お知らせ

衆議院法務委員会において意見陳述を行いました。

衆議院法務委員会「外国人受入れに係る著問題」において、移住連事務局長鳥井一平は、2014年5月23日、参考人として意見陳述を行いました。

 意見陳述原稿 (PDF)  法務委員会議事録(質疑の記録もあります)(衆議院HP)

<意見陳述内容>

1はじめに

移住連の事務局長を務めています鳥井です。移住労働者と連帯す
る全国ネットワーク、略称、移住連といいます。
私たちの移住連は、1980年代からこの日本の労働市場の求め
によって急増した移住労働者とその家族、ニューカマーの人々に対
する差別、人権侵害や労働問題をとりくんできた各地のNGO や労
働団体によって1997年につくられた全国ネットワークです。
また、私自身は個人加盟の労働組合であります全統一労働組合の
オルグを職業としております。
この全統一労働組合で、1991年からニューカマーの組合加入
が相次ぎ、これまで40ヶ国約4,000名以上の様々な国、とり
わけアフリカ、南アジア、中国からの労働者が登録しています。年
間平均で200件ほどの相談を受け、使用者との交渉などを行って
まいりました。また、1993年以来、いわゆる外国人春闘を取り
組んでまいりました。そのような経験と移住連での、全国のNGO
のネットワーク活動を通じた現場からの立場で、意見を申し述べま
す。
なお、私は、私たちのこれまでの活動ついて、昨年6月、ワシン
トンにおいて、アメリカ政府、ケリー国務長官から「TIP`ヒーロー」
賞を授与されております。そのほか私の活動全般については、恐縮
ではありますが、お手元の新聞記事などご参照いただければ幸いで
す。(1993 年春闘時の新聞記事、「ヒーロー」、「東京経済」の記事な
ど)
さて、今回は、「外国人受入れに関する諸問題」についての意見
陳述ということですが、現在のこの日本社会が取り組むべき課題と
して、外国人の受入れを促進するのか、しないのか、受け入れるの
か、受け入れないのか、というよりも、私は、いかにして受け入れ
るのか、という課題に、政治が応えていくべきだと考えています。

