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2021.04.13 事務局から

政府「入管法改正案Q&A」に対する移住連からの反論_後編(Q5, Q7)

政府が「入管法改正案Q&A」を発表しました。ここでは、退去強制命令を受けていながら帰国できない、また、収容されている外国人について、「ルールを守らない人たち」であるから、「国外退去」すべきとの主張が展開されています。しかし、国際人権のルールを守っていないのは、政府(入管)のほうです。
以下、移住連より反論します。なお、ここに反論が示されていない
Q1, 2 ,6, 8については、ページの一番下に掲載しました参考リンクをご参照ください。




Q5 なぜ,
日本からの退去を拒む外国人を退去させられないのですか?

政府回答①:

〇 次のような事情が,退去を拒む外国人を強制的に国外に退去させる妨げとなっています。
(1)
 難民認定手続中の者は送還が一律停止
  現在の入管法では,難民認定手続中の外国人は,申請の回数や理由等を問わず,また,重大犯罪を犯した者やテロリスト等であっても,日本から退去させることができません(送還停止効)。
  外国人のごく一部ですが,そのことに着目し,難民認定申請を繰り返すことによって,日本からの退去を回避しようとする外国人が存在します。
(2)
 退去を拒む自国民の受取りを拒否する国の存在
  退去を拒む外国人を強制的に退去させるときは,入国警備官が航空機に同乗して本国に連れて行き,その外国人を本国の政府から受け取ってもらう必要があります。
  しかし,ごく一部ですが,そのように退去を拒む自国民の受取を拒否する国があります。
(3)
 送還妨害行為による航空機への搭乗拒否  
  退去を拒む外国人の一部には,本国に送還するための航空機の中で暴れたり,大声を上げたりする人もいます。  
  そのような外国人については,機長の指示により搭乗拒否されるため,退去させることが物理的に不可能になります。

移住連からの反論①:

 現行法の下でも、入管は、退去強制令書が発付された外国人を送還することができます(Q3反論参照)。

 (2)は、本人の責任ではないですし、仮に受入れ国がない外国人であるならば、日本で受け入れるのが人権尊重の原則ではないでしょうか。なお、現在、(2)に該当する国は、世界で一国のみです。

 (3)について、このような事態は頻繁に発生しているものではありません。現行法の下でも、飛行機の中で暴れる行為は、護送する入国警備官が相手であれば公務執行妨害罪、航空機のクルー等が相手であれば威力業務妨害罪による処罰が可能なケースが多いと思われますし、送還にあたる入国警備官は強制力の行使が可能です。新たに刑罰をともなう立法をする必要性は認められません。

政府回答②:
〇 (2)及び(3)については,このような事情により,日本からの退去を拒み続ければ在留資格がないまま日本に滞在し続けられるという事態は見過ごせません。
  そこで,その外国人を翻意させて退去等を決意させるため,最終的な手段として,一定の期限までに日本から退去することを命令し,その命令に違反した場合は処罰されるという仕組みを設けることとしました。
  なお,当庁で把握している範囲では,例えば,アメリカ,フランス及びドイツについては,対象者にその国からの退去の義務を負わせ,その義務に違反した場合の罰則を設けているとのことです。

移住連からの反論②:

 帰れない事情を抱える外国人に罰を与えたとしても、帰れるようになるわけではありません。

 外国の立法例として入管庁が挙げるアメリカ、フランス、ドイツでは、その国で育った若者が送還される可能性など、保護すべき人を保護する仕組みの実情が、日本とは全く異なります。いわば、前提事情が違いすぎるので、退去義務を負わせる仕組みのみを取り出して比較すべきではありません。



Q7 なぜ,長期収容の問題が生じているのですか?

政府回答①:

〇 現在の入管法では,日本から退去すべきことが確定した外国人については,原則として,退去させるまでの間,当庁の収容施設に収容することになっています。

移住連からの反論①:

 正確には「直ちに送還することができないとき」に「送還可能のときまで」収容が可能となっており(法52条5項)、送還することができないときの特別放免の規定(法52条6項)や仮放免許可の規定もあり、これらも合わせたものが入管法上の収容に関する規律です。

 また、無期限の長期収容は、2020年9月25日付の国連の人権理事会の恣意的拘禁作業部会の意見書において国際人権法違反と指摘され、2021年3月30日に発表された米国国務省の報告書においても指摘されているように、重大な人権侵害です。

2021  年 3 月 31 日(ジュネーブ時間)には、国連人権理事会の特別手続である①移住者の人権に関する特別報告者、②恣意的拘禁作業部会、③思想信条の自由に関する特別報告者及び④拷間等に関する特別報告者の4名が連名で、日本政府に対して、日本の入管法の下の無期限収容、司法審査の欠如等が国際人権法に違反する旨の共同書簡を発しています。

政府回答②:
〇 そのような外国人が退去を拒み続け,かつ,強制的に国外に退去させる妨げとなる事情があると,収容が長期化する場合があります。

移住連からの反論②:
 上記のとおり、現行法上も、特別放免や仮放免の規定があり、これらを適切に運用すれば、長期収容は防ぐことができます。

政府回答③:
〇 この点に関し,現在の入管法では,収容されている外国人の収容を一定期間解く仮放免が行われる場合もあります。

  しかし,現在の入管法では,仮放免を許可するかどうかは,仮放免の請求の理由のほか,逃亡のおそれ,日本での犯罪歴の有無・内容等の様々な事情を考慮して判断されますので,全ての収容された外国人に仮放免を許可することがきるわけではありません。

移住連からの反論③:
 このような問題点を指摘しながら、政府案では仮放免の範囲をますます狭め、病気などの特殊な場合の一時的な身柄解放に限定し、重い責任を負う監理人の存在が必須の監理措置の制度に置き換えようとしています。監理措置の下では、収容が解かれるためのハードルは一層厳しくなります。
 前述の、国連人権理事会4機関の日本政府宛て共同書簡では、政府法案が、司法審査や収容期間の上限等の規定を設けていないこと、監理措置が過度に制約的であること、ノン・ルフールマン原則に反するおそれがあること、子どもに対する配慮がないこと等が指摘され、法案の再検討が求められています。

 なお、今回の「入管法改正」の背景には、2018年頃から、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けての環境整備一環として、仮放免の運用の厳格化が入管庁により指示され、仮放免許可が著しく認められにくくなったという経緯があります。「安心・安全」なオリンピックの開催準備という大義名分のもと、国家にとって「監視・監理」の対象である外国人がターゲットとされたというわけです。

 各地の入管施設で収容されている被収容者たちは、そのような状況に抗議して、ハンストを行いました。そして、2019年6月には大村入国管理センターで、一人のナイジェリア人が飢餓で亡くなりました。入管は、それについて、調査報告書のなかで、死亡原因が飢餓死であったことを認めた上で、「対応には問題がなかった」としました。また、2021年3月6日には名古屋入管収容施設内でスリランカ女性が死亡しました。1ヶ月以上経った今(2021年4月12日現在)でもまだ死因は不明のままです。

 本来「入管(施設)」とは、強制送還の準備のために「一時的に」収容しておくための施設です。また、先に説明した通り、入管は被収容者の処遇に関するはほぼすべての権限を掌握しているのですから、「長期収容」を回避できる権限も持っているのです。「長期収容」の状況、また、「長期収容」の末の「死」に対する責任は、入管にこそあると言えます。


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