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2020.07.22 ブログ

【新型コロナ関連】チャーター便搭乗拒否の経験から(Mネット2020年6月号)

移住連の機関誌「Mネット」10月号に、今年3月に大学院の研究で訪れていた南米ペルーで国境が封鎖され、日本に帰れなくなるという事態に遭遇されたGianco Perez Velascoさんよりご寄稿いただきました。転載します。

 Giancoさんが体験されたチャーター便搭乗拒否については、西日本新聞社などでも報じられました。

「日本に帰れない」日系学生、特別便対象外にSOS ペルー国境封鎖(2020年3月26日 西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/595299/

「国境閉鎖で「帰れない」日系学生に特別便搭乗を許可 政府が方針転換」

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/596230/


チャーター便搭乗拒否の経験から


早稲田大学大学院経済学研究科 Gianco Perez Velasco

(チャーター便搭乗時に執筆者撮影。ペルーの軍用空港にて)


 私はペルーで生まれ、5歳から日本に移住した日系三世です。2020年4月から早稲田の大学院に所属しており、同年3月2日から1ヶ月間、大学院研究の一貫でペルー・リマ市内の小学校で社会実験をするために研究チームでペルーを訪れました。ところが、ペルーでは3月15日に緊急事態宣言が発令され、3月16日から国境が封鎖されることになりました。宣言後直ちに帰国便を手配しようとしましたが、空港では全てのチケットが売り切れ、高額なチケットが非公式に転売されていたので国境封鎖前の帰国を断念しました。
 3月23日には、日本政府が側面支援する形で台湾のチャーター便(リマ→マイアミ)の手配が進んでいるとの連絡が在ペルー日本国大使館からありました。このチャーター便の搭乗募集の段階では国籍によって搭乗制限をする文言が一切ありませんでした。そのた
め私も搭乗できるかどうかを電話で確認したところ、「外国籍の方の搭乗については未定で乗れる保証はできない」との回答を得ました。搭乗保証ができないのに、事前にマイアミ→東京のフライトの各自購入を求めるので、台湾チャーター便の利用を諦めました。
 ところが、2日後の3月25日に日本の民間旅行代理店主催のチャーター便の手配が進んでいるとの連絡がありましたが、搭乗条件は次のようになっていました。
 “ 原則、日本人を対象とさせていただいておりますが、外国籍の方であっても、日本人のご家族に限り、その日本人の方と一緒であれば対象となる由です”
 家族全員が日本にいる私は搭乗できるか疑問だったので電話で確認したところ、「各国のチャーター便には大儀がありまして、今回もそれに基づいて定められた条件なのでご了承ください」との回答を得ました。その後、空席があった場合でも搭乗させてもらうことはできないか打診しても、定められた条件を満たさなければ搭乗できないとの一点張りでした。
 この2日間で正確に何があったか定かではありませんが、日本の外務省に問い合わせたところ、数日間で同様の問合せ(国籍は有さないが搭乗が可能かどうか)があったため、一律日本国籍保有者の搭乗に限定している旨の回答を得ました。考えられることは、①
私のように外国籍だが日本に生活基盤のある方の数が日本政府の想定を超えたために搭乗者の国籍を制限したか、②そもそもこのような立場の人たちがいることを全く想定していなかったか。自国民を優先することは理解できても、空席があっても国籍の有無を理由に搭乗を拒否することは理不尽かつ非人道的であると思います。
 再度交渉した3月27日の電話での回答は、「ペルー政府がペルー人の出国を禁止しているため、日本政府の方針如何に関わらず搭乗ができません」でした。この理由だとペルー国籍である私はペルー政府の意向で搭乗できないので、日本国大使館への要求は無駄
骨になると思い、ペルーでの長期滞在を覚悟しました。
 ところが同日の夕方に、国籍を理由にチャーター便の搭乗を断っていた方の搭乗許可を知らせるメールをいただきました。日本政府がペルー政府に働きかけたのか子細は定かではないのですが、3月29 日にメキシコ経由でなんとか帰国が実現しました。
 結果的にチャーター便への搭乗を許可していただいた在ペルー日本国大使館には感謝します。しかし、私が今回のケースで搭乗できたからといって、緊急時において日本政府の支援を仰げない外国籍の方の問題がなくなるわけではありません。残念ながら搭乗許可を
貰えた私と異なり、チャーター便への搭乗を最後まで拒否された日本に生活基盤のある外国籍の方は何人もいました。このままでは次の有事の際には国籍の問題で支援対象から外れてしまう人がでてきてしまいます。そうならないためにも、せめて日本人同様に納税の
義務を負っている日本に生活基盤がある方には緊急時において日本政府の支援を受けられる体制を整えて欲しいと切に願っています。



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