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お知らせNews

2020.06.09 事務局から

「学生支援緊急給付金」に関する要請についての報告

 移住連は、2020年5月29日に、文科省に対して、「学生支援緊急給付金」に関する要請を行いました。要請には外国人人権法連絡会のメンバー、また、留学生、外国ルーツの学生、朝鮮大学校の学生も参加しました。
 要請内容と文科省からの回答は以下の通りです。なお、文科省からの回答に不明な箇所、また、不足があったことから、後日確認した内容を報告に含めました。

「学生支援緊急給付金」とは

「学生支援緊急給付金」とは

◆文科省HPより
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/mext_00686.html

 文科省の資料では給付要件⑦が⑥に含まれているものがあったり、5月29日以降、文科省発表のQ&Aが更新されていていますが、移住連からの本要請は、こちらの学生支援緊急給付金給付事業(「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』)事務処理要項(第1版)について提出されたものです。

https://www.mext.go.jp/content/20200520_mxt_gakushi01_000007327_01.pdf


移住連からの要請3つのポイント

1.給付金対象者が少なすぎる → 経済的に困難なすべての学生へ支給すべく、要件⑥の削除を
2.留学生に対してのみ「成績要件」が付けられているのは差別 → 要件⑦の削除を
3.朝鮮大学校を対象外とするのは差別 → 朝鮮大学校を対象にせよ


1. 経済的に困難なすべての学生に給付すべく、要件⑥の削除を

◆移住連要請

 経済的理由で学業の継続を断念せざるを得ない者すべてに対して、給付金を支給することが必要。給付要件⑥*を削除すべき

*給付要件⑥とは

P.7参照:https://www.mext.go.jp/content/20200520_mxt_gakushi01_000007327_01.pdf

◆文科省回答
 
給付金対象枠の根拠は以下の通りなお、これは、第1次の対応。必要に応じて、第2次以降の給付も検討する。


給付対象となる教育機関
(在籍学生数370万人)

大学(専攻科、別科を含む。科目等履修生・聴講生・研究生は含まず*1)・短期大学(専攻科、別科を含む。科目等履修生・聴講生・研究生は含まず)・大学院高等専門学校(第4学年・第5学年及び専攻科のみ)・専門学校(専門課程)・日本語教育機関外国学校日本校*2

*1 省庁交渉の席では、専攻科と別科は含まないという回答であったが、後日確認したところ、専攻科と別科は含むの回答を得た。

*2 外国学校日本校については、後述。

 

給付金対象者数:43万人
「就学支援新制度」対象者(51万人)の内の自宅外生20万人弱、家庭からの援助がなく自らの収入のみで自活している学生20万人弱、自宅生だが困窮している学生(約3万人)の合計

 

     予算枠:530億円

   約43万人、530億円の予算を前提として、大学等に枠を設定している。


◆移住連コメントー文科省回答を受けて

 文科省は対象者数の推計にあたり、JASSO(日本学生支援機構)調査の「家庭からの給付がない者」のみを対象としているが、「家庭からの給付のみでは修学不自由、修学困難な者」を含めれば、大学生(昼間)で36.0%、大学院修士課程で42.5%、博士課程で53.1%にも上る(JASSO(2018)「平成28年度学生生活調査」)。一方、家庭からの給付のみで修学している者であっても、コロナウイルス感染症拡大の影響で、保護者の収入が激減し、経済的な困難に直面している学生もいると推測される。

 さらに、2012年度の中途退学者の理由をみると、「経済的理由」が最も多く20.4%を占めており(文科省(2014)「学生の中途退学や休学等の状況について」)、コロナの影響がない時ですら、経済的理由で大学等を中退しなければいけない学生が少なからずいる(当該調査では、年間中退者は79,311人、全体の2.65%)。

 また、留学生以外の外国人学生の場合、「家族滞在」や「特定活動」、「外交」や「公用」は既存の奨学金の対象外であり、平時であっても、経済的支援がえられず、困難に直面している者が多い。また、賃金構造基本統計調査や外国人雇用状況の届出の結果をみれば、外国人労働者(保護者の就労状況)は、総じて日本人よりも不安定で、賃金水準が低いことからも、外国人学生の経済的困難が類推されるであろう。
 したがって、既存の調査を参照すれば、全体の1割強にあたる43万人という給付枠では、困窮する学生の学びの継続を支援するには不十分であることは明らかである。



2. 留学生に対する、成績要件(給付要件⑦)の削除を

◆移住連要請
 経済的な困難に直面しているのは、留学生も、他の学生も同様。成績要件(給付要件⑦**)を削除すべき
       **要件⑦とは

◆文科省回答

 留学生以外の学生には、要件⑥(JASSO等既存の奨学金制度を活用していること)があることから、それとバランスをとるために、留学生に対して要件⑦(成績や出席等に関する要件)を加えた。

