日本政府は6月24日に新たな成長戦略「日本再興戦略」(改訂2014)を閣議決定しました。私たちはこの政府方針に盛り込まれた、国家戦略特区での「女性の活躍推進」を名目とする「外国人家事支援人材」受け入れが家事労働における男女の平等な参加を妨げるものであることに抗議するとともに、喫緊の課題として日本政府がILO「家事労働者のためのディーセント・ワークに関する条約」(第189号条約、2011年6月採択)を批准することを要求します。
日本はOECDの中で男性の家事労働時間が最も短く、有償労働時間が最も長い国のひとつです。過労死が頻発するほどの男性の長時間労働が標準とされてきたために、家事負担は女性だけにのしかかり、平等な就労を妨げてきました。ILOその他の国連人権機関は、男女が平等に有償労働と無償労働を分担できるよう、長時間労働の是正や、非正規労働者の均等待遇を日本政府に何度も勧告してきました。
ところが政府の成長戦略は、長時間労働を規制するどころか、年収制限を設けつつも、「時間でなく成果で賃金を払う」労働制度への道筋をつけました。また、女性のさらなる活躍推進を謳う一方で、男性の家事や育児・介護への積極的参加を支援する取り組みや数値目標は具体的に示されていません。
他方、女性の活躍推進策としてとりあげられている家事支援サービスは、本来もっとも支援を必要としている低所得層女性が購入できるものではありません。男女ともにいっそうの労働強化が求められるなか、さらなる負荷の拡大は避けられない状況です。私たちは、このようなジェンダー不公正と経済格差を増幅させる「女性の活躍推進」の方針に強く抗議します。
家事・育児・介護関連サービスについて、「日本再興戦略」は地域の女性たちや外国人労働者の活用を表明しています。ところが、個人家庭での就労は、勤務時間や労働内容があいまいになりやすく、ハラスメント等の問題にも対処しにくいという特徴があります。外国人の場合にはそのリスクがいっそう高まることが予想されます。また、日本の労働基準法は「家事使用人」を適用外とし、政府が自ら賛成票を投じたILO家事労働者条約の趣旨に反しています。
こうした事態に鑑み、私たちは、拙速な外国人家事労働者受け入れを避け、すでに日本で暮らし働いている移住女性も含め、個人家庭で就労するすべての人びとの権利を守るため、政府に対して、速やかにILO家事労働者条約の批准に向けた国内法整備に着手することを強く求めます。