移住連(NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク)は、与野党9政党(自由民主党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党、参政党)に対して、「共生社会」の実現を問う-移民政策に関する政党アンケート2024衆院選を実施いたしました。
2024年10月27日、第50回衆議院議員総選挙の投開票日です。
現在の日本の制度では「日本国籍」を持たない人びとには投票権がありません。そのため、選挙という機会を通じて、労働者・生活者など、さまざまな形でこの社会に暮らす「日本国籍」を持たない人びとの声が反映されることは、きわめて困難であるのが現状です。
そこで、移住連(NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク)は、与野党9政党(自由民主党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党、参政党)に対して、「共生社会」の実現を問う-「移民政策に関する政党アンケート2024衆院選」を実施しました。いただいた回答を以下に公表いたします。
昨年、2023年6月には難民申請者の送還を可能にするなど、国際人権法・人権基準から一層遠ざかる入管法改定が可決・成立し、今年、6月10日から施行されています。今もなお、その運用や影響は不透明で、支援者をはじめ、その影響を直接受ける移民・難民の人びとは状況を注視しています。
さらに時を同じくして、6月14日には、外国人の日本での生活を不安定にさせる永住資格取消し制度の導入、「奴隷制度」を継承する育成就労制度の創設など、すでに「移民社会」である日本社会の実態をないがしろにした、入管法と入管特例法、及び技能実習法の改定法案が、十分な審議もないまま国会で成立しました。
2023年、2024年と立て続けに「改定」が行われる中、移民・難民の人びとの人権と尊厳が保障される制度を構築する道-「共生社会」の実現-へと歩みを進められるのか、それとも、一歩また一歩とその道から遠ざかっていくのか。
移民社会・日本の、どのような将来を選択するか、この度の衆議院議員総選挙に際して、本アンケート結果が参考になれば幸いです。
最後になりましたが、ご多忙の中、ご回答いただいた政党の皆さまにこの場を借りて感謝申し上げます。
※自由民主党からは「党としての見解としてまとまっていない事項もあったため」回答見送り、日本維新の会からも回答見送りとの連絡がありました。
【アンケートから見えた傾向】
合計5項目について、9政党にアンケートを送付しました。うち、6政党が回答し、自由民主党と日本維新の会は回答を見送っています。また、参政党には10月17日にアンケートを送付し、回答を待っている状況です。
外国人労働者の積極的な受け入れについて
「どちらかと言えばそう思わない」と消極的な姿勢を示しているのは国民民主党とれいわ新選組です。
他の政党はいずれかの形で積極的な受け入れが必要であると考えています。
「育成就労制度」への評価
「育成就労制度」の創設によって「技能実習制度」における問題が解決される、と肯定的に受け止めているのは公明党のみに留まっています。
一方で、立憲民主党、国民民主党、共産党、れいわ新選組、社民党は厳しい評価を下しています。
労働者、生活者としての権利を尊重する制度の導入について
この質問については、すべての政党が積極的な姿勢を示しています。
永住許可制度の緩和について
前向きな姿勢を示している政党は立憲民主、共産党、れいわ新選組、社民党です。
消極的な回答をしたのは公明党で、「その他」の回答をおこなった国民民主党も慎重な姿勢を見せています。
永住者がより安定的に安心して日本で生活できるような制度や環境の整備について
積極的な態度を示したのは、公明党、立憲民主、共産党、れいわ新選組、社民党です。
国民民主党は、永住許可制度の緩和に関する回答と同様に「その他」の回答をおこない、慎重な姿勢を示しています。
自民 | 公明 |
立憲 | 国民 | 維新 | 共産 | れ い わ |
社民 | 参政 | |
1.深刻な労働力不足に対応するため、積極的に外国人労働者を受け入れる必要がある。 | ー | ◯ | ◯ | △ | ー | ◎ | △ | ◎ | |
