移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、「出入国在留管理基本計画に関する意見募集(パブリックコメント)」にあたり、2019年4月12日付で以下のパブリックコメントを提出しました。
●意見募集(パブコメ)概要
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300130158&Mode=0
2019年4月12日
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
代表理事 鳥井一平
〒110-0005 東京都台東区上野1-12-6 3階
TEL 03-3837-2316 FAX 03-3837-2317
私たちNPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、この社会で暮らし、働くさまざまな移住者の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会を目指す個人、団体による全国ネットワークです。
標記について、以下の意見を述べます。
すでに2005年に策定された第三次出入国管理基本計画の人口減少社会への対応という項目で「現在では専門的、技術的分野に該当するとは評価されていない分野における外国人労働者の受入れについて着実に検討していく」とあり、その検討の結果が、18年改定入管法による労働力不足への対応としての「特定技能」創設であった。
それにもかかわらず、改めて、今回の出入国在留管理基本計画で「専門的・技術的分野とは評価されない分野の外国人の受入れについては,<中略>,この検討は国民的コンセンサスを踏まえつつ行われなければならない。」(15頁)とある点は不可解であり、いまだ、真に必要な外国人労働者の受入れに向き合っていないとも言えよう。
もはや受け入れるか受け入れないかが議論の争点ではない。
専門的・技術的分野に限らず、すでに必要とする外国人労働者の受入れに舵をきっているのだという現実を踏まえた上で、どのような社会をつくっていくかについて、移民、外国人労働者自身も含めて幅広い議論がなされるべきである。
現状の分析が不徹底である
在留する技能実習生は、2018年末には328,360人まで増加しており、技能実習法の下においても急増傾向は変わらない。しかも、問題領域は除染・被曝労働、妊娠・出産等にも広がり、不正行為が大企業にも拡大している。他方、高額な手数料・保証金・違約金、強制帰国、低賃金・賃金不払い、労災発生率の高さ等、従来からの課題もまったく解決されていない。
技能実習生の失踪問題が昨年の臨時国会で取り上げられ、法務省のプロジェクトチームが調査し、3月にその結果が発表されたが、不十分なものであった。対象となった実習実施機関4,280機関(5,218人分)のうち、実地調査は3分の1強に止まり、電話・書面での調査が主となっている。また、技能実習生への再聴取は70人強にすぎないと報道されている。その結果、最低賃金違反は58人分とされているが、実態とはかけ離れていると考えざるを得ない。実習実施機関側からの聴取や記録等を主とした調査だけでは、実態に迫ることは難しい。すでに帰国した元技能実習生からの聴取を含む本格的な調査が必要である。
技能実習生の意に反する強制帰国にも一言触れてはいる。しかし、法務省が2016年9月から技能実習生の途中帰国時に「意思確認票」でのチェックを始めたが、18年8月までの2年間に36件しか申し出がなく、また強制帰国と認定されたケースはゼロである。年間1万人を超える途中出国者に対して、有効な対策となっていないことは明らかである。そのため、地方出入国在留管理局への新たな事前手続きを含む効果的な対応策を検討すべきである。
昨年末の入管法改定により本年4月から新たな外国人労働者の受入れ(特定技能)が始まったが、特定技能はその多くを技能実習からの移行者が占めると想定されており、技能実習制度における課題の解決なくして、特定技能制度の健全な運用はあり得ないことを銘記すべきである。
(3)対応策(今後の方針)
ア.二国間取決めの対象国拡大及び運用の強化
二国間取決めだけでは悪質な送出し機関を排除できない
二国間取決めは「協力覚書」として締結されているが、あくまで行政機関同士のもので、法的な拘束力はない。加えて、協力覚書がなくても技能実習生の受入れは続けられ、中国やインドネシアのような主要な送出し国とも締結されていない。また、仮に問題が出ても、送出し国からの受入れを停止するような運用は想定されていない。
これに比べて、韓国の雇用許可制度では、覚書を締結した送出し国からのみ受け入れ、また問題があれば受入れを停止している。このような厳格な運用を検討すべきである。
また、送出し機関に対する規制は、すべて送出し国に任せるというのが現状であるが、送出し機関は日本国内にその駐在事務所を置いたり、駐在員を派遣したりしており、国内での規制は可能である。しかし、技能実習法では、人権侵害に対する罰則規定は送出し機関及びその関係者には適用されず、規制を放棄している。
送出し機関及びその関係者に対する国内的な規制を図るため、送出し機関及びその関係者の国内での状況を把握し、問題ある場合には直接の対策をとることができるよう、技能実習法や施行規則等の改正を含む検討をすべきである。
イ.技能実習生に対する支援・保護の強化
