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2021.10.28 ブログ

#困窮する移民・難民に医療を - 解説記事①「食べられない・家賃払えない・病院に行けない「最貧困」の仮放免者」(仮放免)

いまの日本社会には、健康保険がないために必要な医療が受けられず、悲惨な状況に置かれている移民・難民がたくさん存在し、こうした人たちを支える医療機関やNGOの負担は大きく、コロナ禍で限界に達しています。
こうした状況をなんとかしなければという思いのもと、医療関係者や支援者が集まり、オンライン署名「【お金のない人から、高額な医療費をとらないで!】 コロナ禍で苦しむ移民・難民の命を守る制度を整えてください」を開始しました。

このキャンペーンに関連して、【#困窮する移民・難民に医療を】解説記事シリーズを順次公開いたします。
第一回は仮放免「食べられない・家賃払えない・病院に行けない「最貧困」の仮放免者」です。


食べられない・家賃払えない・病院に行けない「最貧困」の仮放免者

 この記事では、

①現在、在留資格の有無にかかわらず外国人の困窮化が進んでいること

②その中でも、仮放免者は「最貧困」の状況に追い込まれており、死の危険にあること

③そうした仮放免者の命と生活を守るために今すべきこと

を指摘します。



①在留資格の有無にかかわらず外国人の困窮化が進んでいる

本論に入る前に簡単に日本に暮らす外国人の状況を確認します。

2020年12月現在、日本に暮らす外国人(総在留外国人)は292万8940人です。これは日本の総人口の2.3%です。この総在留外国人は在留資格を持つ外国人ですが、在留資格のない外国人である非正規滞在者は2021年1月1日現在で8万2868人、後ほどお話しする仮放免者は2020年12月末現在で3061人います。このほかに入管収容者などもいますが正確な数字はわかりません。

①在留資格の有無にかかわらず外国人の困窮化が進んでいる


このように日本には300万人程度の外国人が暮らしていますが、現在、これら外国人の困窮化が拡大しています。

2021年5月3日と5日、生活困窮者支援団体が外国人支援団体とともに東京都内の教会で開催した「ゴールデンウィーク大人食堂」には2日間で約150人もの外国人の相談がありました。こうした相談会では今まで見たことのない数の外国人が押し寄せている状況でした。
外国人を医療や福祉から排除する日本の公的制度~コロナ禍で困窮に拍車(論座RONZA)

 

また、9月13日付のNHKのニュースで北海道滝川市で外国人向けの食料配布会が行われたという報道がありました。さらに、ある自治体では、失業や収入減で食料や生活必需品が不足している困窮外国人に対し、食料品や日用品を無料で配付する支援が行われています。

筆者自身すべてを網羅しているわけではありませんが、このような困窮外国人向けの食料支援は報道されるもの・されないもの含めて全国で行われています。ニーズがないところで食料支援は行われません。つまり、ここからは全国的に困窮外国人が増加していることがわかります。

②死の危険にある「最貧困」の仮放免者

◇自殺を勧められる仮放免者

こうした状況下において、命と生活の存続ができなくなり、今まさに死の危険にある人たちがいます。それは「仮放免者」です。

先日、南アジア出身の仮放免男性に会いました。ご自宅に行きました。土足で上がってくださいと言われました。ボロボロで住むことが難しくなりつつある家。お湯は出ないから寒いとのことでした。

家賃を滞納している。先日、大家さんが来て、部屋にある衣服を全部道路に投げ出されてしまった。「家賃払わないと殺すぞ」と言われた。咳が止まらない。苦しい。めまいがする。吐いてしまう。手が震える。体全部が痛い。食べ物はない。水も飲めない日が続いた。いつ、電気ガス水道が止まるかわからない。

9月末、母国の兄が亡くなった。今まで沢山サポートしてくれた。今は誰からの援助もない。役所に行ったが助けてくれなかった。病院に行ったが追い払われてしまった。同国人にも頼ってみた。返せる見込みのない借金は貸してくれない。食べ物も飲み物ももらえなかった。「自殺するのが一番楽な方法だ」と言われた。兄と一緒に死んでしまいたい。何日間も寝たきりになって動けなかった。

大学在学中に反政府デモをした。国には帰れない。怖い。入管はいつも「帰れ」という。日本ではIT技術者として働いてきた。お金がない今もパソコンだけは触るようにしている。技術を忘れないために。「日本語も好き」だから日本語の勉強も欠かさない。

彼は最初はポツポツと話していましたが、兄の死の話から嗚咽が止まらなくなりました。亡くなった兄との想い出も語ってくれました。食べるものや水すら飲めない。家賃は払えず大家から「殺す」と脅迫される。働きたくても働けない。体が辛くて病院に行っても追い返される。役所に行っても。同国人から援助を受けられず、むしろ自殺を勧められる。

これが「仮放免者」の現実です。そして、多くの仮放免者がこのような状況に立たされています

◇生活保護もなにも受けられない仮放免者

「仮放免者」とは、入管法違反による収容者で、一時的に収容が停止され、身柄の拘束を仮に解かれている人たちのことです。その多くは、様々な理由で本国からの保護を受けられなかったり帰国することができない人たちです。





仮放免者は働くことが認められていません。また、国民健康保険に加入することができません。生活保護を受けることもできません。その他生活を保障するような支援制度を受けることもできません。これは、食べられない・家賃払えない・病院に行けないということを意味しています。つまり、生きていけないということです。

ただ、そういった中でも仮放免者の多くは親族や知人などの援助を受けて辛うじてなんとか生活をしていました。しかし、それはコロナによって崩壊しつつあります。先ほどお伝えしたように外国人の多くが困窮化することで、仮放免者は援助を受けられなくなったのです。

ある母子家庭の仮放免家族は義母から援助を受け生活していましたが、義母の仕事が減り、生活ができなくなってしまいました。食事を1日1回に制限している仮放免者もいます。心臓の手術をしないといけないのにお金がないから我慢している仮放免者もいます。

こうした状況は困窮外国人支援団体の北関東医療相談会のデータからも明らかです。医療費・家賃支援費は2021年4月~9月の6か月間だけで前年度支出額に達しています。生活支援費も前年度を上回る見込みです。仮放免者の生活は破綻しつつあります

③仮放免者の命と生活を守るために今すべきこと


仮放免者は今まさに命の危機に直面しています。今すぐに仮放免者の命と生活を守る対策をしなければなりません。そのための対策は多々ありますが、私たちは、その中でも特に命と生活の存続に不可欠な医療についての対策を国に求めます。医療を受けられず苦しみ、亡くなってしまった仮放免者たちを多く見てきたからです。

カメルーン人で仮放免者だったマイさんは末期がんという状況でホームレス状態となり、亡くなっていきました。早い段階で適切な医療を受けられたら助かった命だったのではないか。そう思うと、悔しくてなりません。

死の直前「漢字勉強したい」カメルーン出身者は救えなかったのか(毎日新聞)

 

そうした悲しいことを二度と起きないようにするために、国は今すぐに以下の対応をすべきです。

③仮放免者の命と生活を守るために今すべきこと

 

困窮する仮放免者の命と生活を守るために、署名のご協力をよろしくお願いいたします。

 

※この記事は2021年10月7日に行われた記者レクでの長澤正隆氏報告、その他資料、取材をもとに大澤優真(署名活動事務局・北関東医療相談会)が作成しました。

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