2.「育成就労制度」の創設によって、「技能実習制度」における諸問題は解決される。 | ー | ◯ | × | △ | ー | × | × | × | |
3.外国人労働者の受入れに際しては、労働者として、生活者としての権利を尊重する制度を導入する必要がある。 | ー | ◎ | ◎ | ◯ | ー | ◎ | ◎ | ◎ | |
4.外国人がより安定的に安心して日本で生活できるように、永住許可制度を緩和した方がよい。 | ー | △ | ◯ | 他 | ー | ◎ | ◎ | ◎ | |
5.永住者がより安定的に安心して日本で生活できるような制度や環境を整備する必要がある。 | ー | ◯ | ◎ | 他 | ー | ◎ | ◎ | ◎ |
自由民主党:回答見送り
公明党:どちらかと言えばそう思う
近年の日本における労働力不足の深刻化や、国際的な人材獲得競争が激化する状況に鑑みると、日本が魅力ある働き先として「選ばれる国」になる必要があると考えます。そのような観点から、一定の技能等を持って働こうとする外国人の方々の活躍を後押しし、外国人との共生社会を実現していくことが必要不可欠であると考えます。外国人材の受け入れに関しては、特定技能制度を導入するなど、専門的・技術的分野の外国人材の受け入れを積極的に推進してきました。さらに、本年6月に人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を創設する入管法等改正法が成立しました。育成就労制度の円滑な施行に向けて、早急に準備を進めてまいります。
立憲民主党:どちらかと言えばそう思う
少子高齢化の進展等により人材確保が困難な産業分野・地域が生じており、日本社会を維持するため外国人労働者の受け入れは不可避です。他方で、外国人を使い捨てにせず、地域で共生するため、立憲民主党の提案する「外国人安心就労法案」「多文化共生社会基本法案」等の整備が必要です。
国民民主党:どちらかと言えばそう思わない
外国人労働者については既に日本の産業界、経済界等に深く組み込まれていることから、即座に廃止することは現実的ではありません。しかし、外国人労働者の受け入れのあり方について、受け入れの仕組み、外国人労働者の待遇など、政府の方針と改善策を早急に明確にすることを求めていきます。
日本維新の会:回答見送り
日本共産党:そう思う
そもそも、どの国のどの企業で働くか、労働者には選ぶ権利があり、企業と労働者との契約の問題です。また、外国人労働者なしに機能しない地方産業分野がいくつもあるのが現状です。そのためにも外国人労働者の労働者としての権利を保障する必要があります。
れいわ新選組:どちらかと言えばそう思わない
これまで日本では、外国人労働者の受け入れは人手不足の解消の手段として用いられてきており、その結果、低賃金構造を日本に定着させる要因となっている。私たちは国内の賃金全体の底上げが重要だと考えており、人手不足へ対応するための手段として、積極的に外国人労働者を受け入れるべきとは考えていない。人手不足問題については賃上げが最重要政策と考えている。
社民党:そう思う
外国人労働者なしでは日本社会を維持できません。外国人労働者を積極的に受け入れるべきです。一方で、受け入れにあたっては、外国人労働者の処遇改善や人権擁護、日本語教育、生活支援の態勢を整備するべきです。
参政党:回答待ち
2.「育成就労制度」の創設によって、「技能実習制度」における諸問題は解決される。
自由民主党:回答見送り
公明党:どちらかと言えばそう思う
技能実習制度には、人材育成を通じた国際貢献という制度目的と運用実態のかい離が指摘されてきたことに加えて、
・本人意向による転籍が認められておらず、労働者の権利保護が不十分である
・技能実習生の失踪等の背後に、一部の受け入れ機関側の不適正な取扱いや技能実習生側の経済的な事情等の影響が考えられるなど、制度的・構造的な問題がありました。
育成就労制度では、人材育成と人材確保を目的とした上で、本人の意向による転籍を認めるなどの転籍制限の緩和や、受け入れ機関や送出機関の適正化など、制度全体を適正化するための方策をしっかりと講じることにより、これらの課題を解決してまいります。
立憲民主党:そう思わない
