、犯罪をした人は、国籍に関わらず刑罰が科されます。さらに、一定以上の犯罪の場合、外国籍者は退去強制手続に付されます。
永住者が日本に生活基盤を築いた人たちであることからすると、退去強制事由にならない、比較的軽微な犯罪については、日本国籍者と同様に刑罰を科した上で社会の中で更生させるべきです。外国籍だからといって、生活基盤をゆるがす在留資格取消しを行うことは、外国籍者に対する差別です。
Q 4.5 永住「許可」だから国の裁量で取消してもいいの?
A 永住許可をする際に国の裁量があることと、いったん許可した在留資格を国の裁量で取り消してよいかどうかは、全く別の問題です。永住者の安定した生活の基礎となる在留資格を安易に取り消すことは人権侵害であり、外国籍者に対する差別でもあります。
Q 4.6 「永住者」の在留資格が取り消されても、他の在留資格が許可されるから問題ない?
A いいえ、大きな問題が生じてしまいます。
法案では、他の在留資格への変更を認めない場合がありうるとされています。そして、ほかの在留資格に変更する場合も、どの在留資格を許可するかは入管側が判断することになっており、中長期の在留資格が許可されない可能性があります。そうなると、それまでの日本での暮らしを続けられなくなります。もし中長期の在留資格への変更が許可されたとしても、その後、それを更新できなくなれば、日本でのくらしが続けられなくなります。
Q 4.7 「入管法上の義務を履行しないとき」も取消しの対象なの? どんな場合があるの?
A 法案では、入管法上の義務を履行しないときも、取消し事由のひとつとなっています。たとえば、在留カードの常時携帯義務、在留カードの有効期間の更新申請義務や在留カード紛失時の再交付申請義務などです。在留カードを持ち歩いていない、在留カードの更新を忘れた、というような場合も、在留資格の取消しの対象になってしまいます。
Q 4.8 在留資格取消事由の通報制度ってなに?
A 法案では、国又は地方公共団体の職員が、職務上、在留資格取消事由に該当すると思われる外国人を知ったときは、入管に通報ができるとされています。つまり、住居地の届出が遅れた場合や、税金や社会保険料を滞納した場合などに、市区町村役場や税務署等から通報され、在留資格を取り消される可能性がでてくるということです。