FacebookTwitter

お知らせNews

2024.04.22 声明・意見

【パブコメ】「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案概要」について意見を提出いたしました。

移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案概要」に関する意見募集にあたり、2024年4月21日付で以下のパブリックコメントを提出いたしました。

●意見募集(パブコメ)
「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案概要」等に係る意見募集について



「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する
法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案概要等」に対する意見 

                             特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

 私たち移住連は、日本で暮らす移民・難民・移民ルーツをもつ人びととその家族の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会を目指す個人、団体による全国ネットワーク組織です。 
 標題の件について、以下のとおり意見を述べます。

1. 監理措置について

(1)監理措置について、支援者や弁護士は、信頼関係や守秘義務の観点からの懸念を表明してきました。また、これまでに仮放免の保証人を担ってきた多くの弁護士や支援者からは、改定法の監理人にはなれないという声が寄せられています。改定法施行後、最も懸念されるのは、空港で庇護を求めたものの、一時庇護も仮滞在も認められない難民申請者です。改定法のもとでは、仮放免は限定的にしか用いられず、監理人が見つからなければ監理措置に付すことができないため、収容の可能性が逆に高まります。とりわけ、改定法は、空港で庇護を求め、日本に身寄りもいない、もっとも脆弱な難民申請者にとって、現状より身体拘束の点で悪化をすることが強く懸念されています。しかしながら、本政令省令案では、その手当は全くなされていません。この点についての対応が必要です。

(2)規則案は、「行動の範囲は、主任審査官が特別の事由があると認めて別に定めた場合を除き、指定された住居の属する都道府県の区域内とする」としています。しかしながら法文上、監理措置は、既に逃亡のおそれの程度を考慮して収容しないことが相当である場合に付されるものであることからすれば、(改定法44条の2等)、過剰な制限です。とりわけ、難民申請者については、難民条約が、「締約国は、1の規定に該当する難民の移動に対し、必要な制限以外の制限を課してはならず、また、この制限は、当該難民の当該締約国における滞在が合法的なものとなるまでの間または当該難民が他の国への入国許可を得るまでの間に限って課することができる。」としていることからすると(難民条約31条)、改定法における制限は必要な制限以外のものであり、条約に違反する疑いの強いものです。したがって、この文言を削除し、制限の必要性が認められる場合に制限をするように改めてください(特別放免(法43条1項、)、仮放免(法49条2項等)も一律に都道府県内に移動制限をかけるものであることからすると同様の問題があります)。

(3)監理人による搾取を防ぐための措置がとられていない点を、強く懸念します。監理措置の取消しを恐れる被監理者からすれば、監理人による被監理者への搾取や不正行為に対して声を上げることは困難です。技能実習制度においても、多額の借金を抱え、実習先の転籍もできずに逃げ場を失った技能実習生が、本来は技能実習生の保護を責務とする監理団体によって不当に搾取される例が後をたちません。監理人による搾取を防ぐために、最低限、課される行動規範を提示し、その遵守を監理人選定にあたっての要件とすることが必要です。また、行動規範への違反により監理人が不在となる場合であっても、直ちに監理措置を取り消すことなく、新たな監理人が選定されるまでは収容を行わないことを、規則で明確にするべきです。

(4)報酬を受ける許可申請をするためには、「別記 51 条の 8 様式もしくは同 76号の 8様式による申請書並びに当該活動に従事することが自らの生計を維持するために必要かつ相当であること及び当該活動により受ける報酬の額が自らの生計の維持に必要な範囲内であることを証する資料」の提出が義務付けられています。
 いうまでもなく、人が生計を維持するためには、自ら働き対価を得る必要があります。したがって、本条による許可申請がある場合は、家族や支援者による十分な援助が将来に亘って確保される見通しがあるか、あるいは仕事をしなくても生計を維持するに足りる十分な資力があるような場合を除いては、「生計を維持するため必要」として、退去強制令書が発付されているか否かを問わず、申請を直ちに許可すべきです。
 報酬を受ける活動許可の申請書には、金銭援助や住居の賃貸借契約の有無を尋ねる質問が設けられています。就労が認められず、やむを得ず支援に頼らざるを得ない状況が作り出されている中で、現時点での金銭援助の有無をもって、活動の許否判断を行うことは不適切です。また、住居についても、生活に困窮しているが故に、支援団体の住居や友人の家に間借りをして、賃貸借契約を結ばずに生活をしているケースが多くあります。賃貸借契約の有無をもって、報酬を受ける活動許可の許否判断を行うべきではありません。
 また、報酬を得る活動の許可申請における審査の遅れは、生計の維持に対する決定的なダメージを与えるため、申請があったら直ちに許可し、後に許可を認めるのが適当でないと認めるときには本条4 項による取消をすることで対応するという運用をするべきです。

2. 送還停止効について

  送還停止効の例外の対象者のうち、「第61条の2第1項または第2項の申請に際し、難民の認定又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者を除く」とされていますが、法文上、相当の理由の判断がいつどのようにされるのか、申請者はどのようにその判断を知ることができるのか、判断がされるまでは送還停止効は継続するのかなどが全く不明です。この点は、規則でも全く明らかになっていません。ノンルフールマン原則という国際慣習法であり、難民条約にも明示的に記載される国際法上の義務に関わり、実際に、難民申請者の生命身体の自由という重要な法益にかかわる問題であることからすれば、すべてを運用に委ねるべきではなく、少なくとも規則で明確にすべきです。
  特に、「相当の理由がある資料」について、形式に定めが無いことを明確にするとともに、提出資料準備のための十分な期間を設定する必要があります。また、「相当の理由がある資料」に該当しないとの判断は、面接を行った上で行わなければなりません。さらに、送還停止効の例外規定の適用に係る告知を行い、仮に送還を実施する場合であっても、裁判を受ける権利を保障する形で送還予定時期を定めることを明確にするべきです。