技能実習制度は、ハラスメントや低賃金・長時間といった人権侵害や労働関係法令違反が数多く指摘され、国内外から奴隷制度と批判されてきました。
技能実習制度に代わる育成就労制度は、転籍制限、来日前の費用負担、家族帯同の長期制限がそのままであるほか、監理に悪質な民間団体が介在する仕組みが残るなど、技能実習制度と仕組みはほぼ同じで、抜本改正とは程遠い内容です。
その上、季節性のある分野での派遣形態を新たに導入するなど、労働者の地位や収入がさらに不安定になる懸念があり、技能実習制度の温存どころか改悪と言わざるを得ません。
国民民主党:どちらかと言えばそう思わない
新たに始まる外国人労働者の育成就労制度については安価な労働力の確保策として悪用されないよう、厳格かつ適切な運用を求めます。また、育成就労制度と特定技能制度が一体的な運用となり、日本で働く外国人が特定技能制度2号になると家族帯同で永住できることから、来日する子どもや家族の日本語習得や学校での学習機会の確保等、国が主体的な対策を講じていくよう取り組みます。
日本維新の会:回答見送り
日本共産党:そう思わない
本人の意思による転籍の自由を確立すること、家族帯同を認めることが不可欠と考えます。
れいわ新選組:そう思わない
安い賃金や労働環境を改善せずに、その賃金でもきてくれる「外国人」を受け入れようとしていることは育成就労制度でも同様であり、外国人を安く受け入れ、使い捨てにしようとしている状況は変わっていない。そもそも、一部外国人を安い労働力として扱い、人材不足を補おうとすることがナンセンスであり、日本社会が賃金上昇に向けて本当に全力で取り組むというのであれば、低賃金労働者の積極的な受け入れはやめ、外国人も日本人も人権や労働環境が保障される制度の構築をはかるべきと考える。
社民党:そう思わない
「育成就労制度」は制度の看板をかけ替えた「技能実習存続制度」に過ぎません。転籍要件の緩和が不十分であり、悪質な職場からの転籍がなお容易ではありません。また、受け入れ先の事業所の監督機能強化策も実効性に疑問が残ります。
参政党:回答待ち
3.外国人労働者の受入れに際しては、労働者として、生活者としての権利を尊重する制度を導入する必要がある。
自由民主党:回答見送り
公明党:そう思う
これまで以上に外国人材の人権を擁護しつつ、労働者としてのみならず地域社会の構成員として受け入れ、共に生きがいを育み社会を形成していくことが重要だと考えています。こうした理念を明記した「外国人との共生社会基本法」を制定すべきだと考えます。
立憲民主党:そう思う
外国人労働者を受け入れる上で、人材不足の分野や地域の活力向上のための担い手として、その権利を尊重する制度は必要です。
人権侵害と名高い技能実習制度とその後継である育成就労制度は廃止し、外国人労働者の人権尊重を柱として、新たに一般労働の在留資格を創設する「外国人安心就労法案」を提出しています。一般労働の在留期間満了後も引き続き就労可能な在留資格の創設を検討しており、外国人を労働者として、日本で共に暮らす生活者として受け入れ、ともに円滑に生活するための「多文化共生基本法案」を提出しています。
国民民主党:どちらかと言えばそう思う
育成就労制度と特定技能制度が一体的な運用となり、日本で働く外国人が特定技能制度2号になると家族帯同で永住できることから、来日する子どもや家族の日本語習得や学校での学習機会の確保等、国が主体的な対策を講じていくよう取り組みます。
日本維新の会:回答見送り
日本共産党:そう思う
労働者としての権利の確立、日本語習得、社会統合に向けた準備を手厚くすすめる必要があると考えます。
れいわ新選組:そう思う
私たちれいわ新選組は「多文化共生社会を実現するため、外国にルーツを持つ住民が自治体行政に参画する「外国人市民代表者会議」のようなしくみをつくる。公募で選考された「外国人市民」は、要望や調査審議の結果をまとめて首長などに報告し、首長は議会に報告・公表するとともに、施策に反映するよう取り組む」ことを基本政策に掲げています。
社民党:そう思う
国籍関係なくすべての労働者の権利が尊重されるべきです。
参政党:回答待ち
4.外国人がより安定的に安心して日本で生活できるように、永住許可制度を緩和した方がよい。
自由民主党:回答見送り
公明党:どちらかと言えばそう思わない
永住許可は入管法上原則として
① 素行が善良であること