2 いかに受け入れてきたか

まず、これまでいかに日本が外国人を受け入れてきたのか、現状
を述べたいと思います。
今、外国人受入れについて活発に議論されていますが、人口減少
・労働力不足に対応するための「外国人材活用」については、20
05から2008年にも政府・政党・経済団体などから相次ぎ提起
されました。また、それを経て2009年には、入管法と住民基本
台帳法が改定され、外国人登録法が廃止されましたことはご案内の
通りです。
2012年7月から始まったこの新しい在留管理制度は、戦後の
日本の外国人政策の中において、歴史的な制度変革でした。
多くの外国人は、日本人と同じように、住民として住民基本台帳
にも登録されるようにもなりました。ただ、他方でこの制度は「外
国人の適正な在留の確保に資するため,(中略)その在留状況を継
続的に把握する」としていますが、その「把握」は、在留外国人に
対する義務を多く履行させ、罰則を強化し、監理することで実行さ
れています。
例えば、引越をした場合の住居地変更届の遅延は14日を超える
と入管法の下での20万円以下の罰金と住基法の下での5万円以下
の過料が二重に科され、90日を超えると在留資格が取り消される
ことになるなど、外国人の「利便性の向上」ではなく、監視の強化
です。
在留外国人は本当に「住民」として、この社会に受け入れられて
いると言えるでしょうか。
また、新しい在留管理制度では日本で暮らす非正規滞在者を、こ
れは子どもであってもですが、構造的に締め出し、見えなくしよう
としました。
「不法滞在者」などとも言われますが、ここでは国連や私たちが
普段使用する「非正規滞在者」と言わさせていただきます。
実は非正規滞在者たちは、今や、地域、学校、職場の大切な一員
となっています。いや、不可欠な存在となっています。1980年
代のいわゆるニューカマーの外国人は、多くは非正規滞在でした。
ところで「不法就労は犯罪の温床」キャンペーンというのがあり
ますが、どこを探しても非正規滞在者の彼・彼女たちが犯罪の温床
になったという統計データは存在しません。それどころか、30年
以上に渡って、日本の経済活動を下支えしています。企業活動を活
性化させ、私たちの日々の生活を支えてきました。ある者は、金属
プレス、メッキ、ゴム、プラスチックなどの製造業で、ある者は、
今まさに焦点となっている建設分野や解体の現場で、ある者は居酒
屋で癒しを提供しました。長野オリンピックの建設需要に対応し、
厳しい現場で一生懸命働いたのも彼ら彼女らです。そしてサービス
残業に抗議の声をあげ、未払い残業代支払いの先駆けとなったのも
彼ら彼女らでした。またある者は配偶者となり、地域の重要な一員
ともなっています。そして、総じて、彼ら彼女らは、私たちに地球
というものを意識させること、つまり、この世界、国際社会の一員
であることを認識させることともなったのです。
日本政府は滞在が非正規となっても、特別に在留資格を与える在
留特別許可を与えてきました。婚姻などを通しての日本人や永住外
国人とのつながり、日本への定着、人道的な配慮で法務大臣が裁量
で許可を与えるというものですが、今現在約6万人の人たちがいま
す。ただ、欧米諸国、韓国等では、一定の条件を満たせば一斉に滞
在を認める制度、「アムネスティ」も実行してきていますが、日本
ではまだ行われたことがありません。
2009年7月には、新たな「在留特別許可に係るガイドライン」
が設けられましたが、まだまだ、許可を受けるハードルは高いのが
実情です。
さて、2009年の入管法の改定では、外国人技能実習制度も新
しくなりました。皆さまご周知の通り、技能実習が在留資格として
分離しました。
ただ、そもそもの技能実習制度の目的に変更があったわけではあ
りません。研修を拡充するものとして創設され、開発途上国への技
術移転を目的としているものです。
しかしながら、1993年の制度創設以降、技能実習制度では、
不正行為が横行し、この社会に対して労働基準の崩壊と人権侵害を
もたらしています。
これに対し、「不正行為が、制度趣旨を理解しない一部の不心得
者によるもの」と反論される方もおられるようです。しかし、それ
が「一部」であれば、私たちのような非力なNGO であっても、行
政の協力も得ながら、とっくの昔に解決させています。断言できま
す。
事実は、実態は、例えば、残業代「時給300円」の職場に駆け
つけ、社長、使用者、監理団体に是正を求めても、「どうして自分
のところだけに来るのか」「同業者みんな同じなのに」と、逆に私
たちに訴えかけてくるわけです。当然JITCO の監理も入っている職
場です。
つまり、現場の状況と制度の中身、どこを見ても、要因は制度設
計そのものに問題の核心があることは明らかです。すなわち、労働
者を労働者として受け入れない制度に、全ての問題の根源がありま
す。2010年7月から新制度となりましたが、研修を分離独立さ
せたことは、長年にわたり私たちと意見交換をしてきた法務省によ
る努力でもあります。
しかし、新制度となってからも、技能実習制度においては、禁じ
られているはずの保証金は、様々に名目を変えて存在し続けていま
すし、名義貸しも減少しておらず、二重契約も多く、時給300円
から500円の残業代や最低賃金も下まわる給料。強制貯金に加え、
通帳、印鑑やキャッシュカードの取上げも続いています。強制帰国
やセクシュアルハラスメントも、相変わらず報告されています。
さらに、制度劣化の元凶だった団体監理型を、技能実習の基本類
型として認め、不正行為の中心的役割をしてきた受入れ団体を、「監
理団体」として、今度は制度の適正な運用を図る機能を負わせてい
ます。2013年4月の総務省の行政評価でも、監理団体による監
査がほとんど機能していないことも明らかになりました。制度が存
続する限り、不正行為、人権侵害、労働基準破壊は、なくならない
でしょう。
さらに、国際貢献と言いながら、実は国際的な批判・勧告を受け
ています。国連からは、2008 年、自由権規約委員会、2009 年、女性
差別撤廃委員会、2010 年、人身売買に関する特別報告者、2011 年、
移住者の人権に関する特別報告者から。また、アメリカ国務省・人
身売買年次報告書でも、2007 年以降毎年、労働搾取や人身売買の観
点から研修・技能実習制度に対する懸念が表明され続け、現代の奴
隷制度と指摘されているのです。

