「出入国管理及び難民認定法施行令の改正案等」への意見
私たち移住連は、日本で暮らす移民・難民・移民ルーツの人びととその家族の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会を目指す個人、団体による全国のネットワーク組織です。
出入国管理及び難民認定法施行令の改正案等について、以下のとおり意見を述べます。
1 難民の定義は、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者またはそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まない者」であり、補完的保護の定義は、うち、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に」を除いたものです。
日本で難民認定が極めて限られた者にしか認められてこなかったのは、五つの理由に当てはまらないためではなく、上記アンダーライン部分、すなわち、「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」の解釈及び信憑性の判断が、UNHCRが示す指針や他の先進諸国の判例や実務に比べて厳しいためです。
したがって、補完的保護の導入をしても、その点が変わらない限り、保護されるべき者が保護される結果とはなりません。規則等の制定及び実際の施行においても、保護されるべき者、つまり、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する者を保護するためにどうするべきかという観点でその内容が検討される必要があります。
2 また、改定法では、補完的保護が導入されるとともに、在留資格未取得外国人に対する、難民不認定の場合の在留特別許可に関する規定(現行法第61条の2の2第2項)が削除され、また、現行法61条の2の6第4項が削除されて難民不認定の場合も一般の在留特別許可(現行法/新法50条)によることになりました。今回意見募集の対象となっているのは、このうち補完的保護に関する部分です。
難民不認定の場合の人道配慮は、大きく、①婚姻、子の出生等本邦における事情による場合、②申請者の本国の情勢等、本国における事情による場合にわけられますが(①と②双方に理由がまたがる場合もあります)、このうち、とりわけ、②は、通常の在留特別許可を担当する職員がその調査や検討を適切に行うことは、その専門性から困難であり、また、難民該当性判断との連続性からも適切でないと思われます。また、現行法では、難民不認定処分時に退去強制令書発付前の在留資格未取得外国人のみでなく、難民不認定処分時に退去強制令書発付を受けていた者は法律上、難民申請者であることに基づく特定活動を有していた者については事実上、人道配慮による在留許可の判断がなされていました。もし、専門性を欠く職員が人道配慮にかかる判断の調査検討を行うようになったり、これまで人道配慮による在留許可の判断がなされていた者について判断を受けられなくなるとすると、適切な保護の観点から大きな後退となると考えます。また、難民不認定処分時に難民申請者であることによる特定活動を除く中長期在留者には人道配慮の判断がこれまでもなされていなかった可能性がありますが、特に有する在留資格が別表第1の中長期の在留資格である場合、人道配慮による在留許可の方が安定的であり、また、その者が難民申請をしていることからすれば、所属機関との関係等にかかわらず、日本での保護や日本での在留を求めているものと解されます。このような場合で、人道配慮による該当性があるにもかかわらず、他の在留資格があることを理由に人道配慮による在留許可の保護の対象外とされるのは適切ではありません。
以上より、改定法の施行後においても、難民手続きの中で、難民不認定処分時に退去強制令書発付前の在留資格未取得外国人のみでなく、全ての難民申請者について人道配慮による在留許可の判断を行うようにすることが適切です。
改定法のうち、今回その施行令等が意見募集の対象となっているのは、このうち補完的保護に関する部分ですので、同部分の施行後は、補完的保護と現行法による難民認定手続内で行われる人道配慮による在留許可が併存することになります。この間に、「保護すべき人を保護する」はずの改定法が、誤っても保護の後退につながることがないよう、仕組みを整えてください。
以上