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2019.12.09 声明・意見

【パブコメ】「ハラスメント指針案」に「レイシャルハラスメント」の明示を求める要請書を提出しました。

移住連は、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」パブコメ募集にあたり、以下の通り、要望書を提出しました。意見・情報受付締切は12月20日までです。

【パブコメ募集概要】
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190288&Mode=0





2019年12月9日

厚生労働大臣 加藤勝信 殿

 
特定非営利法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
代表理事 鳥井一平
東京都台東区上野1-12-6 3F
TEL 03-3837-2316/FAX 03-3837-2317
Email: smj@migrants.jp

 

 

「ハラスメント指針案」に「レイシャルハラスメント」を明示することを求める要望書

 

 

 日本で働く外国人労働者は増加傾向にあり、2018年には過去最高の146万人を超えました。この数は、今年度より始まった外国人労働者の受け入れ拡大により、今後一層の増加が見込まれます。また、帰化者、国際結婚の子どもをはじめとする外国ルーツの日本国籍者や、民族的マイノリティの背景をもつ労働者も合わせれば、相当な数に上ります。

 外国人や民族的マイノリティの労働者は、職場において差別やハラスメントを日常的に経験しています。法務省が行った「外国人住民調査」(2016年)によると、「過去5年の間に、日本で外国人であることを理由に侮辱されるなど差別的なことを言われた経験」がある者の割合は29.8%で、そのうち38%が「職場の上司や同僚・部下、取引先」からの差別的言動を経験しているとの報告がされています。また、「過去5年の間に仕事を探したり働いたりしたことのある」外国人住民のうち、25%が「外国人であることを理由に就職を断られた」、19.6%が「同じ仕事をしているのに、賃金が日本人より低かった」、17.1%が「外国人であることを理由に、昇進できないという不利益を受けた」という差別を経験しています。さらに、当団体で集約したところでは、当指針案に示される、「職場におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる」6類型の事例に該当するようなケースが数多く存在しています(資料参照)。

 その多くは、人種、民族、国籍等の違いを理由とした「レイシャルハラスメント」です。

 私たちは、日本で働く外国人労働者の権利と尊厳の保障に取り組む立場から、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」(以下、「ハラスメント指針案」と略)にレイシャルハラスメントの視点を含めることを求め、下記のとおり要望します。

 

職場におけるパワーハラスメントを定義づける3つの要件に対する要望

 厚生労働省より示されている指針案では、「⑴ 職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる ①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。」と定義づけられていますが、そもそも外国人や民族的マイノリティの労働者の場合、通常の職位上の上下関係に加え、日本人の同僚、そして部下との関係においても人種、民族、国籍の違い、また、日本語を母語としない場合も多いなどの事情により劣位に置かれることが少なくありません。こうした状況から、指針案に示されている3つの要件すべてを満たしていなければハラスメントと認めないと定義づけることは、労働に従事するには耐えがたい程度に相当するハラスメントに遭遇する労働者に関して、救済の可能性を狭めることになります。以上の理由から、職場において劣位に置かれることの多い外国人や民族的マイノリティの労働者の立場を考慮して「①優越的な関係を背景とした言動」が含まれていれば、ハラスメントと認めるよう要望します。

また、「優越的な関係を背景とした」言動」として、「同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの」と明示されていますが、外国人および民族的マイノリティの労働者は、人種、民族、国籍の違い、また、日本語を母語としないことも多いなどの理由から、たとえ「集団による行為」でなかったとしても、「同僚又は部下からの」行為で「抵抗又は拒絶することが困難であるもの」はあり得ると言えます。こうした事情から「集団による」の記述の削除を求めます。

また、ハラスメントを定義づける3つの要件のうちの一つである「③労働者の就業環境が害されるもの」についての判断にあたっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当」と示されていますが、「社会一般の労働者」とはどのような労働者を指すのか極めて不明瞭であり、とりわけこうした記述は、外国人、民族的マイノリティの労働者が対象に含まれていないような印象を与えること、また、「平均的な労働者の感じ方」がどのようなものを意味するのかわからないものの、少なくともいわゆる日本の文化・慣習を有さない外国人や民族的マイノリティの労働者の感じ方が考慮されているとは想像しにくいことから、「平均的な労働者の感じ方」を基準とする旨の記述は削除し、労働者の感じ方については「個人差」に配慮すべきであると明示することを求めます。

 

