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2022.03.18 声明・意見

【声明】外国人技能実習制度の速やかなる廃止を求めます

外国人技能実習制度の速やかなる廃止を求めます
―もうウソやごまかしはやめて、まっとうな労働者受入れ制度をー

 外国人技能実習制度の「適正化」を掲げて、『外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律』(技能実習法)が施行されて5年になろうとしています。しかし、「適正化」どころか、1993年の技能実習制度創設以降の人権侵害、労働基準の破壊は一向に減っていません。かえって巧妙に偽装された労働者受入れが進行しています。例えばそれは、2019年4月に始まった特定技能制度が技能実習制度を前提として拡大していることにも現れています。

 外国人技能実習生をめぐる人権侵害、労働基準の破壊は、この29年間、「賃金未払い、『時給300円』の低賃金、不当解雇、強制帰国、前借金(債務労働)、セクハラ、暴力、労働災害、メンタルヘルス、殺傷事件、妊娠・孤立出産、除染労働」などとして現れ、2007年の米国務省の人身売買年次報告書による指摘以来、国連人権機関などから毎年のように人身売買、奴隷労働との批判を受けてきました。そして、技能実習法施行後も奴隷労働構造にはメスが入れられず、構造的問題は何ら変わらず、人権侵害が横行し、「被害者」のみならず「加害者」をもつくり出してきています。

 

 そもそも「適正化」そのものがまやかしなのです。「適正化」に開発途上国への技能移転を論じる意見は見当たりません。人権侵害の是正や労働基準の遵守についてのみです(それ自身は大切ですが)。しかし、それでは技能実習制度の『目的』には適っていません。むしろ「技能移転」という目的自体が転職の自由を奪うこととなり、人権侵害を引き起こし、あるいは潜在化させてもいます。

また、制度の廃止に対する「賛否」のマジックにも惑わされています。廃止に反対する理由のほとんどは「受入れをどうするのか」であり、「技能移転をどうするのか」という主張は出てきません。また、「技能実習生自身にも『成果』がある」かのような主張も、出稼ぎ労働の「成果」であり、技能実習制度の成果ではないことを誤魔化しているに過ぎません。そして、受入れ制度であることを前提としていること自体、技能実習制度の目的が名実共に終焉していることを表しています。仮に「技能移転」を論じるのであるならば、現行の研修制度をいかに充実させるかが検討されるべきでしょう。

 実態として労働者受入れ制度となっているにもかかわらず、技能実習制度という名称を使っている限り、誤った認識をひろげ、受け入れている企業や農家など使用者のみならず、社会全体をミスリードしてしまいます。構造的矛盾は、事業主に誤解と錯覚を生みだし、人権尊重、労働関連法令遵守への自浄能力を喪失させています。

 

 国境を越えて労働者を受け入れているという腹構え、社会体制の問題なのです。

 

 私たちは、移民、外国人労働者がいなければこの社会が成り立たないという事実を直視し、労働者としての権利、人間としての権利(人権)が尊重される受入れ制度を整備しなければなりません。とりわけこの10年間、政府がこれを怠った結果、加速度的に産業は荒廃し、地域は衰退してきました。技能実習生を受け入れている企業や、農家、船主なども、働き手、担い手を求めています。安い給料で働かせようと思っているわけではないでしょう。外国人労働者を受け入れるには、技能実習制度しかないから利用しているというのが現状です。

 

  政府には、「国境を越えて労働者を受け入れたい、受け入れなければ成り立たない」という社会の実情(本音)に向き合い、事実を直視することが求められます。今、工場で、田畑で、海で、山で、建設現場や福祉現場で外国人労働者が活躍し、社会活動、経済活動を担っている事実を直視しなければなりません。

  昨年の入管法改悪案の廃案を求めた市民社会の声を思い起こすべきです。まさにそれは、全国各地津々浦々で、地域社会の担い手となっている外国人労働者とその家族とのよりよい共生を求める市民社会の声だったのです。

 

 もうウソやごまかし、偽装はやめましょう。速やかな外国人技能実習制度の廃止を強く求めます。労働者を労働者としてもてなす、まっとうな受入れ制度こそが必要なのです。

 日本がすでに移民社会であるという事実を見据え、労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会を実現していきましょう。

 

2022年3月18日

 

特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

 

 

 

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