3 いかに受け入れようとしているのか

さて、次に「いま、いかに受け入れようとしているのか」につい
てです。まず、やはり、外国人技能実習制度についてです。
出入国監理政策懇談会の分科会での議論を受け、4月4日の経済
財政諮問会議・産業競争力会議合同会議の提出資料で、法務省は
「多くの意見は」「技能実習制度の目的に沿った活用がより一層
行われるように」し、「制度の拡充等の改革を検討する」としてい
ます。
しかしながら、この「多くの意見」が、「開発途上国」からの要
請を受けたものでしょうか。技能実習生自身が国際貢献の意義を認
めている、いたのでしょうか。
制度の拡充を主張する団体は、技術移転の国際貢献のために、制
度の拡充を求めているのでしょうか。多くの疑問がこの説明だけで
もわき起こります。
さらに、「制度の拡充策等を進めていくには,優良な受入れ団体
等への集約を促進する」としています。
しかし、「優良な」受入れ団体の「優良」とは、何を持ってそう
判断するのでしょうか。制度の目的上、法令遵守は自明であり、如
何に開発途上国に技術移転を行ったのかが「優良」とされるべきも
のです。不正行為が顕在化しなかったことをもって「優良」とする
のは制度上、間違っています。
また、「集約を促進する」と言いますが、受入れ団体を集約して
且つ受入れを拡充する、というのも相矛盾しています。
次に、「建設分野における外国人材活用に係る緊急措置」につい
てです。
前述したような多くの批判を受けてきた技能実習制度の上に、積
み上げる形で出されたのが今回の緊急措置です。緊急措置は、外国
人に「特定活動」の在留資格を付与するとしていますが、政府は、
残念ながら現在の技能実習制度の継続、拡大を前提としてこの措置
を決定しました。しかし、先ほど述べたように、外国人労働者受入
れと技能実習制度とは縁もゆかりもないはずです。
国交省は、「不法就労や人権問題などを懸念する声もあることか
ら」技能実習制度を上回る「新たな特別の監理体制」を、としてい
ます。しかし、これは全く実態に則しておらず、的外れです。技能
実習生の「不法残留」はごく僅かです。それどころか雇用先の不正
行為や人権侵害に対して、「逃げる自由」さえない拘束状況にある
ことが奴隷労働との指摘、批判を受けています。
また、2010年に監理が強化されたはずなのに、問題は引き続
き起こっています。なぜまた監理を強化させるという、すでに失敗
した政策を繰り返すのでしょうか。
緊急措置は、「復興事業」と「2020 年オリンピック・パラリンピッ
ク東京大会の関連施設整備」のために、「即戦力となり得る外国人
材の活用促進を図り、」オリンピックパラリンピック東京大会の「成
功に万全を期する」としています。
技能実習制度で起きる人権侵害への国際批判に、日本政府として
真摯に向き合うことなく、この制度を活用する形で緊急措置を決定
したことは大きな誤りです。
オリンピック憲章では、
「スポーツを文化と教育と融合させることで、オリンピズムが求め
るものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価
値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などに基づいた生き方の
創造である。」と謳われています。
これはオリンピズムの根本原則のうちでも第一番目の原則です。
この精神に基づき大会を開催する東京を抱えるこの日本だからこそ、
外国からいかに人を、労働者を受け入れるかの措置の決定は、フェ
アプレー、フェアトレードの「よい手本」を国際社会に示すチャン
スだったのです。

