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2020.02.04 声明・意見

内閣府「基本的法制度に関する世論調査」に対する抗議声明

本日(2020年2月4日)、移住連と全国難民弁護団連絡会議は、2020年1月17日に発表された内閣府「基本的制度に関する世論調査」の「難民認定制度の在り方」と「永住者の在り方」の調査に関して、以下のように意見をまとめ、内閣府と法務省へ送付しました。


●内閣府「基本的制度に関する世論調査」
 調査結果の概要ー3.難民認定制度の在り方
 https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-houseido/2-3.html

 調査結果の概要ー4.永住者の在り方
 https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-houseido/2-4.html

 調査報告書概略版
 https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-houseido/gairyaku.pdf




 2020年2月4日

内閣総理大臣  安倍 晋三様

内閣官房長官  菅 義偉様

法務大臣    森 まさこ様

 

NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
〒110-0005 東京都台東区上野1-12-6 3階
TEL:03-3837-2316  FAX:03-3837-2317
Email: smj@migrants.jp

 

全国難民弁護団連絡会議(全難連)
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-18-6 四谷プラザビル4階
いずみ橋法律事務所内
TEL: 03-5312-4827 FAX: 03-5312-4543
Email: jlnr@izumibashi-law.net

 

 

内閣府「基本的法制度に関する世論調査」に対する抗議声明
-移民・難民の権利の確立を!-

 

 2020年1月17日に「基本的法制度に関する世論調査」(2019年11月実施)が公表された。本調査が、移民・難民の権利を軽視し、移民・難民らを恣意的に「排除」しようとする意図のもとに実施されていることに対し、移民・難民の権利と尊厳の保障を求める立場から、以下に問題点を指摘するとともに、強く抗議する。

 

1. 難民について

(1) 難民の受入れについて

日本は、難民条約に加入し、条約上の難民を国内法上の難民としている。既に日本国内にいる庇護希望者への難民認定は羈束的行為であり、難民条約上の難民に該当する者はすべからく難民として受け入れられなければならない。ここでは「積極的に受け入れるべきか」どうかということは問題にはならない。難民を「積極的に受け入れるべきか」が問題となるのは、せいぜい第三国定住などで政策として受け入れる場合に限られる。この設問(問6)の立て方自体が、難民とは誰か、誰を受け入れるべきかについて、あたかも裁量で受け入れられると認識しているような誤解を与えるが、日本の難民認定が政策的に行われていることをあらわにし、日本が難民条約を順守する意思がないという日本政府の本心をあらわしているものといえる。さらにいえば、難民という少数者の人権保障を世論によって左右することは本質的に誤っており、この観点からも不適切な質問といえる。

 仮に難民の受入れについて質問することを前提としても、ほとんどの質問対象者が日本の難民保護の現状を知らず、評価基準を持っていないと考えられる。問5と問6の質問に際して過去37年間の難民認定750人と人道上の配慮による受け入れ数2,628人を資料2として示し、「これまで以上に・・・」という質問の聞き方をしているが、回答者が「これまで」の申請者数を知らない、あるいは日本の「これまで」が以下に世界の基準から離れているかを知らないのなら、「多い」か「少ない」かの調査結果の数値には価値がない。日本が加入している難民条約やその他の人権条約の趣旨からすれば、政府は、「難民保護」への理解を国民に訴えるべきであり、せめて、難民認定制度に関する認知度等を調査するべきであった。

 

(2) 「濫用者」・「誤用者」について

 法務省は、2019年10月末から出入国管理政策懇談会に収容・送還に関する専門部会を設置し、難民認定申請中の送還停止規定の撤廃や再申請の制限等を含めた法改正を目指しているところ、資料3で「濫用」・「誤用」に対する現行の対応について示し、問7においてそれに関連する質問をしている。

 しかしながら、「濫用者・誤用者の抑制」における問題点は、実際の日本における難民認定数や認定率として客観的数字として見られるように、抑制にのみ関心が注がれて、保護されるべき難民が保護されない状態が生じていることである。また、「濫用」・「誤用」の振分け運用自体が適切であるか検証されず対象者の拡大がされていたり、新しい事情があるかないかに関わらず再申請をしている者に合理的な説明がないままに一律の在留制限が課されているなどの問題が指摘されるところである。ほぼ難民保護を受けられない日本の現状からすると、在留資格があるうちは危険をおかして難民認定申請をしないのはごく理解できることであり、「本来の在留活動(技能実習生や留学生としての活動など)を行わなくなり、在留する根拠がなくなった後に申請する人」をほぼ一律に「濫用者」に含めることも問題がある。

 近時、日本の国外支援への拠出金の減少とともに、国外からも国内の難民保護水準の低さが批判されるようになってきている。政府は、就労目的の者による難民認定制度の濫用・誤用に焦点を当てて難民保護の責務を印象操作によって小手先でかわそうとするのではなく、人権を守る文明国として難民の権利保護に真摯に向き合っていくべきである。

 

2. 永住者について

(1) 永住者の増加について

 2019年6月末現在、在留資格「永住者」は、783,513人で、在留外国人の27.7%を占めている。1992年末(45,229人、外国人登録者の3.5%)と比較すると、およそ17倍に増えているが、これは、ニューカマー外国人の滞在長期化・定住化を示す証左である。外国人にとっても、在留期間に制限のない在留資格をえることによって、より安定的に、安心して日本社会で生活することが可能となることを考えると、永住者の増加は「共生社会」の基盤ともいえよう。
 したがって、世論調査として問うべきは、永住者の増加をふまえ、「共生社会」実現に向けて、どのような環境整備が必要かということであり、「永住者数を多いと思いますか」という設問は、「永住者」を恣意的にコントロールしようとする不適切な質問である。

 

