東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた非正規滞在者の正規化と収容制度の改善を求めるアピール
2019 年4 月、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)の改定法が施行され、在留資格「特定技能」の創設による外国人労働者の受入れがスタートしました。政府は、外国人労働者の受入れ拡大にともない、共生社会に向けた取り組みを掲げていますが、真の共生社会を実現するためには、新たに来日する外国人労働者が、単なる労働力として扱われることなく、人権と尊厳が保障される環境を整備することが必要です。同様に、すでに日本で暮らし、働き、学んでいる外国人が、社会の一員として受け入れられ、その人権と尊厳が尊重される社会でなければなりません。そして、人間としての権利(=人権)や尊厳という点では、在留資格のない者も同様です。
現在、日本には、8 万人近い非正規滞在者がいます。そのなかには、日本で生まれ育った子どもや日本に家族がいる者、もはや母国で生活基盤を築くことが難しい長期滞在者、難民性が相当程度に高い、または諸事情により本国への帰還が困難であるにもかかわらず認定(あるいは人道配慮)が受けられなかった者など、日本以外で生きる選択肢のない者などもいます。また、全国で常時1,000人以上が収容施設での生活を強いられています。被収容者は、摘発や送還の恐怖におびえ、自由もなく、きわめて困難な状態で日々の生活を送っています。ここ数年、仮放免許可もおりず、長期収容者が急増するなかで、収容施設内での被収容者の自殺未遂や死亡事件が後を絶ちません。そもそも収容施設内の処遇は、国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)などの国際人権基準に到底及びません。2010 年に設立された収容施設の運営をモニタリングする入国者収容所等視察委員会は、政府から独立しておらず、権限も予算も不十分で、十分な機能を果たしているとはいえません。
新たな外国人労働者の受入れと、東京オリンピック・パラリンピック開催を機に、オリンピック憲章の基本理念である人権尊重と反差別、そして、東京五輪の基本コンセプトである「多様性と調和」の実現をめざして、日本が真に人権と尊厳を保障する国であることを世界に示すためにも、非正規滞在者の正規化と収容制度の改善を強く求めます。
1. 人道的な観点から、日本に生活基盤があり、帰還が困難な非正規滞在者に在留特別許可を認めてください。
2. 以下のとおり、収容に関する法改定をしてください。
1) 現行法による無期限収容を改め、収容期間の上限を設けること
2) 収容及びその解放について、迅速な司法判断を受けられるようにすること
3) 収容の要件として、収容の必要性を明記すること
4) 仮放免の審理を公開法廷で行うこと
5) 仮放免は、逃亡の危険がない限り原則として許可するものとすること
3. 収容施設内の処遇を国際人権基準に則ったものに改善して下さい。また、それを実現するため入国者収容所等視察委員会を政府から独立させ、権限及び予算を拡充して下さい。
2019 年7 月26 日
NPO 法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
全件収容主義と闘う弁護士の会「ハマースミスの誓い」