【調査目的】移⺠女性の妊娠・出産をめぐる課題を可視化させ、必要な政策を明らかにする。
【調査対象】原則として、2019 年 4月(特定技能開始以降)〜2021 年現在までに支援者・支援団体に相談があった移⺠女性の妊娠・出産・育児ケースについての情報提供を、移住連 ML 等を通じて、支援者、支援団体に依頼。対象となる移⺠女性は、「別表 1」の在留資格もしくは在留資格がない者とした。
【調査期間】2021 年 5月〜6月
調査結果サマリー「移⺠女性の妊娠・出産における課題〜移住連「移⺠女性の妊娠・出産調査報 告書」から見えてきたこと〜」:
調査の背景と概要
・ 近年、移⺠女性の妊娠・出産に関わる相談の増加を背景に、移住連として支援者・支援団体から情報提供を依頼
・ 2021 年 5-6 月に「別表 1」の在留資格および在留資格がない移⺠女性の妊娠・出産について 58 ケースを収集
・ 女性の国籍:ベトナム 18、ネパール 7、ほかは 5 ケース未満
・ 女性の在留資格:技能実習 13、特定活動 12、 在留資格なし 14, 就労系在留資格 7, その他 12
技能実習生の課題
・ 妊娠・出産に対する制約があった者が 71%。制約主体は監理団体、送出し機関、受入れ機関。契約書等への明文化された制約(本来禁止)のほか、妊娠した場合に帰国か中絶を迫られたり、職場で排除されたりする実態あり
・ 日本で育てることが非常に困難:寮生活、低賃金、産休中の生活費など子育てとの両立が想定されていない制度、子どもの安定した在留資格が認められていないなど
・ 不十分な公的機関の対応:妊娠・出産に伴う不利益取り扱い禁止についての通知(厚労省ほか)が出されているが、効力を発揮していない。技能実習機構における救済、保護する体制の欠如
在留資格のない移⺠女性の課題
・ 在留資格によって利用できない制度あり(健康保険など)
・ 病院や制度へのアクセスの制限
- 本来在留資格にかかわらず利用できる制度(入院助産など)でも、支援団体等が交渉してはじめて利用できるという実態あり
- 保険がないことを理由とする診療拒否
・ 子どもの在留資格:親に在留資格がないと、子どもも在留資格を認められないという問題
・ 単身女性の脆弱さ:制度から排除されているため、身近な人に頼らざるを得ず、DV や性暴力を誘発
就労系女性の課題
・ 妊娠・出産を理由とする退職勧奨・強要
・ 子どもの在留資格が不安定:親が「特定活動」(EPA)や「特定技能 1 号」等の場合、子どもに安定した資格は認められない。また在留期間によって健康保険に加入できない場合もあり
・ 仕事と育児の両立困難
まとめ
・ 多様な背景の移⺠女性の妊娠・出産に障壁あり
・ 法制度上の障壁は在留資格の種類や有無が大きく影響
・ 職場における有形無形の差別、子どもの父親、コミュニティなど社会関係における抑圧もあり
・ 全体として、移⺠女性が安心して妊娠・出産できる環境がなく彼女たちのリプロダクティブ・ライツが保障されていない