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「技能実習制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)」に対する見解

私たち移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、この社会で暮らし、働く移住労働者とその家族の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会を目指す個人、団体による全国ネットワークです。

2014年6月に法務省「第6次出入国管理政策懇談会・外国人受入れ制度検討分科会」が法務大臣に「技能実習制度見直しの方向性に関する検討結果(報告)」(「検討結果」)を提出したことに対し、以下のように私たちの見解を示します。今後の施策の策定、法制度改定に活かされるよう求めます。

1.概要

私たちは、制度創設以来、人身売買構造、奴隷労働構造をつくりだしている人権侵害の集積場である技能実習制度を廃止し、別途、正面から国内法と国際規範に則った権利保障に基づく外国人労働者の受入れ制度を構築するよう主張してきた。

しかし、今般の「検討結果」は、この20年以上にわたる事実を直視せず、「検討結果」として、技能実習制度の廃止どころか拡大を謳っている。はなはだ遺憾である。

制度の適正化に関する見直しもされてはいるが、そもそも制度拡充については、制度の適正化と同時並行ではなく、まずは適正化策を実施し、その効果が確認できた後に議論すべきである。すなわち、現行の様々な問題が温存したままでの拡充策は制度の構造的矛盾を拡大させるばかりである。

ただ、個々の適正化策には、私たちのこれまでの批判や提言が活かされているものもある。その実効性が図られるか注視していくとともに、政府は施策の経過と施行、成果につき説明責任を果たしていくべきである。

2.具体的な「見直しの方向性」について

 (1)制度適正化について

1  不適正な監理団体・実習実施機関への対応

不適正な監理団体・実習実施機関に対して、「検討結果」では罰則の整備、団体名等の公表を検討するとしている。

私たちも以前から不適正な団体・機関に対するこうした制裁を主張してきたので、ぜひ実現してほしいと考える。ただ、「不正の程度に応じて団体名等の公表を行う」としており、「程度」の定め方次第では実効性が大きく損なわれる可能性が出てくる。また、「罰則の整備」の実効性がどうなるのかに関連して、具体的にどの法令によりどのようなレベルの罰則が定められるのか、どの政府機関が対応することとなるのか、注視していきたい。

2 他の実習機関への転籍

技能実習生に対する人権侵害行為等への対応の強化策として、「検討結果」では不適正な受入れを行っている実習実施機関から技能実習生が他の機関へ転籍できる「柔軟な仕組み」を構築すべきとしている。そもそも労働者が雇用先を自由に移動できないことが、奴隷労働の温床との批判を受けていることを踏まえ、転籍の決定にあたっては技能実習生自身の希望が最大限尊重されるべきである。

3 賃金水準

上陸基準省令では「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上」と定められているが、実際には中卒初任給よりも低い、最低賃金レベルになっている。これに関して、「検討結果」では「分野や修得状況ごとのより具体的指標を定める」としている。しかし、「具体的指標」が水準的に適切なものとなり、かつ数値的に明確なものとならなければ実効性を図れない。「具体的指標」を定める仕組みをどうするか、さらなる検討が必要である。

4 送出し国との二国間協定の締結

「検討結果」では、「送出し機関の適正化のため」「二国間協定等の締結等による担保を図るべきであ」るとしている。

この点も以前から私たちが主張してきたことであるが、まず、実習生に対する人権侵害の責は、根本的には日本側にあることを指摘したい。「悪質な送出し機関」を含む送出し機関と連携しているのは受入れ機関であり、保証金等の徴収や不当な生活規則の強要について、日本側からの要請あるいは提案に端を発していることに留意すべきであろう。

その上で、今後締結される二国間協定の内容について指摘したい。まず、現場では、日本で裁判等により不払い残業代を請求した場合に、母国での約束違反を理由に違約金を取られるというケースも出ている。すなわち、日本では不法行為とされる保証金や違約金等の定めが、母国では「合法」とされることにより、権利の実現が妨げられる事態が生じている。したがって、送出し機関が入管法令の定める基準を遵守することを二国間協定に定めるとともに、送出し政府も直接責を負う制度への転換を追求すべきである。