技能実習機構の相談体制はまだ脆弱であり、抜本的な強化が必要である
現状では、技能実習機構の母国語相談は、必要に応じて機構の職員も含めて対応するものの、一次対応は委託されており、必ずしも労働問題や技能実習制度、入管法に精通した者による対応とはなっていない。このため、強制帰国を含む困難事案や緊急事案への対応が不十分となっている。一次対応する相談員の専門性を向上させるため、実効的な方策が求められる。
また、母国語相談の受付日が言語により週1〜3日となっており、また相談時間が11:00〜19:00と限定されている。このため、その日時に相談できる技能実習生は少ないと考えられ、また24時間対応とされるメールや留守番電話では、直接の相談に代替することはできない。30万人を超える技能実習生に対する相談体制として極めて不十分であり、日曜日や夜間における直接の相談対応を含む抜本的な体制強化が必要である。
また、相談体制強化の一環として、技能実習生の権利擁護・支援に当たってきているNGO、労働組合、弁護士等との効果的な連携のあり方について検討すべきである。
ウ.関係機関の連携の下での審査及び実地検査等の実施態勢の強化
実施態勢の強化に向けて早急に人材の育成をすべきである
「初動対応を強化」「速やかな実地検査」「審査や実地検査等の厳正な実施」「監理団体の許可の取消しや技能実習計画の認定の取消し等の厳格な運用」については、ぜひ実現をしてほしい。
審査や実地検査等を有効に実施するためには、記録や書面の裏にある実態を把握することが必要不可欠であり、そのための情報源としては技能実習生自身からの聴取が重要である。しかし、技能実習生は、事実を明らかにすることにより実習実施者や監理団体から何らかの不利益を被ることを恐れて、容易には事実を伝えてくれない。そこで、聴取の方法や聴取の機会について、あらゆる工夫を凝らして臨む必要があり、またそのノウハウの蓄積・共有が必要である。
併せて、こうした真に技能実習生の権利保護・支援を実現するためには、何よりも人材の育成が欠かせない。出入国在留管理庁及び技能実習機構において、OJTを含む研修体制の抜本的な強化を図られたい。
外国人労働者の受入れ拡大を可能とする18年改定入管法の施行に先立って、受入れ後の環境整備(「外国人材の受入れ・共生に関する総合的対応策」。以下「総合的対応策)が検討されたことに対しては一定の評価をしたい。
しかしながら、「在留管理制度は,外国人との共生社会の基盤となるものであり」(22頁)という一文が端的に示す通り、「管理」を基盤とした共生は、真の共生ではない。それゆえ、総合的対応策は、移民/外国人を都合よく円滑に受け入れるための取組みにとどまっており、異なる言葉や文化をもった彼/彼女を対等な社会の構成員として迎え入れる姿勢に欠けている。
「孤立させることなく社会の構成員として受け入れていく」(23頁)ためには、既に存在している社会経済的な格差の現実を直視し、それを生み出している差別や制度的不平等に取り組むことが必要である。
「共生」と「排除」は両立できない!
「外国にルーツを持つ人々」(22頁)という言葉が基本計画で用いられたのは初めてのことであり、日本国籍をもつ者も多様化していることを考慮している点は評価したい。
けれども、当局が目指す共生社会――前述のごとくはなはだ不十分な共生社会ではあるが――の構成員を、「適法に在留する」(23頁)と限定することで、「管理」に「排除」が加えられ、真の共生社会の実現はより困難になるだろう。
2004年12月に、在留資格取消し制度が導入され、その後取消し事由が追加されている事実をふまえれば、管理強化を目指す総合的対応策によって排除が一層拡大することが懸念される。
「適法に在留する」という表現は削除すべきである。
「2014年1月時点の不法残留者は,1993年の約30万人と比べ約80パーセント減少するなど問題の大幅な改善が図られた。2015年1月時点で増加に転じて以降は5年連続で増加しているなど,予断を許さない状況にある。(傍点加筆)」(28頁)とあるが、新規入国者数の増加(2014年:12,388,748人⇒2018年:27,574,232人)、在留外国人数の増加(2014年末:2,031,721人⇒2018年末:2,731,093人)と比較すれば、非正規滞在(「不法」残留)となる割合は低下している。
それにもかかわらず、「予断を許さない状況」と記述することは、人々に対していたずらに不安を煽ることになり、共生社会の実現を妨げるものである。
イ‐② 偽装滞在者対策
市民に管理の一翼を担わせてはならない
「偽装滞在者は,表見上正規在留者であるため,一般人から入手できる端緒情報が少なく,また,実態解明に相当の労力を要するという問題がある」(32頁)、「在留カードの偽変造対策について,在留カードの真偽の判断方法に関する広報等の取組を一層強化していく」(33頁)など、当局は、「偽装」滞在者の発見に、広く一般市民を参加させようとしている。
これは、合法的な滞在者であっても「偽装」滞在者かもしれないという不安を市民に抱かせ、日本人と外国人との間に分断をもたらすものであり、前項と同様に、共生社会の実現を妨げるものである。
「偽装」滞在者は、在留資格取消し制度の導入によって、当局が意図的に生み出したものであり、当該制度は廃止すべきである。
イ‐④ いわゆる送還忌避者への対応
強制送還ではなく、在留合法化を!
