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2024.06.17 声明・意見

「移民社会」の現実から目を背けてはならない ~入管法等の改定に断固抗議する~

「移民社会」の現実から目を背けてはならない
~     入管法等の改定に断固抗議する     ~

 

 2024年6月14日、外国人の日本での生活を不安定にさせる永住資格取消し制度の導入、「奴隷制度」を継承する育成就労制度の創設など、外国人の権利を侵害し、差別を助長拡大する入管法と入管特例法、及び技能実習法の改定法案が、十分な審議もないまま国会で成立しました。

 しかしこの改定法は市民社会を分断する、まやかしの継続にほかなりません。外国人の尊厳と権利を奪い続け、管理・監視のもとにおき、都合よく「活用」する一方で、外国人が安定的に暮らすことを阻む法律です。

 私たちが技能実習制度の見直しに期待したのは、労働者を労働者として受けいれること、つまり、「移民社会」という現実にふさわしい法改定です。

 あらためてここに、入管法等の改定に断固抗議します。

 

「共生社会の実現」に逆行する永住資格取消し制度は、取り消すべきです!

 現在、およそ90万人(23年末現在:891,569人で、在留外国人の26.1%)の外国人が、在留期間に制限のない「永住者」の法的地位で暮らしています。日本国籍をもたない外国人は、在留資格「永住者」を得ることで、定期的に在留期間更新を申請する必要もなく、日本社会の一員として、安心して安定的に暮らすことができます。したがって、永住者が増えることは「共生社会の実現」への一歩でもあるはずです。

 それにもかかわらず、「共生社会の実現」を掲げながら、「永住権」を容易にはく奪しうる制度を導入する発想そのものが理解できません。永住資格の取消しは、それまで、日本で築いてきた永住者の生活基盤とその人生、社会資源やネットワーク、人びととの歴史を根こそぎ奪います。    

 永住者の多くは日本以外に生活基盤を持たない人たちであり、日本で生まれ育った人たちも多数含まれています。軽微な法違反や義務違反によって永住資格取消しを可能とすることは、永住者であっても入管庁の「広範な裁量」により在留継続が認められない不安定さから逃れられないとするものです。永住者のみでなく、その配偶者(在留資格「永住者の配偶者等」)、今後永住資格を得ようとしているすべての外国籍住民の立場を不安定化し、かつ、外国籍住民を共に社会を形成する市民として認めない差別的なものです。真の共生社会の実現を目指す私たちには、到底容認することができません。    

 むしろ、より容易に永住資格を取得し、永住者の権利を拡大し、安心して安定的に日本社会で生活できる制度を導入すべきです。

 

技能実習制度の奴隷労働構造を継承した育成就労制度は、廃止すべきです!

 育成就労制度は、「現代の奴隷制」である技能実習制度を「発展」させたものに過ぎず、その構造的問題は「解消」されていません。創設された育成就労制度も、現行の特定技能制度も、労働者としての尊厳や差別の禁止など、国際人権基準にもとづく受入れ制度とはほど遠いものです。

 本人の意向による転籍を容認するとしつつも、受入れ機関や地域への「配慮」から、様々な要件を付けて労働者の権利を制約し、一つの受入れ機関に縛り付けようとする構造は、技能実習制度と何ら変わっていません。変わったのは名称と「目的」のみです。長年、技能実習生を苦しめてきた強制帰国問題などは手つかずです。

 育成就労外国人も、特定技能1号外国人も、技能実習生と同様に家族帯同が認められていません。人間としての社会生活を前提としない制度では、妊娠・出産に伴う「悲劇」が繰り返されることなどが危惧されます。労働者の生活の安定が図られず、家族の結合権を保障する国際人権基準も守られない制度は、直ちにあらためるべきです。来日する労働者は「労働力」というモノではありません。生活者です。人間です。

 技能実習制度の奴隷労働構造こそを「廃止」し、債務労働を排除し、転籍・転職の自由など労働者の基本的権利と労使対等原則を担保した外国人労働者受入れ制度を創設すべきです。

 

在留カード等とマイナンバーカードの一体化は、廃止すべきです!

 入管法及び入管特例法の改定により、在留カード及び特別永住者証明書とマイナンバーカードの一体化が可能となりました。

 しかし、とりわけ中長期在留者は、在留カードの常時携帯義務が課されているため、もし一体化したカードを紛失した場合には、個人情報漏洩につながる危険性が格段に高くなります。

 また、一体化されたカードは、入管庁が在留カード等をベースにマイナンバーカード機能を追加するため、券面が通常の在留カード等と類似したものとなります。その結果、マイナンバーカードを提示する必要がある場合、通常のマイナンバーカードにはない在留に関わる多くの情報が、不必要に相手方に伝わります。これは、個人情報の厳格な取扱いを前提に実施されているマイナンバーカードを外国人に関して緩和するもので、外国人への差別を助長するものと言わざるを得ません。

 現在、政府は、マイナンバーカードと健康保険証の紐付けを強行し、任意であるはずのマイナンバーカードの保有を事実上強制しようとしています。このような政府の姿勢を考えると、在留カード等とマイナンバーカードの一体化も、いずれ事実上強制することが大いに懸念されます。かかる一体化は廃止すべきです。

 

私たちはあきらめません。「公正な移民社会」を目指します!    

 日本はすでに「移民社会」です。

 しかし、政府は、その事実から目を背け、「移民政策ではない」と強弁し続け、「移民社会」にふさわしい制度や環境の整備を怠り続けています。その姿勢は、今回の法改定でも変わっていません。

 私たちが求めているのは、「移民社会」の実態にふさわしい移民政策です。人間を人間として受け入れ、尊厳と権利を尊重し、安心して安定的に暮らすことができる政策への転換が必要です。管理や監視ではなく、排除や差別ではなく、国籍や民族にかかわらず、社会の担い手として活躍できる公正な移民社会は、持続可能な民主主義社会へのひとつの道すじであり、この社会に暮らす私たち、すべての人にとって心地よい社会です。

 私たちはあきらめません。対等な社会の構成員として互いに違いを尊重しあう社会、誰ひとり取り残されることのない社会を求め、声をあげ続けていきます。公正な移民社会は一人ひとりの参加で、必ず実現します。一緒に歩みましょう。    

 

2024年6月17日

NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

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