お知らせ

『中日新聞』『東京新聞』(2017年2月11日)「考える広場 この国のかたち 3人の論者に聞く」における上野千鶴子氏の発言にかんする公開質問状

移住連貧困対策プロジェクトでは、中日新聞社及び上野千鶴子氏に下記の通り、公開質問状を送付いたしました。

PDFはこちら→170213 中日新聞上野千鶴子公開質問状

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2017年2月13日

特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

貧困対策プロジェクト

〒110-0005 東京都台東区上野1-12-6  3階 移住連内

TEL:03-3837-2316  FAX:03-3837-2317

 

株式会社 中日新聞社御中

上野千鶴子様

『中日新聞』『東京新聞』(2017年2月11日)「考える広場 この国のかたち 3人の論者に聞く」における上野千鶴子氏の発言にかんする公開質問状

 

 私たち移住連貧困対策プロジェクトは、この社会で暮らし、働く、外国人移住者とその家族の生活と権利を守り、自立への活動を支え、よりよい多民族・多文化共生社会を目指す個人、団体による全国のネットワーク組織・移住連のサブネットワークです。

 2017年2月11日付『中日新聞』『東京新聞』「考える広場 この国のかたち 3人の論者に聞く」における上野千鶴子氏の発言は、事実誤認と偏見にもとづくもので、看過できないものと判断し、以下の公開質問状をお送りします。問題は、上野氏が日本の移民の状況に無知であり、研究者として関連文献に目を通すような基礎的な作業すらしないまま、排外主義的な論理に取り込まれている点にあります。以下、上野発言の問題を質問状の形で指摘していきます。

 

1.「移民受け入れ」に対する無知と偏見について

上野氏は、「移民を入れて活力ある社会をつくる一方、社会的不公正と抑圧と治安悪化に苦しむ国にするのか」と述べています。これは以下の点で事実に反しており、何を根拠にした発言なのでしょうか。

・移民受け入れにより「社会的不公正と抑圧」が増大するのではありません。日本に存在する社会的不公正と抑圧が、移民に集中的にのしかかる可能性はありますが、これは移民を受け入れた結果ではなく因果関係が転倒しています。上野氏は、女性が増えたら、性的マイノリティが増えたら社会的不公正と抑圧が増大するからよくないといわれるのでしょうか。

・治安悪化は、日本において特に頻繁に語られる移民への謬見です。実際には、日本で移民人口が増えたことによる治安悪化はまったく起こっていません。「治安悪化」というデマは、1990年代後半に警察とメディアが広めたもので、上野氏もそれを信じ込んでいるようです。今回の発言は、自らそうしたデマを広めていますが、それについてどうお考えでしょうか。

 

2.労働開国にかじを切ろうとする日本?

 「客観的には、日本は労働開国にかじを切ろうとしたさなかに世界的な排外主義の波にぶつかってしまった」という発言における「労働開国にかじを切ろうとしたさなか」とは、いつ出されたどのような法・制度・政策指針を指していますか。日本では、90年入管法改定において、日系3世とその家族に「定住者」の在留資格を認めたことや、93年に設立された外国人技能実習制度により、すでに実質的な労働開国に踏み切っています。

 一方、「世界的な排外主義の波にぶつかってしまった」と、「排外主義」があたかも日本の外からやってきたかのような発言をされています。日本において、植民地主義支配から続く在日外国人にたいする差別、近年、ネットや路上ではびこっているヘイトスピーチについてどのようにお考えでしょうか。

 なお、移民制限的な政策をとっているかにみえる国であっても、実質的には移民の流入が続くことは、移民研究上の常識です。「世界的な排外主義の波」と移民増加は並行して生じるもので、排外的な風潮により移民流入が制限されるという排外主義の論理を、上野氏は実質的に追認しているのではないでしょうか。

 

3.「日本は『ニッポン・オンリー』の国。単一民族神話が信じられてきた。日本人は多文化共生に耐えられないでしょう」という発言について

・2008年に国会の衆議院及び参議院において「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が全会一致で採択され、日本が「単一民族」であることは公式に否定されましたが、「単一民族神話が信じられてきた」というのはどのような根拠にもとづいているのでしょうか。またこの発言こそが、「単一民族神話」を再生産していますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

・現在日本には230万人を超える外国人移住者が暮らし、先住民や外国にルーツをもつ日本国籍者を含めると、民族的マイノリティはそれ以上になります。「日本は『ニッポン・オンリー』の国」というのは、どのような根拠にもとづいた発言でしょうか。

・このような、外国人移住者の増加や民族的マイノリティの存在の認知を背景に、各地で多文化共生の取り組みがすすめられてきました。2006年には総務省も「地域における多文化共生推進プラン」を策定しています。こうした取り組みには、民族的マイノリティ当事者のみならず「日本人」も多く関わっています。「日本人は多文化共生に耐えられないでしょう」というのは、いかなる根拠にもとづいてなされた発言でしょう か。

 この発言を、上野氏のご専門であるジェンダー問題におきかえると、「日本は女性差別的な国。日本人はフェミニズムには耐えられないでしょう。日本に女性はいない方がいいです」となります。この類推から、上記の発言が、いかにマイノリティの存在を否定したものであるかを理解していただければ幸いです。

 

 以上、質問いたします。

 

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