今通常国会の衆議院における改定入管法案の修正協議のなかで、非正規滞在の子どもたちへの在留特別許可が取り上げられたとの報道がありました。
修正協議の決裂により、在留特別許可の件はうやむやにされました。子どもたちの在留資格を、難民の送還を促進する改定入管法案可決の駆け引きに使うようなことは断じて許されません。一方で、在留特別許可は、法務大臣の裁量で決裁可能なものです。改定入管法案の審議を息を呑むような思いで注視している非正規滞在の子どもとその家族を含む、現在送還の対象とされている人びとに、今このタイミングで在留特別許可を認めることを求めます。
日本社会には、300万人強の在留外国人に加えて、7万人強の在留資格をもたない外国人が暮らしています。在留資格をもたない、あるいは失った理由はさまざまですが、必ずしも本人に責任があるわけではありません。
なかでも、日本で生まれたり、幼少期に来日したりした子どもの場合、本人が非正規滞在であることを選択したわけではなく、他のすべての子どもと同様に、この社会を「居場所」として、懸命に生き、学び、遊び、将来の夢を描いています。そのような子どもや若者から、一方的に、居場所を奪い、夢を壊す権利は、誰にもありません。ただちに求められるべきは、在留資格がないという不安定な状況を改善し、安心して暮らせる環境をつくっていくことです。問われるべきは、子どもたちを非正規にしてしまう入管法のほうであり、入管法違反の状態に置かれた子どもたちではありません。
また、子どもたちが、精神的にも経済的にも安心して暮らし、成長するためには、家族の存在が欠かせないことは言うまでもありません。子どもの権利条約の趣旨に照らして、「子どもの最善の利益」という観点から、子どもとその家族に対する、一刻も早い在留特別許可を、強く求めます。
法務省は、第二次及び第三次出入国管理基本計画(2000年3月、2005年3月)において「我が国社会とつながり」のある非正規滞在者に対して、人道的な観点を十分に考慮し、適切に対応していくと述べています。その基本方針に則り、人道的な視点から、家族をもたない人も含め、この社会を「居場所」として暮らしてきたすべての「送還忌避者」に対し、現行入管法第50条の法務大臣の裁決による在留特別許可の適用を求めます。
私たちの家族を、友人を、隣人を、クラスメートを、この社会の多様な人びととのつながりを、私たちの大切なつながりを、一方的に奪わないでください。入管法の「改悪」によって、容易な排除を行わないでください。