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2021.05.19 声明・意見

【ステートメント】これが市民社会の総意であるー「入管法改正案」、事実上の廃案を受けてー

 

 これが市民社会の総意である——衆議院で審議されてきた「入管法改正案」の今国会での成立が見送られ、事実上廃案となったことを受けた私たちの実感です。

 2021年4月16日、衆議院本会議にて「入管法改正案」の趣旨説明がされるとの情報を受け、同日より私たち移住連は、市民社会に広く呼びかけ、国会前で入管法改悪に反対するシットインを開始しました。

 本「入管法改正案」には、難民認定申請中の申請者の送還を可能にしたり、「送還」を拒む非正規滞在者に刑事罰を設けるなど人権上の問題が多く含まれ、国内外から懸念が示されてきました。また3月には、名古屋入管でウィシュマ・サンダマリさんが死亡する事件が起き、入管収容施設における被収容者の人権侵害とそれを隠蔽しようとする出入国在留管理庁の姿勢に批判の声が高まりました。こうしたなか始まった国会審議のなかで、入管行政の問題点がさらに次々と明るみに出され、法案に反対する声が日増しに強まり、廃案に至ったのです。

 この廃案は、「自分たちが生きる社会で痛めつけられ、尊厳を傷つけられ、さらには生命さえ奪われる人がいることは許せない」という、まっとうな人権感覚をもつ市民一人ひとりが抗議の声をあげた成果です。その声に、入管行政の闇を明るみに出そうとするメディア報道や国会審議における野党の粘り強い姿勢が呼応しました。

この廃案にいたるプロセスは、「一人ひとりが声をあげれば、社会を変えることができる」という希望を感じさせるものでもありました。趣旨に賛同する人は誰でも参加できるという開かれたシットインの空間には、多様な人びとが集まりました。SNS上に溢れる抗議のメッセージは、声をあげられない移民・難民に思いをはせ、声なき声、失われた声を聴こうとした一人ひとりの市民のつぶやきの連なりでした。民主主義が今この場で創り出されていることの可視的な表現だったと言えます。こうした市民社会の身体と声の集合が、廃案という成果をもたらしたのです。

 

 ただこれは、入管体制の終わりを意味するものでは決してありません。名古屋入管におけるウィシュマさん死亡事件の真相は今も明らかにされていません。過去25年間で明らかになっているだけでも21人の命が奪われた入管収容所には今日も多くの外国人が収容されています。そして今この時間にも、自分の帰属する社会から「追放」されることを怯える非正規滞在者が「ここ」に暮らしています。戦後一貫して、移民・難民の人権を踏みにじり、外国人差別を作り出してきた入管体制は今も続いているのです。

 

 しかし、今回の実質的な廃案は、「入管法改正案」のみならず、現行の入管体制が、国際人権基準にも反し、この社会に暮らす私たちの人権感覚と決定的に乖離していることが示された結果でもあります。地域や職場、学校で、日々移民社会の現実を生きる人々の実感、市民社会の感覚と、政府や国会の認識のギャップをも明らかにしました。

 

 私たち移住連は、「入管法改正案」が実質的に廃案となった今、改めて呼びかけます。

 移民・難民は「ここ」にいます。時代錯誤の入管体制を根底から変革し、移民・難民の人権と尊厳が保障される政策、公正な移民社会の確立にむけ、これからも声をあげていきましょう。そして誰もが人権と尊厳を保障され、自分らしく生きられる社会をともにつくっていきましょう。

 

2021年5月19日
NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

 



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