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2021.12.27 声明・意見

入管法改定案再提出に反対し、入管体制の抜本的改革を求める声明

2021年12月21日に法務省入管庁により資料(「現行入管法上の問題点」)が公表されたことを受け、移住連は以下の通り声明を発表しました。


 2021年は、外国人を管理する日本の入管体制が、国際人権基準のみならず市民社会の人権感覚から大きく乖離していることが広く知られるようになった年でした。

 3月に名古屋入管で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの事件は、日本社会に大きな衝撃を与えました。また、同時期に提出された出入国管理及び難民認定法の改定案も、難民申請者や日本に生活基盤をもつ非正規滞在者を追い出すための非道な法案として広範な批判を浴び、ついには廃案となりました。

 法案の国会審議にあわせて移住連が呼びかけた国会前シットインには、法案に反対する、移民・難民を含む多くの市民、国会議員、メディアが集い、SNS上でも異議を申し立てる数々の声が飛び交いました。こうした市民社会の声や活動が、法案を廃案に追い込んだのであり、戦後日本社会が築いてきた民主主義、まっとうな人権感覚がここに表れたといえるでしょう。

 しかし、過去70年の間、管理・監視と排除の姿勢を変えてこなかったのが入管体制です。日本が締結した国際人権条約すら無視し、在留資格を失った外国人を一人の人間として扱わない姿勢や、入管収容所内のビデオや情報の公開すら拒む閉鎖体質は、あたかも時代錯誤の遺物を見ているかのようです。しかし、この遺物こそが、今日に至るまで計り知れないほど外国人を傷つけ、彼らの権利や尊厳を踏みにじってきました。ウィシュマさんの死亡事件は、度重なる遺族の訴えにもかかわらず死因は特定されず、ビデオも一部をのぞいて長らく公開されてきませんでした。

 ウィシュマさんの死亡事件をうけ、自らの改善を掲げる入管庁は、一方で、もはや事件が終わったことであるかのように、入管法改定案の来年国会での再提出さえ予定しているといいます。またその布石として、同庁が先日公開した資料(「現行入管法上の問題点」)は、「送還忌避者」の犯罪者性をことさらに強調するものですが、このような、外国人を治安や犯罪と結びつけ、社会の「脅威」と位置づけるキャンペーンは、入管庁が自らの体制を強化する際にとってきた常套手段です。その意味で、公開資料は、入管庁が、自らの手によっては自己変革できないことを如実に示しています。

 しかし、これまで不可視のまま放置されてきた入管体制の時代錯誤的な制度と運用に、今や多くの市民が気づいています。今年の入管法改定案の廃案が、市民社会の総意を反映したものである以上、同様の法案を国会に再提出することは許されません。そして日本が、人権と民主主義に基づく国家であるとするならば、そこから大きく乖離している入管体制の変革が必至です。出入国在留管理行政の権限と裁量に歯止めをかける法制度改革が、まずなされなければなりません。

 

 移住連は、2022年も引き続き、入管体制を注視し、移民・難民の権利と尊厳が尊重される社会を目指して活動を続けていきます。

 

2021年12月27日
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

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