2013年より実施されているチャーター便での送還については、2014年、2016年に30名弱の難民認定申請者を不認定通知交付の翌日にチャーター機で退令執行を行うなど、不認定処分への取り消し訴訟を提起する時間を与えず、闇討的方法で退令執行する看過できない事態が生じている。
基本計画案には、このような人権・人道上きわめて問題のある方法をとり、個々の事案の十分な検討を行うのではなく人数あわせで退令執行対象者を選定したことへの反省が見られない。さらに次項の「⑤ 被収容者の適正な処遇及び迅速な送還の実施」と関連して、「実効性のある送還を実施するための新たな方策を検討」のために「収容」を「新たな方策」とする危惧が払拭できない。
また、送還忌避者の強制送還は、人権上の配慮の上、本人同意を原則とすると同時に、在留特別許可の推進などの人道的な立場からの合法化の検討が望まれる。
イ‐⑤ 被収容者の適正な処遇及び迅速な送還の実施
収容代替措置の積極的な検討を!
2010年7月に入国者収容所等視察委員会が設置されたのは、長期収容の問題から収容代替措置を検討するとされた時期にあたる。送還する見込みのない者を収容するなどして長期収容者が増加したことへの反省から、その後、仮放免の弾力的運用がなされてきた。
しかしながら2015年9月以降、そうした教訓を投げ捨て、再び収容第一主義に回帰した。収容施設内での処遇問題についても、長期収容者が急増することにより、処遇の入管職員とのあいだでのトラブルや、自死などの問題が増加している。基本計画(案)では外部医療機関での診察が十分行われているような記述が見られるが、実態は、希望を願い出ても認められるものはごく少数である。収容施設での診療体制が十分でないことを認め、「改善する努力を行う」との文言を加えるべきである。
2018年2月の仮放免の運用に関する法務省入国管理局長による指示(「被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の更なる徹底について(指示)」平成30年2月28日法務省管警第43号)により、仮放免運用方針として仮放免基準がさらに厳格化された結果、仮放免者数は大幅に減少した。刑罰法令違反者はすでに刑期を終えているものであり、「仮放免になじまない者」として収容を継続するのは保安処分であり違憲の疑いがある。収容による身体拘束は人権に対する重大な侵害であるという認識に立ち、収容は最も短い適切な期間内にとどめるべきであり、基本計画案に、収容代替措置の積極的な検討を明記すべきである。
エ 在留特別許可の適正な運用
より柔軟な在留特別許可の活用を
「在留特別許可に係るガイドライン」は2006年10月に公表され、その後、新たな在留管理制度の導入を規定した09年改定入管法成立に際して改訂されたが、それ以降、見直しはされていない。
2009年当時と比較して、非正規滞在者数は減少しており、退去強制手続きされた者の4割強が出頭申告である。つまり、非正規の状態で生活するということは、当事者にとっても、決して好ましい状況ではないということである。したがって、自らの意思ではなく摘発された場合でも、多くの場合、出国に同意している。
しかしながら、日本での家族の形成や子どもの成育、10年以上にも及ぶ長期滞在、母国での迫害など、帰国を選択することができない非正規滞在者もいる。ニューカマーと呼ばれる外国人が急増して30年余りが経過するなかで、母国とのつながりを失い、日本が「母国」になっている非正規滞在者も少なくない。
子どもの権利や家族のつながりなど、人権に基づく在留特別許可を一層推進するとともに、外国人労働者の受入れ拡大を踏まえて、非正規滞在者にも「特定活動」の在留資格取得を認めるべきである。
基本計画案は、「濫用・誤用的な申請」の抑制を前面に論じている。ここにはいくつかの問題がある。
第一に、真の難民保護のための取組が具体的には存在しないまま、申請の抑制のみが語られている。2014年難民専門部会の提言Ⅱでは「難民認定手続全体の公平性、透明性の向上を図りつつ」、同提言Ⅲでは「難民該当性判断の規範的要素など、難民該当性の認定判断を可能な限り明らかにするとともに、…難民認定制度の透明性を高め制度への信頼性を向上させるべきで…、UNHCRが発行する諸文書、国際的な実務先例及び学術研究の成果なども参照しつつ、可能な限り一般化・明確化することを追求するべき」とされていたにもかかわらず、難民認定の質の問題は等閑視されている。「透明性」「公平性」との表現も交え、この点をさらに明確にした政策に改めるべきである。