(2) 許可要件について

 問9で示された永住許可要件の選択肢に、現行制度の許可要件には入っていない日本語能力がある。2018年12月25日に閣議決定された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(19年12月20日改訂、以下「総合的対応策」)においても、日本語教育の充実に関する取組が示されており、さらに、2019年6月に日本語教育推進法が制定されるなど、日本語教育の重要性に対する認識が高まっていることは、好ましいことである。しかしながら、重要なのは、「社会的統合」のために、受入れ社会の責任として、移民・難民に対して日本語学習機会を保障することであり、一定の日本語能力がなければ永住を許可しないという「排除」の論理ではない。もしも永住許可に日本語能力を問うのであれば、それに先立って、公的学習機会の保障が行われるべきである。

 

(3) 許可取消しについて

 問10の永住許可の取消しに関する質問に際して、「~将来にわたって生活状況に問題がないと想定される外国人に対し、日本に永住できる地位を付与するものです。現在の永住許可制度では、一度永住を許可されると、許可後に永住許可時の要件を満たさなくなった場合に、永住許可が取り消されることはありません」という資料5が示され、あたかも、ひとたび「永住者」となった外国人は、その法的地位を維持し続けられるかのような説明がなされている。
 しかしながら、現行制度において、在留資格取消し(入管法第22条の2)と退去強制(入管法第24条)の規定のもと、永住者であっても在留資格が取り消されたり、退去強制の対象になりうる。実際、在留資格取消し制度が創設された2004年から18年まで、102名の「永住者」の在留資格が取り消されている。
 そもそも永住許可に際しては、原則、①素行善良要件 、②独立生計要件、③国益要件(a.引き続き10年以上の在留、うち引き続き5年以上就労または居住資格であること、b.納税義務等公的義務の履行、法令遵守など)が求められており、これら厳しい要件を満たすことで、ようやく外国人は「永住者」への在留資格変更が認められるのである。
 このような「永住者」に対して、ことさら新たな取消し事由を加えようとするかのような質問は、「永住者」の安定的な生活を脅かすものであり、外国人が安心して日本で暮らす基盤を奪おうとする不適切な質問である。
 加えて、取消し要件を問う問10更問も不適切で、恣意的なものである。列挙された選択肢はすべて、国民にも、起こりうる事例であるにもかかわらず、外国人である「永住者」に対してのみ、これらの状況を容認しないというのであれば、外国人を、国民と同じ「人間」とみなしていない国の姿勢を端的に示している。
 以下、各選択肢について、問題点を指摘したい。

  • 選択肢イ(税金や社会保険料を納めなくなった場合)、選択肢ウ(生活保護を受けるようになった場合)、選択肢オ(収入が一定水準を超えていたことによって、通常より早く永住を許可された外国人が、その後水準未満に収入を減らした場合)

    人間は、さまざまな事情で仕事を失ったり、病気や高齢で働けなくなったりする存在であるという当たり前のことを前提としていない。収入が減り税金等が支払えなくなったり、生活保護を受給せざるをえなくなることは、国民を含めた誰もが経験しうるリスクであり、それを支えあうことこそが真の「共生社会」であるはずだ。

  • 選択肢エ(犯罪を犯して禁錮以上の刑に処せられた(執行猶予の言い渡しを受けた場合を含む。)場合)

    現行制度の退去強制事由の1つに、永住者を含む別表2の外国人が、無期または1年を超える懲役もしくは禁錮の刑に処せられた場合(執行猶予は除く)がある。しかし、そもそもこの現行制度は、刑期満了後に、さらに退去強制の対象とすることで、二重に処罰を科すものであり、人権上も人道上も廃止すべきものである。

    選択肢エは、さらに執行猶予を受けた場合でも、「排除」の対象とするものであるが、執行猶予は、社会での更生を期待する制度であり、この場合の「社会」は、彼/彼女らがこれまで生活してきた「日本社会」である。

  • 選択肢カ(日本人と結婚していることによって、通常より早く永住を許可された外国人が、その後すぐに離婚した場合)

    婚姻関係の破綻は、極めて私的な領域の事情であり、それを永住資格の取消し事由に加えることは、私的領域への公的権力の介入である。もしかりに偽装結婚であるならば、現行の在留資格取消しで対応可能である。

    DV被害で苦しむ結婚移住女性にとって、「永住者」の資格を得ることは、配偶者からの暴力や抑圧から解放されるための限られた手段であることを鑑みると、「永住後の離婚」を理由に取り消すことは、再び、彼女らを抑圧の状況に追いやることになる。これは、配偶者としての在留資格(「日本人の配偶者等」と「永住者の配偶者等」)を取り消す入管法第22条の4第1項第7号により、「在留資格が喪失することや退去させられることを恐れて、外国人女性が虐待的な関係に留まらざるをえない」として、人種差別撤廃委員会が日本政府に対して、この条項の改正を繰り返し強く求めていることに、明らかに抵触しているといわざるをえない。

 

3. 真の「共生社会」実現に向けて

前述の総合的対応策の基本的考え方には、「日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現」が謳われている。それにもかかわらず、今回の世論調査は、「排除」の論理のもと、移民・難民に対する規制や厳格化を企図し、「国民」にいたずらに不安を与えることで、政府の方針への同調を誘導するかのような質問構成である。
 政府は現在の方針を改め、このような世論調査により、不安や分断を煽るのではなく、この社会に暮らす誰もが安心して生きることができる、真の「共生社会」実現に向けた取組みを進めることを強く求めたい。
 加えて、かりに排他的・排外的な市民意識が存在するのであれば、そのような意識を増幅させるのではなく、共生や多様性の尊重を理解し志向するための人権教育を実施すべきであることを、合わせて強く要望する。

 

以上

 

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