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2019.03.11 声明・意見

【お知らせ】堤未果著『日本が売られる』についてのファクトチェックを幻冬舎に送付しました

堤実果著『日本が売られる』(幻冬舎新書)の「  6 医療が売られる」において、事実とは異なる説明や根拠のない主張が見られたことから、移住連は本日、以下の通りファクトチェックを示した書面を幻冬舎に送付しました。

ファクトチェック! 堤未果著『日本が売られる』―「6 医療が売られる」に焦点をあてて―

特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク

 

 堤未果著『日本が売られる』「6 医療が売られる」では、「YOUは何しに日本へ?国保を食い潰す外国人たち」という見出しから始まり、外国人が医療目的に来日し、国民健康保険を利用して高額治療を受け、出産一時金を不正に受給しているということを強調し、「国民皆保険制度というインフラは、安易な移民50万人計画を進めることで、雪崩のように崩壊させて良いものでは、決してない」としています。しかしそのことを実証するデータは何一つ示されていないどころか、事実に基づかない主張で塗り固められた、「ウソ八百」ともいうべきシロモノです。
 以下、本書の記述に沿って、ファクトチェックをしていきます。

 

ー 医療目的を隠して来日し、国民健康保険に加入して高額の治療を受けにくる外国人が急増しているのだ。(194P)


 そもそも国民健康保険に加入する外国人は「急増」していません。2012年度以降5年間の外国人の国保被保険者数は、2012年度86万人から2016年度99万人とわずか13万人の増加にすぎません(2018年11月移住連の省庁交渉における厚生労働省の回答資料)。構成比で見ても、国保被保険者全体に占める外国人被保険者の割合は、2.4%から3.3%に増加したにすぎません。また、この増加は、国保被保険者数が2012年度3466万人から2016年度3013万人に減少したことに主によっています。
 「医療目的を隠して来日し、国民健康保険に加入して高額の治療を受けに来る外国人が急増」していることを裏付けるデータは何一つ存在していません。


ー 2012
年に民主党政権は、それまで1年だった国保の加入条件を大幅に緩め、たった3カ月間滞在すれば、外国人でも国保に加入できるよう、法律を変えてしまった。(194P)


 認識が間違っています。確かに、2012年、住民登録の対象となる在留期間が3ヶ月を超える在留資格をもつ外国人(中長期在留者)は、国民健康保険の被保険者とされるようになりました。しかしこれは、「加入条件を大幅に緩め」たというよりもむしろ、保険の加入と納付義務を課す外国人の対象を拡大したことを意味しています。納付義務が課される外国人が増えたということです。この背景には、「住民としての利便性」と「自治体業務の煩雑さをなくす」ことを理由として、2009年(当時は自民党政権)に入管法・住民基本台帳法の改定が行われたことがあります。健康保険の分野でもこの趣旨を達成すること、国民健康保険がその対象を、住所を有する者としていることから、2012年に国民健康保険法施行規則を改定し、中長期在留者を国民健康保険の対象としたのです。

ー 特に中国人患者が多いC型肝炎薬などは、3か月1クールで455万円のところを、国保を使えば月額2万円だ。高額すぎて問題になった肺がん治療薬オプジーボなら、1クール1500万円が自己負担額月60万円、残りは私たち日本人の税金で支えてゆくことになる。(194)


 高額な医療を受けるために入国している外国人がいるという事実はほとんど確認されていません。厚生労働省が、2017年3月に行った在日外国人の国民健康保険利用に関する実態調査によると、調査期間(2015年11月〜2016年10月)の1年間における外国人レセプト総数14,897,134件のうち、国保資格取得日から6ヶ月以内に80万円以上の高額な治療を受けたものは1,597件(総数の0.01%)、そのうち資格取得から6か月以内に診療を受けているもののうち、ハーボニー配合錠、ソバルディ錠、堤氏が槍玉に挙げているオプジーボ錠の処方があるものは、7名しか確認されていません。(調査の詳細については厚労省提供資料https://bit.ly/2MfjSMo参照)。
 また、堤氏は、「残りは私たち日本人税金で支えてゆくことになる」としていますが、前述の通り、在留資格が3か月を超える外国人は、医療ツーリズムや「観光・保養」目的を除き、健康保険への加入と保険料納付が義務付けられていますので、保険料を支払っています。また所得税、住民税、消費税も、すべて等しく負担しています。
 いうまでもなく、保険料を払っている人が当該保険を利用することに何の問題もありません。

ー 在日外国人の多い地域では、治療費を払わず姿を消す患者も後を絶たず、逃げられた医療機関には回収するすべがない。(194)


