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2019.12.18 声明・意見

【声明】長期収容・「送還忌避者」問題解決のための共同提言

 12月18日は、移住者の権利に関する包括的な国際条約である「すべての移住労働者及びその家族の権利保護に関する国際条約」(以下、移住労働者権利条約)の採択を記念し、国連が定めた「国際移住者デー」です。
 移住労働者権利条約は、1990年12月18日に国連総会で採択され、2003年7月1日に発効しました。この条約は正規・非正規を問わず、移住労働者とその家族の権利を定め、その権利を尊重し保障する義務を定めています。
 私たちは、2019年の「国際移住者デー」にあたり、現在ますます深刻化する入管収容施設での非正規滞在外国人の長期収容・送還問題に関して、以下の共同提言を発表します。






長期収容・「送還忌避者」問題解決のための共同提言

 

 送還忌避者の増加や収容の長期化を防止する方策やその間の収容の在り方を検討するため、法務大臣の私的懇談会である「出入国管理政策懇談会」の下に「収容・送還に関する専門部会」が設置されました。
 しかし、私たちは、そこでの議論が、送還の促進など、排除を強化する方向でのみ進められそうなことに強い危惧を抱いています。私たちは、あるべき解決策として、以下の提案をします。


【長期収容解決のために~収容制度の法改正】

・収容の上限を定めること
・収容の目的・要件を送還の準備のために必要不可欠な場合と法律に明記し、かつ司法審査を導入すること。

(理由)

 長期収容の最大の原因は、退去強制令書による収容の上限が定められていないことです。無期限収容は、国連からも度々改善勧告を受けています。入管法による収容は強制送還の準備のために認められるものですから、その準備期間を超えた無期限収容は許されません。収容に上限を設けることで、長期収容は完全に簡単に解消できます。台湾では2013年に無期限収容を憲法違反とする判決が下され、法改正がされました。韓国でも2018年に憲法裁判所で、無期限収容が違憲とする裁判官が5人と、合憲とする裁判官4人を上回る判断が下されました。

 また、法務省は、本来強制送還を実施することが目的の入管収容を、治安維持法下の予防拘禁のように用いています。我が国で犯罪を行った外国人につき、既に服役し罪を償っているにも拘らず再犯可能性が高いとして入管に収容しているのです。また、ハンストをしていた被収容者をいったん仮放免しながら、2週間で再収容しています。恣意的な拘禁を防止するため、収容の目的を送還のためということを明記し、かつ、収容するか解放するかの判断に司法の関与を認めるべきです。



【「送還忌避者」の減少のために①~難民の保護】

・難民申請者を救う制度改正~出入国在留管理庁から難民審査を切り離す

・送還禁止規定(入管法61条の2の6第3項)の改変に絶対反対

 

(理由)

 法務省が公表した「送還忌避者の実態」では、あたかも難民申請を繰り返したり、退去強制令書が発付された後に難民申請をした者が、難民制度を濫用し、それが長期収容・送還忌避者増大の原因であると指摘しています。しかし、その資料で掲げられた5ヶ国(イラン、スリランカ、トルコ、ナイジェリア、ミャンマー)は世界的に見れば難民出身のメジャー国ばかりです。救うべき難民申請者を救わないことが複数回申請の原因と考えられます。また、退去強制令書発付後に難民申請をするのも不思議ではありません。例えるなら、歯が痛んでもすぐに歯医者に行かずに、痛みが堪えられなくなってから行くのと同じです。

 濫用者の減少を考える前に、年間の認定者が数十人、認定率1%未満の「難民鎖国」と称される状況を変え、救われるべき申請者を難民と認定することが、「送還忌避者」の減少に繋がります。そのためには、水際で好ましくない外国人の受入を排除することで治安維持の一翼を担っている出入国在留管理庁から難民認定手続を切り離し、独立した機関で審査を担うなどの抜本的な法改正を行うべきです。

 また、このようなお粗末な認定状況が変わらないまま、難民認定申請手続き中の送還禁止規定(入管法61条の2の6第3項)を改変することは、さらに救われるべき難民の保護を縮小し、彼らの生命・身体などの人権を危機にさらすことになります。強く反対します。



【「送還忌避者」の減少のために②~非正規滞在者の一斉正規化の実施】

・一定条件を充たす非正規滞在者に一律に在留特別許可を認めること

 

(理由)

 国が「送還忌避者」と称する人たちがどのような理由で送還を拒んでいるかははっきりしませんが、長期間収容されていても帰国したくないという人たちには、例えば日本に家族がいる、長期間本国を離れて生活の基盤が日本にあるなど、離れられない事情がある方も相当数いるはずです。

 政府は2018年の臨時国会で外国人労働者の受入が「喫緊の課題」であるとして、極めて短期の審理期間で入管法を改正し、特定技能制度を導入しました。5年間で34万5000人の受け入れを目標として掲げていました。単純に割り算をすれば、1か月当たり5000人を超える受入が必要です。

 しかし、2019年9月末日現在で特定技能の在留資格が認められている人は219名に過ぎません。

 一方で外国人労働力を必要としている産業界が存在し、一方で日本で仕事をしたい、家族と一緒に生活をしたいとして長期間の在留をしてきた人たちがいるのです。

 「送還忌避者」を減少させるための方策として、排除の方向だけを考えるのではなく、一定の条件を充たした非正規滞在者を正規化することにも比重を置いて検討すべきです。また、それ以外の非正規滞在者についても、個別の事情に照らして、人権の視点に立って、適切に在留特別許可を認めるべきです。諸外国では、1970年代から最近にかけて、数万人単位で非正規滞在者の正規化を実施しています。アメリカでは1980年代270万、韓国では1992年に4万人、2003年に18万人の正規化が実施されています。日本でも法務省は2004年から2008年まで「不法滞在者5年半減計画」を実施して不法残留者を削減したと強調しますが、この間、約5万人に在留特別許可が与えられました。一斉正規化も不可能ではないはずです。

 諸外国がこのような政策を実施しているのは、外国人の人権保障という観点だけではなく、必要な労働力を確保したり、税金や社会保険料の徴収が増えたりという政府側にとっても利点が多いことも理由として挙げられています。

 日本も、排除の論理だけにとらわれるのではなく、諸外国が実践している成熟した政策を学ぶべきです。



2019年12月

(賛同団体)特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク

      全国難民弁護団連絡会議

      日本カトリック難民移住移動者委員会

      入管問題調査会

      全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い

      特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ

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