② 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
③ 日本国の利益に合すると認められること
の3つの要件を満たす必要があるところ、政府ではこれらの要件を明確化し、外国人及び関係者の予見可能性を確保するため、「永住許可に関するガイドライン」を作成・公開しています。引き続き本制度の適正な運用を推進してまいります。
立憲民主党:どちらかと言えばそう思う
党では、永住許可制度の緩和については議論していません。
一方で、外国人労働者の労働環境整備のために立憲民主党が提出した「外国人労働者安心就労法案」では、求職・雇用は公的機関を通じて行い、労働者支援も公的機関が行うこととして、適正な受け入れ・雇用管理の実現を図っています。また、中長期で在留が可能となる在留資格の創設を検討しており、立憲民主党は、外国人労働者が安定した地位で安心して中長期的に日本で労働できる環境の整備を目指しています。
国民民主党:その他
永住者の増加は影響力の増加も意味することから、なし崩し的な環境整備ではなく、国としての在住外国人政策の全体的な方向性や計画を明確にする必要があり、そのうえで現実的な検討が行われるべきです。
日本維新の会:回答見送り
日本共産党:そう思う
今年の入管法改定でねじ込まれた永住権取消規定は外国人差別であり、削除が必要です。その他緩和策を検討すべきです。
れいわ新選組:そう思う
「在留外国人を管理する法制度ではなく、外国人の権利を守る法制度へと改定する」ことを基本政策で掲げております。
社民党:そう思う
参政党:回答待ち
5.永住者がより安定的に安心して日本で生活できるような制度や環境を整備する必要がある。
自由民主党:回答見送り
公明党:どちらかと言えばそう思う
永住者を含む外国人との共生社会の実現のためには、日本人と外国人が互いを尊重し、安全・安心に暮らせる社会を目指していく必要があると考えています。
外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援等を行いつつ、ルールに違反する者に対しては厳正に対応してきました。
引き続き、外国人との共生社会の実現に向けた取り組みを着実に進めてまいります。
立憲民主党:そう思う
永住者が、人種や国籍の違いなどにより、差別や誹謗中傷などの人権侵害を受けることはあってはなりません。
立憲民主党は、人種や国籍などのあらゆる差別を解消するため、「包括的差別禁止法」の制定を目指します。また、国連の「パリ原則」に基づき、独立した人権救済機関を設置します。そして、「ヘイトスピーチ解消法」における取り組みを拡大し、国際人権基準に基づいて、人種などを理由とする差別的言動を禁止する法律の制定など、あらゆる差別撤廃に向けた動きを加速させます。
さらに、入管法改正で追加された、公租公課を滞納した場合に永住許可を取り消す条項は、日本人に対する罰則と比べてあまりに重く差別的で、人権侵害のおそれがあるため、直ちに削除します。
国民民主党:その他
永住者の増加は影響力の増加も意味することから、なし崩し的な環境整備ではなく、国としての在住外国人政策の全体的な方向性や計画を明確にする必要があり、そのうえで現実的な検討が行われるべきです。
日本維新の会:回答見送り
日本共産党:そう思う
多民族、多文化共生の日本をつくっていくため、受け入れ国として制度、環境整備が不可欠です。
れいわ新選組:そう思う
「共生社会の礎となる、外国人の包括的な権利を規定する法律を制定する」という内容を党の基本政策として策定しております。
社民党:そう思う
通常国会で改悪された入管法によって、永住外国人が一定の罪を犯した場合や税金や社会保険料を故意に支払わない場合に永住許可を取り消せる規定が設けられました。新たに永住権の取り消し規定を設けていくことは、外国人が安心して暮らせる社会とはなりません。永住者が日本で安定的に生活できるようにするべきです。
参政党:回答待ち
調査概要:
調査名 「2024年衆議院選挙 移民の課題に関する政党アンケート」
調査対象 自由民主党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党、参政党
調査期間 2024年10月3日〜 (参政党には10月17日に送付)
調査方法 アンケート用紙、Webフォーム