お知らせ

「共謀罪に関する意見書」を提出しました

移住連も参加している人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)では、2017年3月8日付けで、自由民主党総裁及び公明党代表宛てに「共謀罪に関する意見書」を提出しました。

要望書のPDF版はこちらをクリックしてください。

 

共謀罪に関する意見書

第1 意見の趣旨  人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)は、「人身取引対策の充実」を名目に共謀罪の新設を促す動きに対し強く抗議するとともに、共謀罪を含む組織犯罪処罰法改正案の閣議決定ならびに国会提出に強く反対する。

第2 意見の理由

1、報道によれば、政府与党は、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案を、近々、閣議決定のうえ、国会に提出する予定という。  法案のうち特に問題なのは、「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画」の罪の創設である(法案6条の2、以下「共謀罪」という)。これは、所定の罪に当たる行為で、組織的犯罪集団(結合関係の基礎としての共同の目的が所定の犯罪を実行することにある団体)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を2人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかにより、その計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画した犯罪の準備行為が行われたときは、自らが何らの準備行為等をしていない場合であっても、所定の刑に処せられる、というものである。同条による対象犯罪は91の法律で規定した277の罪であるが、その中には、人身売買、集団密航者の不法入国、強制労働、臓器売買など、「人身に関する搾取」28罪が含まれている。  政府・与党は、共謀罪創設は国際組織犯罪防止条約(以下「本条約」という)の締結のために必要であり、この立法をしなければ本条約の締結は不可能であるとする。そして、国際組織犯罪防止条約を補足する人身取引議定書(以下「議定書」という)の締結のためには親条約である本条約の締結が必要であることから、議定書締結のためにも共謀罪を創設すべきであるとの説明がなされている[1]

2、しかし、人身取引の根絶に取り組むNGOネットワークとして、JNATIPは、共謀罪を含むこの法案の閣議決定ならびに国会提出に強く反対する。

(1)共謀罪規定の創設は人権侵害の怖れが極めて強い。

 政府は2003年以来3度にわたって共謀罪を創設する法案を国会に提出したが、いずれも廃案になったが、その理由は過度の取り締まりが人権侵害につながる恐れが極めて強いという点にあった。ところが政府与党は、特に2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けたテロ対策と国際組織犯罪防止条約の締結のためには共謀罪が不可欠であるとして、またもや共謀罪の創設を目論んでいる。  JNATIPは、人身取引被害の発生を未然に防止するとともに被害者の人権を守ること、人身取引を根絶することを目的に活動しているNGOネットワークであり、人権の擁護が最終的な目的である。ところが、「議定書の締結」や「人身取引対策の充実」が共謀罪創設の口実の一つとして利用されていることは、非常に遺憾であり、強く抗議する。人権擁護のための活動が別の人権侵害の口実に使われてはならない。

(2)そもそも本条約の締結のために共謀罪の創設は不要である[2]

 日本では、主要な暴力犯罪について、「未遂」以前の「予備」「陰謀」「準備」段階の行為を処罰の対象とする規定が相当程度存在しており、その中には、身の代金目的略取(刑法228条の3)、営利目的等略取及び誘拐(組織的犯罪処罰法6条第2項)等の「予備罪」も含まれている。また、条約法に関するウイーン条約では、条約の趣旨及び目的と両立すれば、留保を付して条約を批准することができるとされているところ(19条c)、前記のとおり、「未遂」以前の「予備」「陰謀」「準備」段階の行為を処罰の対象とする規定が既に相当程度存在しており、本条約5条については一部留保しても、本条約の趣旨及び目的と両立させることができる。  本条約の締結のために共謀罪の創設は不要であり、従ってまた、議定書の締結のためにも共謀罪の創設は不要である。

(3)議定書が締結未了であっても人身取引対策の充実は可能である。

 議定書の締結は、日本政府が人身取引対策を重要課題と考え取り組んでいるという、国際社会に対する意思表明ではある。しかし、議定書が締結未了であっても、政府は既に議定書の内容に沿った人身取引対策を進めている。  即ち、政府は2002年に議定書に署名し、2004年、2009年、2014年に「人身取引対策行動計画」を策定し、2015年からは年次報告書を公表している。いずれにおいても議定書を前提にこれに沿った対策を講じており[3]、政府はこれを国際社会に対し表明している。例えば、2017年1月に国連人権理事会に提出したUPR(国連人権理事会の普遍的・定期的審査)のためのレポートでは、「勧告132.パレルモ議定書に沿って人身取引を定義することも含め,人身取引撲滅のための努力を促進し,児童売買,児童買春及び児童ポルノに関する特別報告者を招待すること」に対し、「1.2014 年12月に再改定された「人身取引対策行動計画2014」をはじめ,我が国が実施する人身取引対策における「人身取引」の定義は,人身取引議定書の定義と全く同じである。」と回答している[4]。  また、政府は、2005年の刑法改正(人身売買罪の創設など)をはじめ複数の法改正を既に終えており、再三にわたり、「議定書の内容については法の抜け穴がないように国内法を整備した」と表明している。つまり、政府によれば、議定書締結のために必要な国内法の整備は既に完了しており、今後、議定書の締結のために新たな立法が必要というわけではないし、議定書の締結により人身取引対策が格別に向上すると述べているわけでもない。JNATIPから見れば、政府の人身取引対策は必ずしも十分ではなく、その改善のため新たな立法や行政施策が必要とされる場合があるが、それは議定書の締結の有無には関わらない。  JNATIPは議定書の早期締結を希望するが、その前提となる本条約の締結のために共謀罪の新設が必要であるとの政府説明には全く同意できない。

(4)政府は、現行法を活用してさらに人身取引対策に取り組むべきである。

 政府は人身取引対策を講じているが、なお十分とは言えない。加害者の取締についていえば、検挙件数は毎年40件程度にとどまり、その中には不起訴処分になる事案も相当数あり、起訴され有罪となった事案もその量刑は被害の重大さを必ずしも反映していない。多数存在する労働搾取事案については、検挙件数自体が限りなくゼロに近い。このように、人身取引についていえば、共謀(計画・準備)行為を捉えて処罰することを考える以前に、未遂・既遂事案でさえ十分に処罰されていないと言わざるを得ない。  また、人身取引とは隠された犯罪であり、被害者が見えにくい。しかし、貧困や格差を背景とする外国人労働者・技能実習生・留学生などの労働搾取、アダルトビデオ出演強要や児童ポルノ・児童買春等による若年者の性搾取、外国人女性や日系フィリピン人母子に対する性搾取・労働搾取など、現在問題になっている社会事象の多くに、人身取引の問題が潜んでいる。日本が国際社会から指摘されている問題は、議定書の締結未了ということ以上に、むしろ、上記のような問題への対策の遅れである。政府はこれらの問題への対処を最優先で行うべきであり、地方自治体、企業、一般市民もまた、これらの問題に関心を持ち、共同で人身取引問題の解決に努力すべきである。  JNATIPは、人身取引問題に長年取り組んできたNGOネットワークとして、微力ながら、今後も政府との対話と市民への働きかけを続けていく所存である。

以上

[1] 例えば朝日新聞2017.3.1朝刊に掲載された椎橋隆幸氏(法制審議会部会の委員)の発言

[2] 2017.2.17付け日弁連「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」など

[3] http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hanzai/kettei/141216j/honbun.pdf

[4] http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000225032.pdf 

 

 

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