 まず在日外国人の多い地域とは、どこを指しているのか書かれていません。一部の医療機関で訪日外国人による医療費の回収が問題となっているのは確かです。しかし、訪日外国人は健康保険資格を持っていませんから、堤氏がここで問題にしている国民健康保険制度に影響が生じることはありえません。また、生活苦から医療費を払えなくなる人が存在することは事実でしょう。しかし、外国人による不払いが多いという実証データは存在しません。また、不払いを起こした人が「姿を消す」ことも、仕事や家族の関係を考慮すれば決して容易ではなく、現実的な話ではないでしょう。
 こうした根拠のない記述は、「在日外国人の増加が、病院財政を悪化させる」という偏見を助長します。

ー 出生証明書さえあればもらえる42万円の出産一時金も、中国人を中心に申請が急増しているが、提出書類が本物かどうかも役所窓口では確認のしようがないのだ。(195)

 「本物かどうかも役所窓口では確認のしようがない」ということはありえません。というのも、国民健康保険法第113条には、被保険者資格、給付、保険料に関し、必要に応じて調査権が定められているからです。出生証明書は、出産に携わった医師又は助産師が記入しますので、疑義があれば、記載者の所属する医療機関に確認すれば、真偽はすぐに判明します。
 また、被扶養者が外国で出産した場合を想定した上での指摘だとしても、中国人が「出生証明書」を偽造して出産育児一時金の詐取を行っているかのような記述は、「中国人差別」そのものです。そもそも言葉の問題、出産前後のケアなどを考えて、出身国での出産を希望する在日外国人は少なくありません。それは、日本人女性が「里帰り出産」するのと同じです。「実家」が海外にあるだけで、出産一時金が認められないのは、差別です。
 このあと堤氏は、安倍政権が低賃金の労働者を大量に受け入れようとしているが、「今は安く使い捨てることができたとしても、猛スピードで進化するAIによって、今後単純労働者の需要は否応なしに減っていく」と指摘した上で、以下のように述べています。

ー その時、今横行する医療のタダ乗りに加え、大量に失職する低賃金の外国人労働者とその家族を、日本の生活保護と国民皆保険制度が支えなければならなくなる現実は、果たしてシミュレーションされているだろうか?(195P~196)

 そもそも「単純労働者の需要は否応なしに減っていく」「大量に失職する低賃金の外国人労働者とその家族」という前提には、何の根拠も示されていません。それどころか「横行する医療のただ乗り」というフェイクまで持ち出した上に、外国人労働者とその家族を(将来の)「福祉のお荷物」とみなし、その存在を否定的に捉えて危機を煽るのは、排外主義に他なりません。
 そもそも日本に暮らしている人は誰でも、社会保障制度の対象となるのは、国際人権規約にある「社会保障の内外人平等」原則に照らして当然のことです。

ー だが移民は、四半期利益のために使い捨てる商品ではない。名前があり家族があり、子供を育て、将来の夢を描き、病気にもなり、社会の中で老いてゆく、私たちと同じ、100年単位で受け止めなければならない存在だ。(196)

ー だからこそ、どんどん入れる前に、彼らをモノではなく人間としてどう受け入れていくかを慎重に議論し、シミュレーションし、環境を整備するのが先だろう。(196)

 堤氏は、移民がすでに「ここにいる」こと、すなわち260万人を超える外国人、くわえて外国にルーツがある人びとが日本で暮らしていることを無視して論を立てています。「名前があり」「家族があり」「子供を育て」「将来の夢を描き」「病気になり」「社会の中で老いてゆく」人がすでに260万人以上もいるわけですから、「シミュレーション」などするまでもなく、これまでの外国人受け入れの実態から謙虚に学べば、どのような環境を整備すればいいのか、自ずと答えは出るはずです。

 

YOUは何ゆえウソをつく?」移民の人権を食い潰すペンの暴力

 以上のような、堤氏の「外国人ただ乗り」論は、特に目新しいものではありません。むしろ、この本が出版された直前にいくつもの週刊誌やネットメディアで展開されていた「フェイク記事」をろくに取材も検証もせず、そのまま書き写しているかのようです。外国人ただ乗り論に「ただ乗り」して、移民の存在を、いわば自らの主張のダシにし、「日本人」と「外国人」の対立を煽ることは、まさに「ペンの暴力」であり、ジャーナリストとして恥ずべき態度です。「自国民と移民とが憎み合い、暴力がエスカレートし、社会の基盤が崩れかけている欧州の二の舞になってしまう」(196P)事態を引き起こそうとしているのは、ほかならぬ堤未果さん、あなた自身ではないでしょうか。

 

ファクトチェックー「日本が売られる」(PDF版)

 

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