 留学生を対象とした要件⑦も含め、最終的な判断は、学生とより近い立場にある大学等の判断に委ねており、必ずしも⑥や⑦を満たさない者には給付しないといものではない*3

 *3 5月29日、「学生支援緊急給付金給付事業 事務処理要領Q&A」に、留学生の成績要件に関する説明が追加された。

◆移住連コメントー文科省回答を受けて

 留学生30万人計画により、近年、留学生は急増しているが(312,214人、2019年度)、その95.9%が私費留学生である。また、JASSOの調査によれば、私費留学生の75.8%がアルバイトをしており(アルバイトの平均月額は、高等教育機関で7.3万円、日本語教育機関で8.5万円で、平均月収の5割前後をアルバイト収入が占めており(JASSO(2019)「平成29年度私費留学生生活実態調査」)、日本人学生以上に、アルバイトへの依存率が高い。

 加えて、私費留学生の4割強が、コロナウイルス感染症拡大による自粛の影響を強くうけている飲食業でアルバイトしていることからも(JASSO(2019))、留学生の経済的困窮が推測される。

今回の給付金の目的が、困窮する学生の学びの継続を支援するものであるならば、困窮度とは異なる成績要件を、留学生にのみ加えることは、明らかな「差別」である。

  


3. 朝鮮大学校を対象にせよ

◆移住連要請

 各種学校である朝鮮大学校が対象外の扱いになっていることは、極めて遺憾である。1998年秋、京都大学大学院が朝鮮大学校卒の受験を認め合格したことを受け、文部省は1999年8月、学校教育法施行規則を改正して大学院入学資格を拡充した結果、外国大学日本校(テンプル大学日本校など5校、一条校ではない)も、対象になったことが想起される。給付対象には、一条校ではない日本語学校も含まれていることに照らせば、東京都から認可を受けている朝鮮大学校も、当然その対象に含めるべきである。


◆文科省回答

 各種学校には、自動車学校など多様な学校が含まれているために、対象に含めなかった結果、朝鮮大学校が対象から外れてしまった。外国大学日本校については、文科省が日本の大学への接続や転学を認めるべく、告示で指定していることから対象としている。

◆移住連コメントー文科省回答を受けて

 朝鮮大学校が実施した調査によれば、学生のアルバイト比率は71.8%である。そのうち、学費のすべて、または多くをアルバイト収入によって支弁している者の割合は28.9%にも上っている。さらに、コロナウイルス感染症拡大の影響で収入が著しく減少した者(無収入になった者も含む)の割合は、94.0%と極めて高い比率となっている。この調査結果は、今回の給付金対象となっている他の学生と同様に、あるいはそれ以上に、朝鮮大学校に通う学生の経済的困難を物語っている。

 文科省は、外国大学日本校については、対象に含める法的な根拠(告示)があるが、各種学校である朝鮮大学校を対象とする法的根拠がないと説明している。しかしながら、2012年、社会福祉士及び介護福祉士法施行規則が改正され、「各種学校(大学入学資格を有するものであって、修業年限4年以上の者に限る)を卒業した者」が加えられたことで、朝鮮大学校卒業生に対しても、社会福祉士及び介護福祉士の受験資格が認められることになった。これに倣えば、各種学校である朝鮮大学校を、給付対象に加えることは可能である。さらに、京都大学大学院が朝鮮大学校卒の受験を認めたことをうけ、1999年8月、学校教育法施行規則が改正され、外国大学日本校にも大学院入学資格が認められることになっており、朝鮮大学校と外国大学日本校が同様に扱われていることからも、朝鮮大学校のみを対象外とする扱いは、明らかな「差別」である。

 高校無償化、幼保無償化に加えて、新たな差別を生み出すことは許されない。

 

 

本要請に関する報道

(6月6日・朝日)優秀でないと支援されない? 成績要件が留学生に波紋

https://www.asahi.com/articles/ASN6645WLN5YULZU01J.html?iref=pc_ss_date

 

(6月4日・朝日)給付金、留学生の憤り 日本人にない「成績優秀」要件、なぜ 「生活難と成績、別の問題」

https://www.asahi.com/articles/DA3S14500768.html?iref=pc_ss_date

 

(5月30日・BuzzFeed)このままでは勉強が続けられない」3人の学生が語ったこと。困窮学生への緊急給付金のあり方とは

https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/gakusei-kyufukin-students-voice

 
(5月30日・朝鮮新報)〈学生支援緊急給付金問題〉“皆が共通して困難な時期になぜ?”/会見で指摘された3つの問題点https://www.chosonsinbo.com/jp/2020/05/hj200530-1/

 

(5月30日・神奈川)困窮学生への国支援策 留学生らが成績要件撤回など求める
https://www.kanaloco.jp/article/entry-368073.html


(5月30日・西日本)「困窮留学生全てに給付金を」 成績要件撤廃求め5団体が署名提出
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/612601/


(5月29日・毎日)「留学生のみ成績条件は問題」 困窮学生「給付金」で人権団体が文科省に改善要請
https://mainichi.jp/articles/20200529/k00/00m/040/275000c


(5月29日・共同通信)「留学生だけ「成績上位」撤回を 5万5千筆の署名提出」
https://news.yahoo.co.jp/articles/10481504c8a211c9d185fdb59068a067c98fe982

 

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