移住連は、本日、東京オリンピック・パラリンピック「持続可能性に配慮した運営計画 第二版(案)」に関する意見募集(2回目)にかんし、以下の意見書を提出しました。
【意見募集概要】
https://tokyo2020.org/jp/games/sustainability/sus-opinion/opinion-sus-plan-2-1/
「持続可能性に配慮した運営計画」第二版(案)(PDF)
https://tokyo2020.org/jp/games/sustainability/sus-opinion/opinion-sus-plan-2-1/data/opinion-sus-plan-2-1.pdf
「持続可能性に配慮した運営計画」第二版(案)概要説明資料(PDF)
https://tokyo2020.org/jp/games/sustainability/sus-opinion/opinion-sus-plan-2-1/data/opinion-sus-plan-2-2.pdf
【提出先】
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 総務局持続可能性部
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2018年5月8日
東京オリンピック・パラリンピックについての持続可能性に配慮した運営計画
人権労働・参加協働にかんする意見書
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
代表理事 鳥井一平
〒110-0005 東京都台東区上野1-12-6 3階
TEL:03-3837-2316 FAX:03-3837-2317
私たちは、この社会で暮らす外国人移住者とその家族の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会を目指す個人、団体による全国のネットワーク組織です。
東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)について、持続可能性に配慮した運営計画策定へのご準備に敬意を表します。また同大会における基本コンセプトのひとつとして「多様性と調和」、すなわち「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うこと」が掲げられていることを支持いたします。
一方で、2017年6月末現在、日本には約250万人の外国籍者が暮らし、外国にルーツをもつ日本国籍者も含めるとより多数となります。にもかかわらず日本社会が多民族・多文化社会であるという認識は未だ十分ではありません。
またここ数年、とりわけ日本国内に住む在日コリアンに対するヘイトスピーチが深刻化しています。2016年にいわゆる「ヘイトスピーチ解消法」が施行されましたが、同法はヘイトスピーチを禁止する旨の規定がない理念法に過ぎないこともあり、その後もヘイトデモは続いており、特にネット上のヘイトスピーチは野放し状態です。さらに、ヘイトクライムともいうべき事件も起こっています。去る2月23日には、東京都千代田区にある在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)中央本部の前に、男2人が車で乗りつけ、建物に向かって拳銃の弾を数発撃ち込む事件が発生しました。これに対しネットでは、犯人の行動を批判する声よりも、逆に賞賛したり、やむを得ないと容認する声が溢れました。
このような雰囲気の中で開催される東京五輪だからこそ、組織委員会が率先して、反レイシズムのメッセージを力強くアピールしていかなければ、大会が、ともすれば「排外的な愛国主義」の助長に利用される危険があると考えます。
私たちは、今回の大会が、日本が多様な人びとから構成される社会であるという認識を広め、国内で渦巻く非寛容・排外主義に対する歯止めとなり、多様な人びとの共存を促進するきっかけになることを切に願っています。その一助けとなるよう、人権労働・参加協働に関する観点から、運営計画に以下の項目を盛り込むよう提言いたします。
- 日本が多民族・多文化社会であるという認識を広め、共生につなげる取り組みを実施、奨励すること
- 人種差別・ヘイトスピーチ・ヘイトクライムを許さないという姿勢を明確にし、そうした差別・暴力にかんする教育・啓発の取り組みを実施、奨励すること
- オリンピックの準備・実施にかんする企業活動における、移住労働者・民族的マイノリティを含む労働者の人権侵害を防止すること。またそのための教育啓発やモニタリングを実施すること
- NGOとの連携による人権・参加協働に関わる取組みを拡大すること