3. 本国情勢による人道配慮の扱いについて

  改定法により、難民不認定処分において行われてきた人道配慮の判断は、条文上、難民認定手続においてはなされないこととなります。しかしながら、人道配慮のうち、本国情勢に鑑みて出される判断は、難民条約上の5つの理由以外の迫害の理由でなされることはほとんどありません。狭隘であると批判されてきた、日本政府が解釈する、迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖があると認められない場合に、いわば難民と認定する代わりに用いられてきたものです。したがって、5つの理由を不要とする以外は難民条約上の難民と定義を同じくする補完的保護がその代替となることはありません。また、今後、難民申請者についても人道配慮に関しては退去強制手続を担う部門が行うこととなれば、婚姻や家族形成など日本における事情を元に人道配慮を得る場合と異なり、同部門においてはその判断の専門性がまったくなく、適切な判断がなされないことも懸念されます。さらに、現在の難民認定申請者の多くは、難民認定申請者であることに基づき特定活動の在留資格を有していますが、改定法及び本政令及び省令案により、これらの難民申請者が難民不認定処分を受けた場合に直ちに人道配慮による在留の判断が受けられるのか、それともいったん退去強制手続に載せられた結果でなければ人道配慮が受けられないのか(後者であれば、改定法により、多くの庇護を求める者の状況が悪化することになります)、不明であり、早急に明確にすべきです。

4. 旅券発給申請等命令について

 改定法において、退去強制令書の発付を受けた者に対して「送還に必要がある場合」に旅券の発給申請等の行為を命じることができる規定が新たに設けられました(法52条12項)。法で「その他送還するために必要な行為として法務省令で定める行為」と規則に委任されている内容として、規則案48条の2・1項目1号から8号までの行為が規定されていますが、法72条5号により違反には刑事罰が定められていることからすると、このように多様な行為を規則により規定するのは、罪刑法定主義の観点から妥当ではありません。
 さらに、本命令の対象に、難民申請中の者が含まれている点を強く懸念します。出身国政府からの迫害をおそれる難民申請者にとって、在日大使館はまさに迫害の主体にあたります。大使館に対する情報提供や出頭などが命じられることにより、難民申請者が日本に逃れることで何とか確保した身の安全が脅かされることとなります。行為の内容を限定するとともに、命令の対象に難民申請者を含まないことを規則に明記すべきです。

5. 仮放免の対象について

 改定法において、仮放免の要件に関する規定が新たに設けられ、「健康上、人道上その他これらに準ずる理由によりその収容を一時的に解除することを相当と認めるとき」に仮放免が認められることとなりました。現行制度と比べて仮放免の対象が限定されることを懸念します。収容を継続するべきではない健康上の理由が少しでも認められれば、直ちに仮放免を認めるべきです。また、出身国での経験や、年齢・ジェンダーアイデンティティ・セクシュアリティ・家族といった人道上の理由を少しでも有する場合は、仮放免許可を積極的に認めるべきです。

6. 被収容者以外の者に対する制止等の措置について

 改定法55条の51(制止等の措置)第2項で「入国警備官は、被収容者以外の者が次の各号のいずれかに該当する場合には、合理的に必要と判断される限度で、その行為を制止し、その行為をするものを拘束し、その他その行為を制止するため必要な措置をとることができる。」とし、一から四を列挙し、第3項で、「前二項の措置に必要な警備用具については、法務省令で定める。」とし、今回法施行規則案第50条の26において、警棒、警じょう、さすまた、盾の警備用具を指定しています。
 従来、被収容者以外の者が職員の制止に従わない、あるいは不退去の場合は、警察による対応がなされるというのが一般的な理解でした。今後警棒、警じょう、さすまた、盾の警備用具まで使って入国警備官が制止等を行うことは、被収容者の健康や人権擁護を目的とする面会活動や申し入れ活動を行う人々に対する威圧が目的かとも受け取られかねず、被収容者のみならず面会活動者の人権も侵害する恐れもあり、貴重には極めて抑制的な対応が求められるべきです。

7. 在留特別許可について

 改定法50条で在留特別許可の申請については、法に手続に関する具体的な規定がなく、手続については全面的に施行規則に委任されているものの、施行規則案によってもほとんど具体的手続が明らかになっておらず、手続保障上、問題があります。
 在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請の申請書では、希望する在留資格や、これと関連のある情報を記載する欄があり、施行規則別表第三において提出を求められる資料が示されていますが、在留特別許可申請書(別記61号の4様式)は、現行法の異議申出書とほぼ同様の書式で、申請理由を自由記述方式で記載するのみであり、提出を求められる資料についても特に規定がありません。これでは、申請者は、弁護士や行政書士といった専門家の援助を受けない限り、どのような主張立証をすべきであるのかが分からず、十分な主張立証ができないおそれがあります。
 改定法では、退去強制事由該当性を争わない場合、口頭審理が実施されないことになっています。しかし、現行法下の実務では、退去強制事由の存否のみならず、在留特別許可の許否の判断に関係する事情についても聴取が行われ、当事者にとって重要な主張立証の場となっています。規則案には口頭でのインタビューの規定がありませんが、規定をもうけるべきです。


8. 上陸拒否期間の短縮について

 改定法52条5項の上陸拒否期間の短縮について、規則案47条の3に手続が規定されていますが、どのような場合に許可されうるのかが、法によっても規則案によっても示されていません。上陸拒否期間の短縮申請は自費出国許可後になされることになっているため(法52条5項)、許可されうる場合について情報が提供されなければ、許可の見込みがあれば自費出国を検討できる人にも利用されなくなります。

以上

お知らせ一覧へ

入会について

寄付をする