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声明・意見voice

2016.11.25 声明・意見

「入管法一部改定法の成立に対する声明」を発表しました

さる11月18日、「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」(以下、入管法一部改定法案)が参議院本会議で可決・成立しました。この法律に対し、移住連では本日付で以下の声明を発表いたしましたので、お知らせいたします。

移住連では、今後とも外国人の管理強化一辺倒の入管法に対抗し、人権を尊重した外国人施策を求める活動を継続していきます。


「入管法一部改定法の成立に対する声明」

 2016年11月18日、「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」が第192回国会の参議院本会議で可決され、成立した。同法は、 介護に従事する外国人の受入れと、偽装滞在者対策の強化を目的としている。

 私たちは当初から、後者の偽装滞在者対策、とくに在留資格取消し事由の 拡大は外国人住民の権利を不当に侵害する危険性が大きいことを指摘し、一貫して反対してきた。しかし衆参とも与野党多数の賛成のもとに成立したことに 強い抗議と今後への大きな憂慮を示すものである。

 今回追加された在留資格取消し事由(法第22条の4第1項第5号)は、入管法別表第一の在留資格を持つ者が、その資格に応じた「活動を行つてお らず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること」となっている。 「行おうとして」という規定では恣意的な解釈が入りやすく、主観的 な要件で在留資格の取消しが可能となれば、外国人住民の在留を不当に危うくする怖れがある。政府はその立法事実として技能実習生の失踪事案を挙げ ているが、 技能実習生の失踪に関する実態から見てその立法事実の根拠は極めて弱い。しかもこの事由は、留学生など他の別表第一の在留資格を持つ外 国人住民も対象となるが、その立法事実や判断基準、具体的事例については国会審議過程において ほぼ何ら明らかにされなかった。さらにこの第5号で 「逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合」、直ちに退去強制手続きに付される(第22条の4第7項)。これでは、外国人住民が日々不安を抱 きながら生活せざるを得ず、 職場や学校等の所属機関への従属性を強めることになりかねない。

 私たちは今回追加された第5号の撤回を求める立場を変えないが、法が成立した以上、取り急ぎ外国人住民の生活を不当に脅かすことがないよう、同号に関する判断基準、及び適用除外となる「正当な理由」の具体的な事例の提示を法務省が速やかに行なうよう求める。

 また、「偽りその他不正の手段により上陸許可を受けた者」等に対する罰則規定の強化(第70条第1項第2号の2)も、「偽りその他不正の手段により」という要件が曖昧で濫用の危険性があり、また現行の在留資格取消し手続や 退去強制手続等の行政処分で対応可能であるため、同罰則を新たに追加した根拠が見いだせない。とくに難民認定申請を萎縮させる効果をもたらすことが危惧される。真実に反する申請への対策は、まずは審査の正確性向上で対応すべきである。

 在留資格「介護」の新設についても十分な審議がなされなかった。介護分野における深刻な人手不足に応対するために、従来の経済協力協定 (EPA)による受入れに加え、今回の在留資格「介護」の新設、さらには技能実習の介護分野への拡大も予定されている。このような継ぎ接ぎ的な外 国人労働力の受入れではなく抜本的な移民政策をとるべきである。

 本法の衆参附帯決議には、上記の問題点に対する懸念が反映されたものも多く、また施行後3年を目途として施行状況を踏まえて必要な検討と措置を講ずることとされている。私たちは、日本で暮らす外国人住民が権利を保障され、安心して生活できる社会の実現のために、引き続き入管法の改正を求め、在留管理強化一辺倒ともいえる在日外国人政策に変更を促すものである。

以上

2016年11月25日

特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク

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