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【声明】外国籍者の医療保険加入をめぐる報道と調査についての抗議声明

2018年8月3日

外国籍者の医療保険加入をめぐる報道と調査についての抗議声明PDF版

 昨今、外国籍者の医療保険(健康保険、国民健康保険など)の加入に関して、日本の医療保険制度に「ただ乗り」し、「日本の保険証が狙われる」といった、外国籍者への差別や偏見を助長するような、事実に反した内容の報道が相次いでいます[i]

  1. 健康保険の「扶養」条件について

 報道では、日本で医療を受ける外国籍者の多くが、健康保険制度に「ただ乗り」しているような印象を与える内容を報じています。
 しかし、この扶養は、健康保険制度に規定されたものであり、保険料を支払っているすべての人が利用できる制度です。日本に暮らす外国籍者は、日本社会を支える労働者・地域の一員であり、日本人と同様に健康保険を含む医療保険制度に加入し、保険料を支払う義務があります。外国籍者は実際に保険料を支払って、資格を取得しているため、日本人と同様にその制度を利用する権利を持っています。
 報道では、健康保険料を払ったことがない人が健康保険制度を利用することはおかしいという指摘がされています。しかし、それは、日本の専業主婦(主夫)をはじめ、夫(妻)や子の扶養に入り健康保険を利用している場合と何ら違いはありません。また日本人でも海外で暮らし、健康保険料を払っていなかったとしても、病気や怪我で日本に帰国し、家族の扶養に入り、その健康保険を用いて治療を行う場合もあります。この場合、扶養されている者の健康保険料は、被保険者が支払っている訳であり、「ただ乗り」ではありません。このような制度の性格を無視し、外国籍者のみがあたかも保険料を負担せずに、健康保険制度を悪用しているかのようなイメージを作り出す報道は差別であり、外国籍者が日本の保険制度に「ただ乗り」しているというのは、明らかな誤りです。

  1. 外国籍者の国民健康保険利用に関して

 厚生労働省は、昨年、一部偏重報道をきっかけに、通知(平成29(2017)年3月13日保国発第0313第1号)を発し、2018年3月に自治体を通して実施された在日外国人の国民健康保険(国保)利用に関する実態調査を行いました。
 この調査で明らかとなったのは、2016年11月から2017年10月の1年間における外国人レセプト総数14,897,134件のうち、国保資格取得日から6ヶ月以内に80万円以上の高額な治療を受けたのは1,597件(総数の0.01%)であり、そのうち「不正な在留資格である可能性が残る」とされたのは2名だけでした。つまり非常に少数の例外を除けば、国民健康保険は適正に運用されていると言えます。厚生労働省自身も、「在留外国人不適正事案の実態把握を行ったところ、その蓋然性があると考えられる事例は、ほぼ確認されなかった 」と述べています。(厚生労働省「平成29(2017)年12月27日保国発第1227第1号」通知
 しかし、厚生労働省は、同じ通知であらためて「在留外国人の国民健康保険適用の不適正事案に関する通知制度」の試行的運用を全国の自治体に求め、現在、実施されています。具体的には、市町村に「外国人被保険者が資格取得から1年以内に国民健康保険限度額適用認定証の交付申請を行った場合(その他高額な医療を受ける蓋然性が高いと市町村が判断した場合)に当該外国人被保険者について…情報等の聞取りを行う…又は資料等から確認する」こととあわせて、「外国人被保険者が在留資格の本来活動を行っていない可能性があると考えられる場合」には、法務省入国管理局にその旨を通知するよう求めています[ii]
 しかし、こうした在留資格の判断は本来、出入国管理及び難民認定法(入管法)にもとづいて法務省入国管理局が行う業務です。国保窓口での在留資格に関わる調査を求めることは、所管外の国保担当の職員に自らの権限と職務を逸脱して、外国籍者の個人情報の聞取りを強いることになっています。また、国保担当の職員の多くは、入管法や在留資格に関する正確な知識を有しておらず、そうした職員が独自に「疑わしい」と判断した外国籍者に聞取りを行うことは、外国籍被保険者への差別や偏見を助長するばかりか、国保利用にたいする萎縮効果を生むおそれがあります。
 私たち移住連は、外国籍者の医療保険利用に関する差別的取り扱いおよび差別報道に対し、強く抗議し、以下のように要請します。

(1) 報道機関は、外国人の保険利用に関わるこれまでの報道を検証し、事実にもとづかない認識や報道内容については誤りを認め、撤回・謝罪すること。また事実にもとづかない報道が、差別と排外意識を煽り、外国籍者・外国にルーツをもつ人々の権利と尊厳を脅かすとともに、社会、人々の分断につながりかねないことを十分認識し、そうした報道を行わないこと。
(2) 厚生労働省および法務省は、「在留外国人の国民健康保険適用の不適正事案に関する通知制度」の試行的運用を直ちに取りやめること。

以上

特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク

[i] 『SAPIO』「抜け穴だらけの健康保険が中国人に乱用されている」(2017年11-12月号)、『週刊現代』「日本の医療費が中国人に食い物にされている」(2018年5月29日)、同「中国人が中国で子どもを産んでなぜ日本が42万円も払うのか」(2018年6月2日)、NHK『クローズアップ現代+』「日本の保険証が狙われる~外国人急増の陰で~」(2018年7月23日)、その他日経新聞、朝日新聞、毎日新聞など。NHK『クローズアップ現代+』の特集内容の問題点については、【意見書】「NHK『クローズアップ現代+』「日本の保険証が狙われる~外国人急増の陰で~」(2018年7月23日放映)について」をご覧ください。

[ii] なお本年7月24日に「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」によって示された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(案)」においても、「医療保険の不適切使用の防止」策として「市町村と地方入国管理局が連携し…適正化に向けた新たな取組を進める」ことが盛り込まれており、現在の試行的運用が、「不適切使用」についての明確な根拠も示されないまま恒常化されることも危惧されます。

 

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