4 いかに受け入れるべきか

しかし、まだチャンスはあります。
「いかに受け入れるべきか」について、ぜひ国会議員の皆様にも、
真剣に議論して頂きたい2つのことを述べます。
第一に、技能実習制度への廃止の道筋をつけた上で、今現在、実
際は文字通り労働をしている技能実習生を、名実ともに労働者とし
て受け入れるべきです。
私は、人手不足の実態を日々、目の当たりにしています。事業主
からも直接に訴えを聞いています。「技能実習生がほしいわけじゃ
ない。働き手がほしい!」と。今この社会には労働者がもっと必要
なのです。外国から人を受入れ、日本人と共に働いてもらうという
ことが求められています。事実、多国籍な職場は活気にあふれ、日
本社会全体を豊かにしています。この30年近い間の事実、外国籍
住民が2.5倍になってきた地域社会を直視することが求められま
す。あえて重ねて言いますが、外国人がいるから犯罪が増えたとい
う事実もありません。
「労働者を労働者として」受け入れるべきだと思います。今、様
々な分野での人手不足に対応を求められています。技能実習制度は
廃止したうえで、真正面から受け入れられないか、この社会が真剣
に考えるチャンスです。
第二に、今の技能実習制度に対しては、実習実施期間の延長や再
技能実習、受入人数枠の増加、分野の拡大や対象職種の拡充をして
はなりません。業界からの要請や他の省庁からの「要望」を許して
しまえば、現場では間違いなく実習生に対する権利侵害は増えます。
すでに述べた通り、制度の構造上、実効性をもって監理できる機関
が当初も、新制度施行後も確立されていないからです。そして、「国
際貢献」という建前と、「労働力不足を補う」という実態が、限り
なく乖離し、問題は一層深刻になるばかりです。つい一週間前、こ
の法務委員会で、谷垣法務大臣が、「技能実習制度を小手先でいじ
って労働者不足に対応しようというのは、筋が違うし無理だと私は
思う」と郡和子議員に対する質問に答えられています。私もまさに
谷垣法務大臣のおっしゃる通りだと思います。また、高度人材に関
しては積極的に受け入れるとしつつも、「労働者としてどうしてい
くのか」、「労働者としての処遇を与えるという意味でも」「政府全
体としてきちんと議論をしていくということは必要」とも答えられ
ています。そこに、まさに私が冒頭述べた、「いかにして受け入れ
るべきか」というところに重なってきます。

5 まとめ

2005年から2008年の「外国人材活用」の議論、2009
年の新しい在留管理制度の議論でも、そして、今の外国人受入れ議
論も、外国人を人たる労働者として受け入れる観点、人権の観点が
欠落しています。私は、2009年5月8日、ちょうど5年前にも、
同じようにこの衆議院法務委員会で入管法改正審議の際に参考人と
して意見を述べさせて頂きました。しかし残念ながら、それ以降、
人たる労働者が労働者として、そして人権の視点をもって、「いか
にして受け入れるのか」という議論はあまり進んでいません。
未だこの社会は、日本の成長に資するため、外国人を「活用」す
るという狭い視点、人たる外国人を監視し、日本にとって都合が悪
そうな外国人を排除する、という視点から抜け出すことができず、
外国人受入れの全体像を捉え損ねています。
すでにこの社会には多くの外国人労働者そしてその家族が働き、
暮らしています。政府は、この事実から目をそらし、外国人の権利
を保障する法制度の整備を怠っています。本来であれば、人を人と
して受け入れるために人権、人格権が尊重され、多民族・多文化共
生社会を制度的に保障するための整備をすべきです。
人口減少社会への対応、復興、オリンピック・パラリンピックへ
の対応が感心を集める中で、外国人人権基本法や人種差別撤廃法、
国内人権機関などの法整備および所管庁の設立などの制度設計を始
めるチャンスです。
「外国人をいかに受け入れるのか」に対する答えです。
繰り返します。労働者を労働者として受け入れるべきです。今こ
そ、ごまかしの小手先の「労働者補充策」である技能実習制度を廃
止し、真正面から労働者を受け入れる政策に舵を切るべきです。
その際には、もちろん労使対等原則がしっかり守られ、雇用先の
移動も自由にせねばなりません。
使い捨ての労働力ではなく、ともに働き、ともに暮らす、この社
会を支える一員を迎えるために、です。
国会議員の皆様が、事実を直視し、決断してくだされれば、それは
きっと必ず実現できます。
すでに多民族・多文化共生社会は始まっています。相互尊重の社
会を、私たちは、必ず実現できます。
ご清聴ありがとうございました。

 

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