<具体的方策についての提案>
- 組織委員会からのアピール
・「ヘイトスピーチ、人種差別、人権侵害を許さない」旨の宣言文及びキャッチコピーの作成(キャッチコピーは素人が作らず、必ず、プロに作ってもらうこと)
・宣言やキャッチコピーを、各種掲示物や広告媒体へ掲載
・当該メッセージを打ち出すイメージ動画を作りSNSで拡散
・外国人フレンドリーなお店であることのアピールに使ってもらうべく、「私たちは多様性を尊重するサービスを提供します」「私たちは人種差別・人権侵害を許しません」といった趣旨のキャッチコピーの入ったステッカーや、コースター等を作成し、都内飲食店・宿泊施設を営む事業者に対して無料配布(拡散のため、希望したところだけではなく、なるべく全ての事業者に配布する)
【参考】ドイツのレストランで、コースターに”No Racism”と書いてあったのを見た
・「私たちは人種差別・人権侵害を許しません」といった趣旨のキャッチコピーの入ったステッカーを競技場内にも貼り付ける。競技時間の合間に、競技場内の電光掲示板に「私たちは人種差別を許しません」といった趣旨の画像を流す
【参考】野球に関して阪神タイガースが甲子園球場で画像を流したことあり(画像参照)
- 組織委員会によるモニタリングと教育啓発
・組織委員会の職員・ボランティア・取引先その他関係者などに、差別禁止、ヘイトスピーチとは何か、日本でおきているヘイトスピーチの現状等について教育啓発を実施する
・五輪の準備や実施にかかわる企業活動において、多くの移住労働者や民族的マイノリティがすでに就労しており、今後もその数の増加が見込まれる。彼・彼女らにたいする人権侵害や人種差別を防止し、公正な労働環境を整備するよう、採用企業への教育啓発や就労現場のモニタリングを実施する
・オリンピックの準備や実施過程において、「テロ」対策・治安対策が強化されることが考えられる。こうした対策が、行政機関や企業等によるマイノリティや特定の人びとへの差別や人権侵害につながらないようモニタリングを実施する
・五輪会場内や周辺におけるヘイトデモ・街宣、ヘイトクライムが認められた場合、五輪の理念に反するとして中止を求める(これらのデモ・街宣の主催者は、自分たちの行動を必ずYouTubeなどにアップして世界に発信しており、これを放置することが東京大会にもたらすマイナスイメージは大きい)
・インターネット上で、五輪に関連してヘイトスピーチが行われていないかモニタリングを行い、認められた場合には、プロバイダーに即時削除を求める(削除の要否の判断はプロバイダーの内部規定による)
・上記の活動を行っていることを対外的にもアピールする
- 「日本社会の多様性」のアピールと参加協働
・ピョンチャンオリンピック開会式のように、式典等のイベントにおいて、日本に住む民族的マイノリティ(朝鮮・中国・フィリピン・ブラジル・アイヌ・琉球等)の伝統芸能などを披露する場を設ける
・五輪会場周辺には、日本の文化体験コーナーや、文化紹介のブースが設置されたり、イベントが実施されると思われるが、コーナーやブースの一画に、日本に住む民族的マイノリティに関する展示を設ける
・五輪関連行事への在日外国人の参加促進、ボランティアへの勧誘、各国在京大使館との連携の実施など。一方で、通訳・翻訳をはじめ、専門性を必要とする事業・取り組みについては専門性の発揮にたいする対価を支払うことが必要である
・人権労働・参加協働の分野で効果的な取り組みを実施するために、NGOや市民団体との連携をより一層強化する
- 組織委員会内部におけるダイバーシティの確保
・スタッフやボランティアの採用に際して、性別、民族、国籍、障害、年齢、性的指向といった多様性に配慮した採用を行う旨の指針を策定し、かつ実施状況をモニタリングする
- 協賛企業を通じたアピール
・有力選手が登場するテレビやネットの協賛広告の中に、「ヘイトスピーチ、人種差別、人権侵害を許さない」といった趣旨のメッセージを訴える広告を各社で作成してもらうように呼びかける
【参考】新大久保でヘイトデモが頻繁に行われていた時期に、ある大手服飾メーカー(earth music and ecology)が新宿など複数の駅で「ヘイトスピーチって何ですか」とのメッセージが入った女性モデルのポスターを作り掲示していたことがあり、とてもインパクトがあった
- (東京都への要望)朝鮮学校への補助金支給を再開していただきたい。
日本は、2014年、国連人種差別撤廃委員会から、地方自治体による朝鮮学校への補助金の復活及び維持を勧告されており、公権力による差別が解消されていない現状は東京五輪開催前に是正されるべき
以上
<参考画像> 甲子園における「ヘイトスピーチ、許さない」の表示
<PDF>
180508 東京オリンヒ-ック・ハ-ラリンヒ-ック意見書提出版