お知らせ

「第29回社会福祉士国家試験問78についての要望書」を提出しました

移住連では、2017年2月6日付けで、公益財団法人社会福祉振興・試験センター理事長及び、社会福祉士試験委員長宛てに「第29回社会福祉士国家試験問78についての要望書」を提出しました。

要望書のPDF版はこちらをクリックしてください。

第29回社会福祉士国家試験問78についての要望書

公益財団法人社会福祉振興・試験センター 理事長 多久島 耕治 様
社会福祉士試験委員長   坂田 周一 様

〒110-0005
         東京都台東区上野1丁目12-6-3F
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
代表理事 鳥井 一平

日頃は社会福祉の増進にご尽力いただき、こころから感謝申し上げます。

さて、本年1月29日に貴センターが実施されました第29回社会福祉士国家試験の問題について以下の通り疑問がありますので、ご検討の上必要な措置をお取りいただくとともにご見解を回答いただきますようお願い申し上げます。

 

 

本年1月29日実施された第29回社会福祉士国家試験の問78は以下のような問題で、正解を1つ選ぶというものです。

問題78

日本国憲法における社会権を具体化する立法の外国人への適用に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい

1.労働基準法は、就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
2.労働者災害補償保険法は、就労目的での在留資格を有していない外国人労働者に適用されることはない。
3.生活保護法は、就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない。
4.国民年金法は、永住外国人に適用されることはない。
5.国民健康保険法は、永住外国人に適用されることはない。
(注) 永住外国人とは、特別永住者及び法務大臣による許可を得た永住資格者(一般永住者)のことである。

 おそらく正解は3として出題されているものと推測いたしますが、そうであるならその解釈は社会福祉士国家試験として不適切と言わざるを得ません。

 この問題は単に現在の各制度の運用がどのようになっているのかを問うものではなく、「日本国憲法における社会権を具体化する立法の外国人への適用」を問うものです。

この問題では、「就労目的での在留資格で在留する外国人」とは具体的にどのような意味なのか、また、外国人の生活保護に関して、厚生労働省の通知による「適用」と「準用」を区別して使用しているのかなど、あいまいな点が見られますが、「就労目的での在留資格で在留する外国人」という表現が出入国管理及び難民認定法別表1に規定するいくつかの在留資格の外国人という意味で使われているとしたら、確かに現在の生活保護の運用が、原則として出入国管理及び難民認定法別表1に規定する外国人は生活保護の準用の対象としてはいません。(「就労目的での在留資格で在留する外国人」ということが別の意味で使われている場合、すなわち、本人が就労のために来日して定住者の在留資格を得ている場合などを含むのであれば問題はさらに複雑になります。)。しかし、それは現在の運用がそのように行われているということにすぎず、「日本国憲法における社会権の実現」という視点から導き出されるものではありません。

 日本国憲法において社会権は、第25条(生存権)、第26条(教育権)、第27条(労働権)、第28条(労働基本権)などで規定されています。  

 日本国憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」としています。

 1978年(昭和53年)10月4日のマクリーン事件最高裁判決では「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶと解すべき」と判示しています。

また、日本が批准している「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)第9条 、「難民の地位に関する条約」(難民条約)第23条、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)第5条などでは、社会保障や公的扶助に関しても内外人平等原則がうたわれています。

 国民年金法をはじめとして社会福祉・社会保障制度などの社会権は、1982年より国籍条項が削除され外国人にも適用されることとなりましたが、これは日本国憲法の精神に基づく社会権の実現の前進という意味からも当然のことでした。現在では、国民年金や労働法制から外国人を排除するというようなことは考えられません。このように制度自体は改正、前進させていくものであることを前提に、「日本国憲法における社会権を具体化する立法」は考えられなければなりません。この趣旨は、社会権規約第2条においても「この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いる」として明記されています。

 難民条約批准に関して議論された国会においても、国は「昭和25年の制度発足以来、実質的に内外人同じ取り扱いで生活保護を実施いたしてきているわけでございます。去る国際人権規約、今回の難民条約、これにつきましても行政措置、予算上、内国民と同様の待遇をいたしてきておるということで、条約批准に全く支障がないというふうに考えておる次第でございます」(1981年5月27日衆議院法務・外務委員会)と答弁しています。

厚生労働省の昭和29年5月8日付通知(「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」)では、外国人に対しては生活保護は適用できず、単に一方的な行政措置として行っている(「保護の準用」)としており、事務連絡文書(「生活保護手帳別冊問答集」)で「生活保護の準用」の対象となる外国人について取り扱いを示しています。また、最高裁2014年7月18日判決は、外国人が生活保護法の保護の対象となるものではないと判示しています。

 しかし、上記の各条約を履行するためには、各社会権に関する法律に国籍条項があってはならず、生活保護法が日本国民に限るということ自体が認められないものです。国はこれまで外国人に対しても日本人と「同様の取り扱い」をしているとしていますが、決してそうではないことも事実で、生活保護法に国籍条項が残り、在留資格により適用できない外国人があるという取扱いについては生存権保障という日本国憲法の精神や上記の各条約に反するものとして批判が広く存在しているところです。そして、「準用」という形式で生活保護を利用している出入国管理及び難民認定法別表第2以外の在留資格の外国人もいます。

このように日本国憲法や国際人権規約、難民条約、人種差別撤廃条約の規定や裁判例などをふまえて考えると、「日本国憲法における社会権の具体化」という事項と、生活保護法が「就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない」という内容は全く結びつきません。

そして、行政解釈として「準用」であれ生活保護を利用できているにもかかわらず、「就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない」と断定するような出題は、上記外国人への援助可能性があるにもかかわらず援助可能性を否定するものとなるおそれがあり、適切ではありません。

ソーシャルワーカーたる社会福祉士は、単に制度を固定的なものととらえるのではなく、人権を擁護し制度を改善させていくソーシャルアクションも必要な任務であると考えます。そのような意味からも今回の出題には問題があるものと考えます。

  以上述べましたように、今回の社会福祉士国家試験における問78について、正解が3とすることは極めて大きな問題があると考えますので、ご検討の上適切な措置を行っていただきますようお願い申し上げます。

以上

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