2020年2月26日に「逃亡移民労働者」が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。この人は介護労働者として仕事をしており、お世話をしていた高齢女性から感染しました。新型コロナウイルスによって社会全体に不安が広がっている中、個人の住宅内で働く外国人介護労働者が就業中に直面する危険は、その労働の価値を下げるだけでなく、移民労働者の「逃亡」状態に社会的な関心を集中させることにつながります。
台湾ではブルーカラーの移民労働者には実質的に転職の自由がありません。そのことにより、移民労働者がブローカーや雇用者から過重な作業負担や給料からの不当な控除、違法な「仕事紹介料」を請求されるなどの問題ある扱いを受け、その際に適切な救済や公正
な扱いが受けられない場合には、「逃げる」という選択しか残されていないのです。そのことは、在留期限を超過して非正規滞在者、つまり非正規移民労働者となってしまうことにつながります。こうした状況において政府が「捜査と収容の強化」や「逃亡移民労働者
の通報を奨励」といった方策をとって、もっと多くの非正規移民労働者を「逮捕」しようとすれば、「木の梢から魚を探す」だけではなく、すでに社会の低層にいるこうした人々を、もっと奥底の誰も見つけることができないようなところへ押しやってしまうとTIWA は考えています。そして、これはウィルスを更に拡散することにもつながります。
3月4日、TIWAは関連する団体を結集させ、行政院の前で記者会見を開きました3)。私たちは台湾政府に対して、もし政府が新型コロナウイルスの拡散を効率的に防ぎたいのであれば、システムの欠陥によって非正規へと追いやられている移民労働者がいることの問題に対処しなければならない、と訴えました。「移民労働者を排斥するな、処罰するな、彼/彼女らの法的地位回復を」。これが私たちの主張です。
また、私たちは以下のアピールも行いました。「移民労働者への規制を緩和し、罰金や再入国の禁止などを廃止し、強制送還を停止し、非正規移民労働者の法的地位を回復させることによってのみ、新型コロナウィルスの大規模感染防止の取り組みの射程に非正規
労働者を連れ戻すことができる。」
私たちの要求では法的地位の回復というのが最も重要な点です。台湾の移民局による「罰金の減額」、「再入国が禁止される期間の短縮」といった取り組みとは別に、労働省は「就業サービス法」と「審査基準」を緩和し、「非正規移民労働者」に「法的地位を取り
戻す」機会を与えるべきです。この方法によってのみ、非正規移民労働者を社会の陰から連れ戻すことができます。
その他にも、非正規移民労働者だけでなく、こうした労働者を雇用する「違法雇用者」も処罰されないようにすべきです。そうすることで、処罰への恐怖を理由に違法雇用者が新型コロナウイルスに感染した非正規移民労働者を隠そうとすることを防止できます。
もし私たちが本当に「排斥しない、処罰しない、法的地位回復」政策を実現した場合、非正規移民労働者に対して新型ウィルス感染防止のための情報を得るよう一定の呼び掛けをすることができます。このことは、感染が疑われる症状のある非正規移民労働者を迅
速に病院に行かせるよう「違法雇用者」に呼び掛けることができるので、更に包括的な感染症蔓延防止策につながります。これらの取り組みによって、非正規移民労働者が感染症流行の原因としてスケープゴート化されることを阻止することができるのです。
(翻訳:崔洙連・安藤 真起子)
1)
TIWA は、台湾の移民エンパワーメントネットワーク(the Migrant Empowerment Network in Taiwan、以下MENT)構成団体の一つです。
2)
https://reurl.cc/X6elm33)
https://bit.ly/33rXQj0