移住連は、2018年11月21日に院内集会「今こそ、包括的な移民政策を!ー政府が進める『新たな外国人材の受入れ』を問う」を開催し、以下の通りにアピール文を採択しましたので発表いたします。
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「『単純労働者』は受け入れない」「移民政策ではない」。もう建前は十分だ。その建 前の陰で、外国人労働者・移民、外国にルーツをもつ人びとの権利や尊厳がないがしろに されてきた。
「外国人が増えると治安が悪化する」「日本人の雇用条件が悪化する」「外国人が日本 の保険制度にただ乗りをしている」。もうデマは十分だ。そうして日本人と外国人の対立 が煽られ、多様な人びとがともに暮らすこの社会の現実は見えなくさせられてきた。
外国人技能実習生の過酷な労働実態に再び注目が集まっている。周知のように、技能等 の移転を通じた国際貢献を目的とする外国人技能実習制度は、実際には、安価な労働力を 受け入れる経路として利用されてきた。
この制度は、技能実習生に家族の帯同や転職の自由を認めないことによって、「労働力」 が「人間」として暮らす局面を最大限制限している。それは「『単純労働者』は受け入れ ない」「移民政策ではない」という建前を維持するために作り出され、維持されてきた制 約ともいえる。
しかし、今明るみになっている技能実習生の数々の人権侵害は、結局、この制度が、彼・ 彼女らの労働者としての権利を制限し、生活のあらゆる部分を管理下に置くことによって しか維持され得ないことを示している。つまり「人間」を「労働力」としてしかみない制 度は、「人間」としての暮らしを制限することによってしか成り立ち得ないのだ。そうし て、「人間」としての移民を「労働力」としてしか扱ってこなかったのが、日本の過去 30 年間の、いわば「移民政策なき移民政策」である。
今、ようやく、政府から外国人労働者を正面から迎え入れる案が出されたことを私たち は歓迎する。しかしその中身はまたもや、移民を「労働力」としてしかみないものである。
今、私たちは岐路に立っている。過去 30 年の「過ち」を再び繰り返すのか。それとも現 実を直視し、「人間」が「人間」として暮らすことのできる社会をともにつくる方向に踏 み出すのか。
私たちは、「人間」が「人間」として暮らすことのできる社会を求める。なぜなら外国 人労働者・移民、外国にルーツをもつ人びとは、すでに「ここにいる」からだ。彼・彼女 らは「人間」としてここにいる。国家がいかにコントロールしようとしても、社会がいか に「労働力」として扱おうとしても、この厳然たる事実は変わらない。
とするならば、彼・彼女らが、「人間」として暮らせるための権利と尊厳が保障されな ければならない。この原則に立ち、現在の政府案に関し、以下のことを求める。
1. 多くの人権侵害を生み出して来た外国人技能実習制度を新たな受け入れ制度への入り 口とはしないこと。技能実習制度は直ちに廃止すること。
2. 「特定技能 1 号」「特定技能 2 号」の区別をやめ、就労可能な他の在留資格と同じよう に、はじめから家族帯同が認められ、永住につながり得る在留資格を設けること。また新 しい在留資格による受け入れは直接雇用によるものとし、技能実習制度の構造に酷似する 受入れ機関や登録支援機関などの仕組みは排除すること。さらに外国人労働者に、日本人 と同一の賃金を実質的に保障するための体制を整備すること。
3. 「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」の検討にあたっては、管理強化の体 制を全面的に改めること。そのためには、出入国管理を司る法務省には司令塔的役割を与 えないこと。内閣府もしくは専門的省庁がその役割を担うこと。
4. 外国人労働者が社会の一員として暮らすための体制を整備すること。すなわち家族帯 同、日本人と平等の社会保障(健康保険、年金等)、日本語教育、子どもの教育など、生 活者としての権利を実質的に保障すること。非正規滞在者については、彼・彼女らの日本 社会とのつながりを考慮し、正規(合法)化を認めること。
5. 国籍差別や人種差別の実態を踏まえ、移民基本法、差別禁止法を制定し、移民の権利保 障の体制を整えること。
以上
2018年11月21日
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク 11. 21 院内集会参加者一同