「職場におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる」例について

 指針案においては、「職場におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる」例として、イからロまでの6事例が示されていますが、日常的に職場におけるパワーハラスメントを受けやすい外国人、民族的マイノリティの労働者の状況を考慮した事例としては極めて不十分です。概要には、「個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、また、 次の例は限定列挙ではないことに十分留意し、4(2)ロにあるとおり広く相談に対応するなど、適切な対応を行うようにすることが必要である。」と示されてはいるものの、指針に外国人や民族的マイノリティの労働者を想定した事例が含まれなければ、外国人や民族的マイノリティの労働者らが、自らの遭遇するハラスメントをハラスメントとして認識し、救済を申し立てることは困難です。以上のことから、明示されている事例に関し、以下のことを求めます。

 

(1)「ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)(イ)該当すると考えられる例 ① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。」に関し、「人格」と並列して「属性」を含めること。「相手の性的指向・性自認」と並列して「人種、民族、国籍等」を含めること。

(2)上記ロに関し、「日本語能力等を理由とした名誉棄損、侮辱、ひどい暴言を行うこと」を追加すること。

(3)上記ロに関し、「在留資格を理由として脅迫を行うこと」を追加すること。

(4)「ホ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)」に関し、「人種、民族、国籍、あるいは母語の違い等を理由として業務から外したり、業務量を減らして待遇に影響を与えたりすること」を追加すること。

(5)「ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) (イ)該当すると考えられる例 ① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。」に関し、事例として「パスポートや在留カードの取り上げ」を追加すること。

(6)「ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) (イ)該当すると考えられる例② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。」に関し、「性的指向・政治人や病歴、不妊治療等」と並列して「人種、民族、国籍等」を含めること。

 

指針案に明示されている以外の事例について

 事例イ~へに示されるような事例に示されているような状況の他にも、外国人及び民族的マイノリティの労働者は日常的に深刻なハラスメントの脅威にさらされています。

 当団体で集約した事例の中には、資料「外国人労働者が遭遇するパワーハラスメントハラスメント(レイシャルハラスメント)事例」の「ト その他」で示している通り、国籍等を理由とした差別的待遇、また、それを雇用者が正当化するような発言、あるいは、職場環境において、「日本人」「外国人」の区別により使用するトイレを分けていた事例などがありました。「外国人」であることを理由に「日本人」のトイレを使用してはいけない、使用した場合に、公然と叱責されるというような、まるでアメリカの公民権運動の時代のような状況が現在の日本社会には存在しています。職場における「国籍による区別」による「差別」を一刻も早くやめさせるべきです。

また、外国人、民族的マイノリティの労働者が遭遇するハラスメントのなかには、ハラスメントを引き起こす原因が「人種、民族、国籍」等の属性に起因していることを証明することがむずかしいケースも往々にしてあります。たとえ暴力行為があったとしても、暴力と属性の間の因果関係を証明することは簡単ではありません。そのために、外国人、民族的マイノリティに対する日本人の優位性という視点を含んだ事例を十分に明示することは有効かつ重要なのです。

そうした問題の理解のために、「レイシャルハラスメント」を事例の中に含めることに加え、事業主が講ずべき防止措置の履行例にも「レイシャルハラスメント」を取り込むことを求めます。

 

外国人の権利保障を補完するためのスキームとしてのパワーハラスメント指針を

「人種、民族、国籍」が違ったとしても、労働者であればその権利が保障されるはずですが (労基法3条、22条4項、職安法3条参照)、実際のところ、外国人、民族的マイノリティの労働者は、日常的に、差別、ハラスメントに遭遇し、労使対等原則もなかなか担保されにくい状況にあります。

現在日本には、外国人住民権利基本法のような、外国人も基本的人権を保障されていることを明示的にあらためて確認する法律は存在していません。また、外国人や民族的マイノリティに対する差別やハラスメントを規制・禁止する法制度・施策も確立されていないことから、被害は放置されています。

「外国人労働者」「民族的マイノリティ」の抱える課題とは、私たち社会の側の課題です。レイシャルハラスメントのない社会の実現に向けて、今回の指針により一人でも多くの外国人あるいは民族的マイノリティの労働者の救済がはかられるよう、パワーハラスメントの定義、また、その事例の内容と防止措置の履行例について再考することを強く求めます。

 

以上

【参考資料】
・レイシャルハラスメント事例(移住連作成)
https://migrants.jp/user/media/ijuuren/page/news/pdf/example.pdf

・縫製業中国人技能実習生パワハラケース(『Mネット205号』2019年8月発行)
https://migrants.jp/user/media/ijuuren/page/news/pdf/4.pdf

・うつ病の外国人実習生、「パワハラが原因」と労災認定(朝日新聞 2017年9月12日)
https://www.asahi.com/articles/ASK9D5G3CK9DULFA03V.html


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