第二に、2017年のUNHCRグローバルトレンドにおいて、日本は、庇護率が10%を切る数少ない国の一つとして挙げられ、さらには、庇護率が1%を切り、とりわけ認定率が低い国として唯一あげられている。基本計画案における分析の中にこの評価が示されるべきであり、このような指摘に応えるためにも、前記の難民認定の質等に関する取組の内容をいま一度明示すべきである。
なお基本計画案では、「世界で多くの難民認定申請者を生じさせているアフガニスタン、イラク、シリアの出身者の我が国での庇護の状況を見ると、欧州等の諸外国と比べてもほぼ変わらないと考えられる」と述べられている。しかし、これらの国以外にも世界で申請者の多い国々について、日本の認定は希少或いは場合によっては皆無と言わざるを得ずこの点も上記の分析において示されるべきである。
第三に、運用の見直しの中で問題となっている「振分け」について、有識者会議による検証を実施したとされているものの(37頁)、この検証結果をどう生かすのか、有識者会議を今後どのように運営するのかも、その責任範囲の明確化を含めて明示すべきである。
2 運用の見直しそのものの問題点について
行き過ぎた就労制限や在留制限は、1で論じた真の難民保護が実現されていない状況では実質的なノンルフールマン原則違反の実態を惹起することになりかねないことを明示すべきである。これらは、真の難民保護の実現に先んじてなされるべきことではなく、いわんや、対応策(今後の方針)で述べられている再申請の制限や送還停止効果に例外を設けることについても現段階では行うべきではない。
3 不服申立手続の機能不全について
難民審査参与員制度については完全に抜け落ちている。
難民審査参与員制度による不服申立手続における難民認定数は、6年連続で1桁、近年は1名又は数名にとどまっている実態がある。
難民審査参与員制度による不服申立手続は機能不全に陥っていると言わざるを得ず、基本計画案においても、これを改善するための方策(選任対象の問題や参与員の義務的研修等)が速やかに検討されるべきことが示されなければならない。
4 審査の質の向上のためのUNHCRの役割について
UNHCRとの関係については,研修や連携・協力等(37頁・40頁)にとどまらず、さらに、個別の案件処理をUNHCR等と共同で行う等、いわゆるクオリティの向上と確保のための取組をして国際基準に則った決定をするようになったという諸外国での実践にならい、かかる取り組みを含めた計画を盛り込むべきである。
5 出身国情報について
出身国情報については、一層の充実が必要である。
行政において収集した情報については、手続の透明性や公平性を確保するため、難民認定申請者やその代理人等に公開し、謄写閲覧等ができるように共有化を推進すべきである。
外国人にとって、在留期間の制約のない永住資格を取得することは、居住国である日本で安定的な生活を送るための貴重なステップである。日本国政府もそれを了解しているからこそ、新規入国時には在留期間によって居住が制限されている外国人に対しする永住許可の規定を定めているのである(入管法第22条)。
1992年末には45,229人(外国人登録者の3.5%)であった(一般)永住者は、2018年末には771,568人になり、在留外国人の28.3%を占めるようになっている。これは、いわゆるニューカマーの滞在長期化や定住化が進行したことに加えて、1998年に許可要件が原則20年から10年に短縮され、その後も、我が国への貢献などを要件として、居住要件に特例措置が導入されたゆえである。さらに、日本人の配偶者や子ども、難民認定者などに対しても、人道的な見地から居住要件が緩和されていることは、周知のとおりである。
そして、永住権をえることで、外国人はより安心して、安定的に日本社会で生活し、働き、学ぶことができるのである。つまり、永住許可は外国人の社会統合の重要なステップであり、かつ共生社会の基盤の1つでもある。したがって、共生社会の実現を掲げる日本政府が、今後、より一層、永住許可要件を緩和すべきである。
以上
<PDF版>
190412出入国在留管理基本計画パブコメ