移住連は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(以下「基本方針」)のなかで示された「新たな外国人材の受入れ」にかんし、以下の意見を表明します。
<参考>
「経済財政運営と改革の基本方針2018」
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0615/shiryo_02.pdf
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2018年6月20日
2018年6月15日、経済財政諮問会議で「経済財政運営と改革の基本方針2018」(以下「基本方針」)が公表された。そこで示された「新たな外国人材の受入れ」に対して、移住者の権利と尊厳の保障を求める立場から、以下の点について意見を述べたい。
1. 全体の方向性について
(1) 「外国人材」ではない
「成長戦略」を掲げる第二次安倍内閣の発足以降、「外国人材」という言葉の使用が政府内や経済界で一般化している。このことは、労働力を「商品」として捉え、その有用性のみを「活用」しようとする、現政権の姿勢を端的に表している。労働者・生活者としての権利を保障し、同じ社会で共に生きる「人間」として迎え入れるという大前提のもと、「外国人材」という用語の使用をやめるべきである。
(2) 「移民政策」確立の必要性
基本方針では、「以上の政策方針は移民政策と異なるもの」との記述がある。そもそも、ここでの「移民政策」とは何かが不明瞭であるが、日本に暮らす移住者とその家族の生活を支える政策と捉えるならば、在留外国人数が250万人を超えている現在、早急に取り組むべき課題である。
さらに、新たに受け入れる外国人労働者についても、一定の要件を満たせば、家族の帯同を含む定住化が可能であると示されている。したがって、家族も含めた生活や教育、労働や政治参加などの基本的権利を十分に保障する包括的な移民政策を確立することは、受入れ拡大にあたって必須の条件である。
2. 個別の論点について
(1) 技能実習制度を廃止すべき
基本方針では、労働力不足という現実を直視し、これまで公式には受入れを認めてこなかった分野で、外国人労働者を受け入れることが表明された点は評価したい。
しかし、受入れの経路の一つとして、途上国への技能等の移転を目的とする技能実習制度が提示されている。2016年に制定された技能実習法において、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条の2)と改めて規定されていることと明らかに矛盾する制度設計であり、技能実習制度を活用することは適切ではない。
この機会に、実質的には労働力不足への対応として用いられ、様々な人権侵害を引き起こしてきた技能実習制度は廃止し、労働者の権利が保障される受入れ制度を検討すべきである。
(2) 権利が制約された労働者の受入れに対する疑問
基本方針では、新たに受け入れられる分野の労働者を「一定の専門的・技術を有する外国人材」と称し、従来の「専門的・技術的な外国人材」と異なる受入れを提示している。日本社会が必要とする労働者であるにもかかわらず、前者の労働者は、受入れにあたって日本語能力要件や技能試験が課されるとともに、在留期間の上限が設定され、家族の帯同が認められていないなど、後者の労働者に比べて、権利が制約されている点は問題である。
(3) 支援や受入れ環境の整備に対する懸念
基本方針では、新たな受入れを可能とするために「的確な在留管理・雇用管理」の実施や強化がことさら明記されている。一方、支援については「受入れ企業、又は法務大臣が認めた登録支援機関」とあり、民間組織が実施主体として示されている。
地域に居住する外国人住民の生活支援については、これまで総務省の指導のもと各自治体において多文化共生施策が推進されてきた。また、内閣府には「共生施策推進室」が設置されている。外国人への支援については、これらをより一層充実させ、国や自治体など公的機関が、予算措置も含め責任をもって行うべきである。
さらに、受入れ環境の整備の司令塔的役割を、「外国人の出入国・在留管理」を担う法務省が担当することは適切ではない。子どもの教育や労働環境の整備、地域づくりなどに総合的に対応する新たな省庁を創設すべきである。
外国人労働者の「受入れ」は、「人間」の「受入れ」である。移住者とその家族をはじめ日本社会に生きるすべての人々が主体的に議論し、移民政策を確立していくことが求められる。
NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)