また、日本の上陸基準省令の水準を遵守できない送出し機関に対しては、受入れ停止期間に準じて送出し停止期間を適用するよう制度改定すべきである。

 5 技能実習修了後の効果測定

「検討結果」では、「技能実習2号修了時等に、技能評価試験を用いる」としている。

現行制度で技能実習1号から2号への移行条件となっている「技能検定基礎2級」は、そもそも「研修」から「技能実習」に移行するために便宜的な容易な検定として設定されたものであり、しかも合格率は99.7%にもおよび全く形骸化している。私たちは、この点について「技能実習2号の修了時に技能検定3級試験を義務化」するよう提案してきたが、「検討結果」が提案する「技能評価試験」がどのレベルのものとなるのかが問題である。その定め方次第では、実効性が失われかねない。

6 国際研修協力機構(JITCO)による実効性ある監視

「検討結果」では、「行政機関の監視体制の強化が重要」とされているが、行財政事情による制約から「法令に根拠のある組織を創設」するとしている。

これは、実際上JITCOの権限強化・拡大策となってしまう可能性が高い。JITCOは、会費収入が12億円を超え、全収入20億円強の6割程を占めている。会費を納めているのは監理団体や実習実施機関であり、それらに対するサービス機関が監視・監督機能を果たすことは期待できない。JITCOとは全く別個に監視体制を構築すべきである。

(2)制度拡充策について

1 実習期間の延長・再技能実習

「検討結果」では、「優良な監理団体・実習実施機関が受入れる、一定の要件を満たす技能実習生に対して」「2年程度の実習期間の延長又は再技能実習を認める」としている。

しかし、判断基準となる「優良な」の具体的な要件については触れられていない。もし、建設分野での緊急措置のように「不正行為・処分歴が過去5年間にないこと」というレベルなのであれば、とても「優良な」とは言えない。技能実習制度が国際貢献を目指すものと言うならば、そもそも本来の技能実習において「優良な」団体・機関においてのみ受入れを認める制度とすべきではないか。現行制度の不備を、「優良な」というインセンティブで乗り越えようとするのは本末転倒である。

2 受入れ人数の上限の見直し

「検討結果」では、「優良と認められる受入れ機関に対しては、人数枠の増加を認める」としている。

これに対しても、上記①と同様の批判が当てはまる。安易な受入れ人数の増加は、この制度に対する国内需要に応じるものであり、制度自体の問題を拡大するものとして到底受け入れられない。

3 対象職種の拡大

「検討結果」では、「産業実態に即した形での職種の追加を認める」として「自動車整備業、林業、惣菜製造業、介護等のサービス業、店舗運営管理等」を例示している。そして、「それぞれの職種による特性を踏まえた十分な議論が必要である」としている。

しかし、技能実習1号においては、基本的に職種制限がないのであるから、現行制度でも1年間の技能実習は可能である。つまり、対象職種の拡大とは、技能実習2号への移行を可能とし、3年間の技能実習をできるようにしたいということになる。

例示された業種がどのような経緯で掲げられることになったのか明らかではないが、介護に代表されるように、ここでも国内での労働力需要の観点から判断されていることは明らかである。実際、外国人受入れ制度検討分科会でのヒアリングは4回にわたって行われたが、送出し国側からのヒアリングは皆無であり、国際貢献をうたう制度の見直しを行うものとして極めて偏った議論であることは否めない。

3.さいごに

同分科会の「主な議論」として、第一に「技能実習制度の存続の適否」が行われ、廃止についての意見が紹介されている。しかしそれを打ち消すように「開発途上国への国際協力との意義」が主張されている。ここに決定的な事実認識の誤りがある。技能実習制度は、創設以来、その目的に「まやかし」があり、中小零細企業を中心にした労働力補充がその目的であり、実際にそれを担ってきている。その点において、2010年の制度改定は、「まやかし」を明らかにし、結果として排除する役割があった。つまり「国際協力」は研修制度で充分担えるのである。「国際協力」において研修と技能実習の違いは、制度改定以降の数字が如実に物語っている。不十分な事実検証は、はなはだ遺憾である。

ただ、技能実習制度が人権侵害等多くの問題をはらんでいることは、政府や法務省の第6次出入国管理政策懇談会・外国人受入れ制度分科会、そして私たちとの間ではすでに共通認識となっている。また、報告書でも述べられた「外国人労働者受入れに関する根源的な議論と検討」の必要性についても共有している。

したがって、今こそ、政府は技能実習制度を前提とした外国人労働者受入れ政策という議論は止め、技能実習制度を廃止させ、それとは別に透明性を確保した人権・労働者としての権利を十全に確保できる新たな制度設計を速やかに検討すべきである。

 

2014年6月16日

移住労働者と連帯する全国ネットワーク

 

 

 

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